ダブルクロスthe 3rd edition 「Pseudo-reincarnation」リプレイ小説【OP1~2】

昨日と同じ今日、今日と同じ明日。
何気ない日々は変わらず続くと思っていた。
家族との団欒や友人との会話。
けれども――それは全て「嘘」になる。
自らに課せられた運命。
繰り返される記憶の検証。
果たさなければならない責務。
愛と破滅は紙一重。
偽りの輪廻は終わることがなく、けれども終わりを迎えねばならない。
険しい旅路を乗り越え、全てが裏返った末に選び取る答え――
それはキミに、”キミ達”にかかっている。
ダブルクロス the 3rd edition リプレイ小説
「Pseudo-reincarnation(スードゥ リンカーネーション)」
ダブルクロス――これは「嘘」の中の「本当」を探す旅。
シナリオ制作者:えむこさん@tearoar
※ダブルクロスThe3rdEditionは有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。
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【オープニング1:Ever Day】
シーンプレイヤー:雪路 永作(ゆきじ えいさく)
雪路永作には物心のついた時分より自身に覚えのない記憶があった。
淡い光が差し込むドーム状の部屋の高い天井を、一枚の厚いガラスを隔てるようにして見上げている。
まるで絵を見るようにその光景には動きがない、ただそれだけの光景だ。

腕を枕に、机に伏せていた雪路永作は勢いよく顔を上げる。

彼の寝ぼけた視界に飛び込んできたのはいつも通りの教室と、あきれ顔の教師。

ここはドーム状の部屋などではなく教室で、まさに今は授業中であった。
大きくため息をつきながら永作へ注意した教師は再び黒板に向き直りチョークで文字を書いていく。
集まっていた他の生徒たちの視線も板書へ移っていき、静かになっていく教室とは裏腹に永作の胸中には「やってしまった」という気恥ずかしさが浮かんできた。
いつの間にか眠ってしまっていた彼は口元をぬぐいつつ、改めて白い文字に埋められた黒板と白紙のノートへ向き直る。
――これは変わらぬ平和な日常の話。
時は過ぎて放課後。
特に変わりない学校では部活動にいそしむ生徒もいれば、教室に残って勉強をする者や友人と無駄話に興じる者だっている。
そんないつも通りの変わらない、悪く言えば変哲もない平凡な日常の一コマ。
だが、いつだってそんな日々にちょっとした刺激を求めている者はいる。
ぼんやりと帰り支度をしている永作へ「おーい!」と弾むような明るい声がかかった。

声の主は友人の村瀬一也だ。


永作は「むしろそれが目的だろ?」と漏らしそうになったが、自分もどこかで彼が声をかけてくれるのを期待していた気がするので言葉にはしなかった。
村瀬とはゲームという共通の趣味があり仲良くなった。
毎日遊ぶわけでも学校でよく一緒にいるわけでもないが、近すぎず遠すぎずな関係が心地いいと永作は感じている。


ゲームといえども幅広いが、二人が交流を始めるきっかけとなった共通の趣味とはいわゆる“音ゲー”だ。
永作は無類の音ゲー好きでゲーセンに通い詰めたり、スマートフォンのアプリを四六時中やるほどだ。
とはいえ、永作と比べると一也の音ゲーへの熱量はかなり劣っているが。


永作は期待に胸を弾ませながら一也とともにゲームセンターへと向かっていき、到着すると淀みのない動きで目的とするゲーム機
“新しい音ゲーの筐体”へコインをいれてプレイを開始ししていく。それから数分と経たずして、異変としか言いようのない光景が繰り広げられることとなる。
うわぁ~~……。

一也は少し……いや、かなり引いた顔で永作の手元を見つめていた。
しばらくして筐体の画面上に『FULL COMBO!!』と表示される

一息ホッと息をついた永作は一也へと振り向いて言う。

そう言って距離をとる一也に永作は苦笑いをしながら


二人は交代交代に音ゲーに興じていった。
退屈な日常。
それをかき消してしまいそうなほど刺激的な世界と興奮が画面の向こうには広がっている。
時を忘れて熱中した永作と一也だったが健全な青少年たちはどちらが言い出すまでもなく、自然とゲームを中断して店の外へと出ていく。
既に夜の帳が落ち街灯が道を照らしていたが、決して遅い時間とは言い切れない。
結局はスリルと興奮をどこかで求めつつも、日常を逸脱するほどの焦がれがあるわけでもない二人は別れ、いつものように永作は自宅へと帰る。

