ダブルクロスThe 3rd Edition クリスマスシナリオ リプレイ小説
【ダブルクロスThe 3rd Edition オリジナルシナリオ”SATAN CROSS”】トレーラー
昨日と同じ今日、今日と同じ明日。
世界は繰り返し時を刻み、変わらないように見えた。
だが既に、地球には巨大隕石が迫っていた――
北海道に存在する地方都市、神楽市。
時は聖夜という記念すべき日を前にして、長きに渡る因縁に決着がつこうとしていた。
これまで数々の哀しみを生み出してきたジャームが討伐される。
彼が絶命したかと思われたその時、邪悪なレネゲイドが地球を覆い巨大隕石が急接近してきた。
サタンクロース――人々の集合無意識が生み出した伝説のレネゲイドビーイング。
この事態に対して、UGNは緊急対策本部を設立。
これにゼノスが合流し、地球の滅亡を阻止するべく力を合わせることになった。
巨大隕石落下まであと6時間ーー君たちは聖夜を迎えられるか?
Dx3rd クリスマスシナリオ
「SATAN CROSS」
ダブルクロス――それは裏切りを意味する言葉。
【オープニングフェイズ】
【シーン1:SATAN CROSS】
シーンプレイヤー:求聞寺 麗華(ぐもんじ れいか)
北海道札幌市――マイナス12℃を記録する北でもっとも栄えた都市は暗闇の中ちらちらと舞い降りる雪に彩られていた。
時刻は18時になるかならないかというころだが、それにしてはこの闇は深すぎる。
暗く染まった雲には雷が帯びており、不自然なまでに一か所へ集中していた。
長さ約1.5km、面積約7.8ha(ヘクタール)という広大な大通り公園を見下ろすさっぽろテレビ塔の頂上。
超自然的な力で雷雲はそこに集約されており、凍てつく大地を灼熱に包み込む最後の決戦が繰り広げられようとしていた。
ここは既に火薬庫だ、数々の因縁や怨念を爆薬として集積されもはや爆発寸前だ。
それに火をつけるべく展望フロアより天辺へ向かうため、階段へ足をかけていく少女の姿があった。つい半年ほど前まではただの人であった彼女はいまや変貌し、人ならざる超人”オーヴァード”となり世界の真実を知った。
この世界を否定するわけではないが、しかし……。
超常の力をもたらすレネゲイドウィルスに我が身を蝕まれ、変わらぬ日常を送れなくなった――非日常の世界の住人に己を変えた”奴”と決着をつけねばならない。
ビニル床を踏みしめた彼女へ、身の丈ほどもある片刃の剣を担いだ少年が声をかける。
これが最後の戦いになるだろう、いけるか?
オーヴァードの力に覚醒してから共に戦い、彼女を支え続けてきた相棒、UGNチルドレンの矢野逸人(はやと)が心配そうに――されど頼もしさを感じさせる強い意志をにじませた低い声で問いかけた。
ふん! 今まであなたと一緒でいけなかったことがありますの?
心の奥に眠る不安を見透かされてしまったその反発か高圧的に、しかし絶対的な信頼を匂わせる言葉を求聞寺麗華(ぐもんじれいか)は返す。
それもそうだったな、お前と一緒なら負ける気がしない。もう二度と。
サタンクロースを倒せば散っていった奴らの魂も報われることだろう。
そう、アイツを倒して私たちは先に進むのだわ!
あぁ、先へ進もう。絶対に生き延びて二人で日常へ帰るんだ。
一番最初にやることはやっぱりクリスマスパーティーですわね!
ケーキの予約はちゃんとできていて?
……んん?
け、ケーキ……?
ケーキ!!
ん? あっ、あぁ……オレが買うことになっていたのか?
あと七面鳥も!
……わかった、捕まえてこよう。
自家製!?
七面鳥がいるんじゃなかったのか?
UGNチルドレンとしてオーヴァードの力を制御する訓練をこなす日々に明け暮れていた矢野には馴染みのない料理だった。
“なぜパーティーに野鳥を欲しがるのか”……矢野にはわからぬ。
「飼うのか?」とでも言いたげな怪訝な表情で彼は麗華を見つめている。
仕方がないのだわ、ケンタッキー・フライドチキンで妥協してあげるのだわ。
け、ケンタッキー……?