リビングの扉を開き、その光景に絶句し立ち尽くした。


リビングでは両親が仲良く並んでソファに座っていた。
そこまではいい。そこまではいいのだが、おかしいのは二人はスマートフォンで自撮りをしているというこの状況だ。

やっと言えた言葉はそれだけだった。

母、桜子は当然というような顔で返す。







今まで知らなかった(知りたくもなかった、のほうが正しいかもしれないが)両親の秘密にげんなりとしつつも、目の前で繰り広げられるラブラブっぷりは慣れたものだ。
永作は一つため息をつき二人に話しかける。














諦め半分に永作はその言葉に笑って




自宅に帰れば、仲の良い父と母がいて、それに少し辟易としつつも平穏な日々が続いていく。
毎日、このような何気ない日々を過ごしている雪路永作。
学業に励んでテストの点数で一喜一憂し、友人とくだらないことを語り合い遊ぶ。
ただ一つ、永作にとって少し違うことがあるとすれば、物心ついたときからある記憶の中の風景だ。
見たことも行ったこともない場所だが、なぜだかこの景色は心に残っている。
それでも日常は日常として、やさしく永作を覆っていた。
———これがいつまでも続くと思っていた、平和な日常だ。
【PC紹介case雪路永作】
ハンドアウト:PC1
ハンドアウト カヴァー/ワークス:中学生or高校生/中学生or高校生
シナリオロイス:記憶の中の景色(推奨感情 P好奇心/N不安)
キミはごく普通の生活を送る学生だ。 ただ、幼い頃から見たことのないはずの景色の記憶がぼんやりとあること以外は。
それがどこで見たものなのかは分からない。単なる気のせいか、デジャヴなのかもしれない。
いつも通り学校に通い、友達と遊び、家族と団欒の時間を過ごす。
そんな毎日が過ぎて、大人になっていくはずだった――
目の前に、見覚えのない人物たちが現れるまでは。
【オープニング2:Secret Mission】
シーンプレイヤー:鈴蘭セツナ
鈴蘭セツナは車両の後部座席に座り、窓から流れゆく街並みを眺めていた。
特殊車両の無骨な内装と比べれば、華奢な彼女の姿はいささか不釣り合いかもしれない。
セツナは手に持った日本刀を握りしめ、にらみつけるように目を細める。

その夜、UGN日本支部から一台の特殊車両が出動していた。
セツナは窓の外に目をやったまま、隣の大男へと声をかける。


男の名は篠原壮馬(しのはら・そうま)。UGNに所属するエージェントで、セツナが参加する任務の隊長である。
目標の名前は雪路永作。D市の高校に通う学生。報告では特に不審な点は見当たらないということだったが、間違いないのか?

篠原は視線でセツナへと問いかける

言いかけた言葉を飲み込み、取り直すようにセツナは呟く。

篠原も小さく頷き返す。


セツナはある目的をもってUGNに協力、そして現在はD市に向かっている。
その先に待つもののために。
ひょこりと運転席から15歳くらいの少女が顔のぞかせ、軽やかに言葉を紡ぐ。

大白真由美。篠原の部下であるUGNチルドレンだ。


少しそらしていた意識を前に戻し真由美が声を上げる。

真由美の言葉と同時に、その場にいる全員が異変を感じる。
D市の中に車両が入った瞬間。
街に一瞬、歪みのようなものが発生するのが見えたのだ。


言葉は軽いながらも緊張感のある物言いで篠原へと投げかける。

篠原は眉根を寄せてそう言うと黙り込んだ。
真由美はアクセルをさらに踏み込む。車両はスピードをさらにあげD市を疾走していく。
セツナは懐から写真を取り出して見つめ、独り言ちる。
そこには、一人の少年が写っていた。

キュッと、その写真を握る手に力が込もる。
内に強い想いを秘め、少女は目的地へと近づいていくのだった。
【PC紹介case鈴蘭セツナ】
ハンドアウト:PC2
カヴァー/ワークス:指定なし/フリーターor何でも屋or傭兵
シナリオロイス:PC①(推奨感情 P尽力/N任意)
キミはUGNに所属しないが協力関係にあるオーヴァードだ。 ある目的のため、キミはPC①が暮らす街へと向かう。
そしてキミはPC①が何者かに連れさらわれようとしているところを目撃する。
奴らの行動は何としても止めなければ。
キミは、キミが抱える目的を果たすことはできない。
※GMに許可を頂きワークスはUGNに保護されエージェントになったオーヴァードということでUGNエージェントに変更させていただいております。