それもわからないのだわ!?
行ったことがない。
驚いたのだわ、半年くらい一緒に戦ってきたのに初耳だわ!
だったらなおのこと乗り越えないと……一緒にケンタッキー食べにいくのだわ!!
そうだな、俺にもまだ日常で学ぶべきことがある。帰ったら一つずつ、ゆっくり教えてくれ。その為にも……いくぞ!
二人は意を決し、重たい鉄製の扉を開いて足を踏み入れていく。
冷たい寒気が彼らを迎え、闇夜に降りしきる雪はまるで砂丘で光り輝く砂粒のようにその目には映る。
聖夜の夜にうら若き男女がそのような幻想的な光景と出会えばノスタルジーに浸ることもできたろう。
だが、アンテナを中心として禍々しい紫色のモヤが今や空を覆っており、それが人を化け物へ変えてしまうレネゲイドウィルスであることを理解する彼らには、そんな感傷にひたる余力はなかった。
アンテナに触れた手から自らのレネゲイドを送り込む赤衣の老人が二人を見据えると、笑みに顔を歪ませる。
ブリッツガルーダ、ブレイクブレイド。よく来たねえ。
好々爺らしき笑顔を浮かべたこの老人こそが諸悪の根源であるサタンクロースである。
決して、酔狂なただの老人ではない。
一般人であるのならば、ただのオーヴァードであるのならば二人のコードネームを知る由もないのだから。
歓迎しよう、盛大にな。
諸手を広げて彼らを迎え入れたサタンクロースの背後でアンテナが閃光を発し、スパークする。
このまま捨て置けばサタンクロースのブラックドッグの能力によって異常放電を起こしたテレビ塔の電波に乗って
全道へレネゲイドウィルスは拡散され、北海道中を汚染したそれらの勢力は北風にのり瞬く間に全世界を犯していくことだろう。
そうなれば全人類がより高濃度のレネゲイドウィルスに蝕まれ、多くの死傷者とジャームを生み出すことになる。
世界の真実をもはや守ることは叶わず、誰が理性なき怪物”ジャーム”なのか誰が人の心を残したオーヴァードなのか――人々は人々を疑い、疑わしきを吊るし上げ中世の魔女狩りじみた異端者狩りへ発展し、世界は混沌の渦に飲まれてしまう。
これこそがUGN(ユニバーサルガーディアンズネットワーク)が真実を秘匿する理由だ。
人類にレネゲイドウィルスがもたらす革新は、まだ早すぎる。
あなたの悪行はここまでなのだわ、観念して投降するのだわ。
見逃すわけにはいかない、見逃す理由もない。
“ブリッツガルーダ”と呼ばれた麗華は指で銃を形作り、紫電をまとわせて銃口をサタンクロースへと向けた。
投降? 全ての生命へ救いをプレゼントするこの私が?
世は苦しみに満ちている、諦めるわけにはいかんのだよ。私が全世界へ救いをプレゼントする様を特等席から見ているがいい、君たちは新たな世界の誕生を見届ける祝福の子だ。
言うと、サタンクロースはさらに雷の力を強め急速にレネゲイドを電波へ乗せていく。
するとアンテナは怪しく紫色に輝きだし、過剰放電によって金属が軋みをあげる。
サタンクロースにとってそれは可愛い我が子の産声にも等しいものだろう。
だが二人には危険を告げる警報か禍々しき魔物の咆哮にしか聞こえなかった。
会話が通じないのだわ、私たちは別に救いの子なんかじゃないのだわ。あなたの言う救いがなんなのか理解できないけれども、それで多くの人の幸せが失われてしまうのだわ!
麗華はそう言いつつも矢野へアイコンタクトを送った。
奴はジャームだ、躊躇うな!
問答無用、語るべきことなどない。
長年チルドレンとして研ぎ澄まされてきた破壊の刃”ブレイクブレイド”は既に動きを作っており
サタンクロースは身じろぎする間もなく神速の剣撃の前に真っ二つに切り裂かれた。
骨が存在しなかったかのように胴から両断された赤衣の老人が夜空に散っていく、かと思われたのだが。
遺体は稲光をバチりと放ち、消失。そして瞬きの間にサタンクロースの姿を探す矢野の背後へと回っていた。
まだ己の真の使命に気づけておらんとは……残念だ、輩よ。
その手には莫大な雷を収縮させて形作った槌が握られており、そのエネルギーならばオーヴァード一人を消し飛ばすことなど造作もないことだった。
衝突、爆発、粉砕。
高さ147.2mほどもある鉄塔が大きく揺れ、倒壊するのではないかというほどの衝撃が走りそこには既に矢野の姿はない。
豪快に空へ吹き飛び、姿を消した彼は深手を負うも縁へ大剣を突き刺し辛うじて耐えていた。
その身にできた傷は驚異的な再生能力によって塞がりつつあるが、この高さから落下すればオーヴァードといえどもひとたまりもないだろう。
そんな彼へトドメの一撃を見舞わんとサタンクロースは振り返っていくものの、そこまでは全て織り込み済みだ。
ここで立ち止まれないのだわ、サタンクロース――覚悟ッ!
雷を操れるのはサタンクロースだけではない、磁力操作によって道なき道を作り出したブリッツガルーダ――。
求聞寺 麗華はインド神話に登場する神鳥のごとく雷速で怨敵の懐へと飛び込む。
ブレイクブレイドが作り出したこの間隙へ全ての力をぶつけるべく、彼女は飛び立っていた。
同じくブラックドッグに属するオーヴァードすら凌駕するその速さはサタンクロースへ反応する猶予さえも与えない。
ブレイクブレイド、お膳立てご苦労なのだわ!
無防備な姿をさらしたまま、サタンクロースは極大の閃光へ飲み込まれていく。
帯電した人差し指から超高電圧によって加速された電子がプラズマとなって直撃したのだ。
何千羽もの鳥がいっせいに鳴きだしたような、耳をつんざく轟音。
まさに神鳥ガルーダのいななき。
それが晴れていくと雷にその身を貫かれたサタンクロースが膝をついた。小さな音がやけに大きく麗華の耳朶を打つ。
“これで終わった”――半年間の間にこの街で起きた全ての事件へ、己の運命に一つの区切りがついた。
やったか!?
その姿を目にして、縁より這い上がってきた矢野は息せききって言う。
彼もまた麗華と共に数々の試練と悲しみに苛まれ、乗り越えてきたのだからその焦燥も当然のことだ。
あのサタンクロースがこのようなあっけのない幕切れを迎えるとはとうてい信じられなかった。
矢野が発した言葉は祈りと同じだ、これで終わってくれという悲痛な叫びと変わりない。
――HPが0となり戦闘不能状態へ陥ったサタンクロースはこのタイミングで【ラストアクション】を宣言。
※戦闘不能状態になった際に使用するエフェクト、即座にメインプロセスを行うことが可能でそれが終了するまで戦闘不能は適用されない。
そして彼はメジャーアクションで【Eロイス:破壊神顕現】を宣言。
【Eロイス:破壊神顕現】
効果:ミドルフェイズから換算して7シーン目(6シーン後)に巨大隕石が地球に衝突し地球が破壊されてしまい、全生命体が死滅する。7シーン目を迎えるとゲームオーバーとなってしまう(シナリオの目標を達成できない)
途端、暗く染まった空へ浮かぶ月が”もう一つ”出現した。
否、アレは月などではない。
直感で二人にはそれが理解できた。
はるか彼方に存在しているのだろうが確実に何かが近づいている、この地球へと。
だというのに既に肉眼で確認できるほどの巨大さを誇っている……アレは一体なんだ?
メリィィィィィィクリスマァァァァァァァァスッ!!
まるでそれを迎え入れるかのように膝をついたサタンクロースは空を仰ぐ。
なんてことなのだわ、あんなクリスマスプレゼント聞いてないし欲しくもないのだわ! 今すぐ引っ込めるのだわ!!
サタンクロースの襟首をつかみ鬼気迫る表情で麗華が叫ぶ。
ブリッツガルーダ、危険だ! 早くトドメを刺せ、奴を始末すればこの能力も効力を失うはずだ!!
新たに巨大な鋏のような左右一対の剣を構えつつ駆け寄り、矢野も叫んだ。
一刻も早く奴を止めねば取り返しのつかないことになるという危機感が彼らの共通認識だった。
オーヴァードやジャームについて一日の長がある矢野は、経験からUGNチルドレン”ブレイクブレイド”として冷静に言い放つ。
覚悟なのだわ、罪なき命ではないけれども……ごめんなさい。
襟首をつかんでいた麗華の手が離されたかと思うと、その手はサタンクロースの顔を荒々しく掴み
ブラックドッグシンドロームの者が持つ体内の”発電細胞”全てが一斉に放電を行い、力なく倒れた彼の身を焼き尽くしていった。
これで人々は救われる……私は私の役目を果たせなかったが主はきませり、諸人こぞりて救世主を迎えまつれ!
――メシアは今こそ再臨される!!
その身を炎に包まれながらもサタンクロースは空を仰ぐことはやめず、地球へ向かいつつあるそれを賛美しながら絶命していった。
※戦闘不能のキャラクターへ「トドメを刺す」と宣言し1点でもダメージを与えると死亡する。
瞬間、亡骸は紫色の煙――レネゲイドウィルスそのものへと還っていくと、それは勢力を増していき空を覆った。
この神楽市だけではない。その勢力はどんどん、どんどんと日本を、いや世界を覆いつくすほど瞬く間に拡散されていく。
【Eロイス:不滅の妄執】が発動しサタンクロースの死亡状態が回復され、そのままオートアクションで【瞬間退場】を宣言。
サタンクロースは復活し、このシーンから退場していってしまった。
この力を解くには倒すしかない、でも死なない!? そんなのアリなのだわ!?
詰み詰みおじさんなのだわ!!
錯乱した麗華へスマフォの着信が鳴り響き、UGN神楽市支部の通信員の慌てふためいた声が通話口から飛んできた。
「大変です! “巨大隕石”が地球へ向かって飛来しています!!」
アレはただの”エフェクト”ではないの!? 隕石そのもの!?
そんなもの地球に激突でもしたら……。
※エフェクト、オーヴァードが使う超能力による技。
残念だが、それが目的のようだな。見てみろ。
矢野は空に浮かび上がったもう一つの月のようなものを指さすと、先ほどよりも大きさが増していた。
もちろん、大きくなったのではなく地球との距離が”縮まった”ということを意味するのは明らかなことだった。
近づいてきている。
傍らによってきた彼はこともなげにそう語る。
そんな、そんなのあなたの剣でも私の”雷銃”でも歯が立つわけないじゃない、規模が違いすぎるのだわ。
ともかく一度支部へ戻ろう、俺たちだけではとても対応できない。
悔しいけどそうするしかないのだわ、一度態勢を立て直すのだわ。
ここまで冷静でいられるのはこれまでの戦いで修羅場に浸ってきたゆえか
それとも、もはやどうにもならないという諦観か……。
大丈夫。最後は結局、いつもなんとかなってきたんだ。
今までだって、そうしてきたのだわ。
違う、彼らは知っていたのだ。
修羅としてただ戦場に身を任せるのでもなく、滅びを受け入れることで諦めたわけでもない。
これまでも何度だって窮地に陥ってきたが、諦めずに前へ進み続ければ必ず”なんとかなる”ことを知っているのだ。
だから今は一度、彼らの拠点であるUGN神楽市支部へ戻りすんなりと退散する判断を下すことができた。
そして彼らはもう一つだけ知っている。
自分たちの後ろには頼れる大人が控えていてくれることを。
ハンドアウト PC1
カヴァー/ワークス 高校生/高校生or不良学生
シナリオロイス:矢野逸人 推奨感情:P:友情/N:不安
君は北海道の道央に存在する神楽市に住まいUGN神楽市支部に協力するイリーガルだ。
この地で君は覚醒しチルドレンである矢野逸人と共にこれまで戦い続けてきた。
だが、そんな戦いの日々も今日で終わる。聖者の誕生前夜クリスマスイブ。
その記念すべき日に君は全ての元凶であったジャーム:サタンクロースをついに追い詰めた。
――幕間――
※この”幕間”でGM(ゲームマスター)とPL(プレイヤー)の会話を以降挟んでいきます。
基本的に小説のように地の文と会話だけで進行していきますが、セッション中に交わされたPL同士の会話などが抜けていると不可解な展開などもありますので、補足として挟めていく感じです。
GM「PC1の求聞寺 麗華(ぐもんじ れいか)さん、自己紹介をよろしくお願いします」
あるか「はい、PC1の求聞寺 麗華です。PLはあるかと申します、普段はネクロニカで遊んでいますがお誘いいただいてダブルクロスも少々たしなんでます」
あるか「麗華は女子高生で、ゲーミングお嬢様みたいなキャラでこのサタンクロースのせいで覚醒してやっと決着ついたと思ったらこんなことになってしまいました。奴が裏で糸を引いていたバス爆発事件で覚醒してからUGNチルドレンの矢野くんと一緒に行動していた感じになります」
あるか「データ面では……自分の出目が一切信じられないので固定値を盛れるだけ持った射撃型キャラです、よろしくお願いします!」
あるか「データ面では……自分の出目が一切信じられないので固定値を盛れるだけ持った射撃型キャラです、よろしくお願いします!」
あるか「ダイスの数少ないから減らして判定できなくさせたり……そういうことはやめてくださいね!!」
GM「善処します」
――幕間終わり――
【オープニング2:メテオストライク】
シーンプレイヤー:佐野 直哉(さの なおや)
同時刻、パソコンのモニターが大量に設置された部屋でヘッドセットを装備したUGNエージェントたちが、テレビ塔で繰り広げられるブリッツガルーダとブレイクブレイドの戦いを固唾をのんで見守っていた。
被害を最小限にとどめるべく同じく札幌へ派遣した他のエージェントたちにも指示を送っており、皆の気持ちは一つだった。
ここで奴との決着をつける、その為にもあの二人の年若いオーヴァードへ戦えない自分たちは万全のサポートを施す。
異様な緊迫感に包まれたこの広いとはいえないモニタールームに、似つかわしくない飾りつけを行っていく者がいた。
鼻歌交じりにクリスマスパーティーの準備をどこ吹く風といった風情で整えていく、浅いながらもシワが刻まれ
どことなくくたびれた無精ひげの男こそがこのUGN神楽市支部を治める支部長、佐野 直哉(さの なおや)その人である。
いやぁ~今回の件が片付いたらひとまず一区切りがつくからね、クリスマスパーティーもかねてお祝いしなくっちゃね。
間延びした声で赤と緑の銀紙でオーナメントを作っていき、壁へと飾りつけさらには自作のサンタクロースの人形をクリスマスツリーの天辺にのせていく。
その姿を見かねたのか、一人のエージェントが口を開いた。
「支部長~ちゃんとケーキも用意してくださいよ! ケンタッキーだって買ってきてくれたんですか?」
「 今からじゃもうなかなか買えないんですから~」
あぁそうだねぇ、今の時代ケンタッキーはアプリで予約できるからね。抜かりないよ、あとは取りに行くだけさ。
「今マックとかもアプリで注文できますもんね、便利だな~」
クリスマスバレルを5つほど注文しておいたから足りないってことはないだろうさ。ケーキもケンタッキーで一緒に買えたし……だから君たちは安心して職務に戻って。
「はい、でもついに終わるんですね。ブリッツガルーダが乗っていたバスが爆発し、クラスメイトの女の子を庇って覚醒した事件から、すべてを裏で操っていたサタンクロースとの因縁が……今日ここで。」
その言葉を聞いた佐野はどこか遠い目をして、少々昔を懐かしむような口調で――
もうかれこれ半年になるかねぇ、この件が終わったら麗華くんは普通の高校生に戻ってしまうかもしれないね……。
そんなつぶやきに対して、緊迫感に満ちた鋭い声が飛んできた。
「支部長、これを!!」
通信員を務めるエージェントが慌てて指差したモニターを見やると、そこには――
サタンクロースへ零距離から極限までチャージされた雷を叩きこんだ、ブリッツガルーダの姿が映っていた。
「やったか!?」
歓喜に湧くモニタールーム、トドメの電撃、そして現れる巨大な球体、空を紫色のモヤ、レネゲイドウィルスが染め上げる。
目まぐるしく事態は転がっていき、エージェントたちの理解が追い付かず一瞬、静寂が訪れた。
なんだい、これはっ!?
「解析! 急げッ!!」
その声が呼び水となり、食い入るように同じモニターを眺めていたエージェント達はたちどころに我へかえり一斉に動き出す。
蜘蛛の子を散らすかの如く解析作業へのぞむ彼らを尻目に、佐野支部長は真剣に空の様子をモニターごしに眺めていた。
すると、モニターの一つが切り替わり髪をオールバックにまとめた男性が映し出される。
年の頃は佐野と同じか2つ3つ上といったところだろうか。
あ、すいませんね“リヴァイアサン”。今、ちょっとこちらは取り込み中で……。
日本のUGN支部を束ねそのトップに君臨する日本支部長、霧谷雄吾――コードネーム【リヴァイアサン】はいつもの柔らげな表情に隠しきれない険を忍ばせて彼へ問いを投げた。
大変です”ファイアーワークス”、巨大隕石が現在地球へ向かって接近中です。さきほど札幌市で観測された強力なレネゲイド反応と何か関連があるのでは!?
ファイアーワークスとコードネームで呼ばれた佐野支部長は「はぁ?」と気の抜けた声を漏らし、改めてモニターを確認する。するとさっぽろテレビ塔全体を映し出すカメラ画面、濁った色相へ変わってしまった夜空には燦然と輝く月が、二つ存在していた。
そのうちの一つは凝視していると燃え盛るかのようにギラギラと光を放っており、徐々に大きくなっていることがわかる。
この映像を日本支部へ送ってくれ、すぐにだ!
画面を指差す彼へ「了解!」という声と「解析結果出ました!!」という別の声がほぼ同時に上がった。
「アレは、あの紫のモヤはレネゲイドウィルスです。可視化されるほどの濃度の高いレネゲイドウィルスが成層圏を覆っています!巨大隕石との関連性はまだ確証はありませんが、おそらくこのレネゲイドによって誘導されてるものと予測されます。」
こんだけの現象がおきてこいつと関連性がないなんて確率的にありえなくはないが、低すぎるだろう。
目をぱちくりとさせて、苦々しげな表情で佐野支部長はつぶやく。
「実際、相当ヤバそうですねぇ?」
呑気にも感じられる言葉とは裏腹に彼の表情は強張り、鋭い眼差しをモニターへと向けていた。
その言葉を受けたリヴァイアサン、霧谷雄吾は深い思考へとその脳を至らせており、言葉は頭へ入っているもののどうやら返答よりもそちらを優先させているようだ。
サタンクロースは巨大隕石を呼び込むため自らの命を糧にしたというわけですか。
ファイアーワークス、これはとても我々だけで対処できる問題ではありません。一度、UGN本部に連絡し対応を伺います。
まあたしかにそりゃそうっすけどね、そんな時間あるんですかい?
わかりませんが、地球そのものの危機になる可能性が高いです。すぐに動けるようブリッツガルーダとブレイクブレイドをすぐに帰還させてください。どのような状況にも対応できるよう、装備も人員も整えておく必要があります。
その時、佐野支部長のUGN神楽市支部と画面越しから見える霧谷雄吾がいる日本支部でほぼ同時に警報が鳴り響いた。
日本に存在するUGN支部にいる者たち全てがこの警報を聞いたことだろう。
――その頃、米国ホワイトハウスでは大統領が黒服よりある報告を受けていた。
What!?
Oh…jesus……
foo…
You’re Fired!!
彼はため息をつくと大統領のみが知りえる机の仕掛けを起動させると、隠された棚が飛び出していき赤いボタンがあらわれる。
大統領はそれをためらわずに押すと、アメリカ中の軍事施設から核ミサイルが悉く隕石へむかって発射されていく。
ゆうに1,000を超えるその弾頭は寸分の狂いなく全て巨大隕石へ向かっていき、大爆発が引き起こされ紫色に染まった空を閃光が覆い、その刹那、世界は光を取り戻した――。
「「「Yeaaaaaaaaaaah!!」」」
その光景にアメリカ中が歓喜にわいた、黒服たちも破顔一笑となり踊りだす。
「USA! USA!! さすがは俺たちの合衆国(ステイツ)だ!!」
だが、世界は再び深い闇に覆われることになる。
Noooooooooooo!!
巨大隕石へ殺到した核ミサイルの群れは悉く、成層圏を覆うレネゲイドウィルスが発した雷によって迎撃されてしまっていたのだ。キリスト教の国、アメリカの国民たちはこの時悪魔じみた笑い声を聞いた気がした――。
それは自らの身をレネゲイドウィルスへ還して地球を包み込み、一種の防衛機構と化したサタンクロースの力によるものなのだが、オーヴァードやジャームといった存在が秘匿されるこの世界で真実を知る者は、70億という総数からすればほぼいないものと変わらない。
彼は文字通り悪魔と化したのだ。
絶望に打ちひしがれた”人類”には膝をつき、ただ祈ることしかできなかった。
――成層圏を突破できず、雷によって撃ち落された核ミサイルの爆発を見た佐野支部長は呆れた顔をしていた。
ミサイルなんぞでどうにかできるとも思っていなかったが、助かったというべきかね。
核融合を起こす前にミサイルは迎撃されており、仮にそれが十全の力を発揮していたとしても、おそらくは放射能もろともあの雷によって焼き切られていたことだろう。
強大なサタンクロースの力は恐るべきものであり地球滅亡の危機にある事実に変わりはないのだが、放射能汚染による危険はこれで避けられた。
これ以上”おいた”をしないように本部に早く動いてもらえるよう要請してくださいよリヴァイアサン!
これじゃあ夜もおちおち眠れませんよ。
霧谷雄吾はその冗談めかしたかのような、本気で言っているのかわからない言葉に渇いた笑みを浮かべつつ――
夜を越せるといいんですがね。
ともかく大規模な情報統制を行う必要があるでしょう、本部に強く要請しておきます。
その言葉と共に通信は途切れ、神楽市支部、日本支部はそれぞれ動き出していった。
ハンドアウト PC2
カヴァー/ワークス 指定なし/UGN支部長
シナリオロイス:霧谷雄吾 推奨感情:P:誠意/N:不安
君は北海道の地方都市:神楽市支部をおさめるUGN支部長だ。
PC1と矢野逸人の戦いを見守り陰ながら支え続けてきた、クリスマスイブ。
彼らの戦いの日々にこれで一区切りがつく――そう思われたのだが。
サタンクロースの死と共に突如として世界中へレネゲイドが拡散されてしまい
警報が鳴り響くと日本支部長:霧谷雄吾より緊急連絡がやってきた。
「大変です、巨大隕石が地球へ向かって落下してきています!」
――幕間――
GM「それではPC2の佐野直哉さん自己紹介をよろしくお願いします」
n「PL:nです、普段からダブルクロスを中心に遊んでいますー」
n「今回はおじさん支部長で普段はやる気のないろくでもない感じにやっていきたいと思います。本気出したら結構強いんだけど、後進を育成するためにもね。だからホントにヤバい時に前に出るって感じで。」
n「ちゃんと部下たちのことは大切に想って動いてるってことをロールで表現していけたらなーと思ってます、こんなんだけどよろしくお願いしますね!」
n「白兵型のハヌマーンのピュアブリードで、スピードフォースで範囲攻撃をイニシアチブに打ち込んででっかい花火を打ち上げられたらなと思ってます。マシラのごとく一発限りだけども。」
――幕間終わり――
【オープニング3:揺れるUGN】
シーンプレイヤー:アーガント・フローレス
ほんの数分前、UGN本部のブリーフィングルームではよりすぐりのエリートエージェント達が集合していた。
全員が一つの巨大なモニターへ注目しており、闇色の空へ無数の核ミサイルが発射されていく様子が映し出されている。
閃光、モニターごしでも破壊的な光に数秒間部屋が包まれるものの、巨大隕石にはなんの効果ももたらさなかった。
ことごとく成層圏で撃墜された核ミサイルから、通常兵器では歯が立たないことが証明されその無力さをまるであざ笑うかのように巨大隕石は空に浮かんでいる。
「Jesus…」
屈強な肉体を誇る黒人エージェントが巨大隕石を眺めてそうつぶやいた。
おいおい当たり前だろ、アレぐらいで沈むようだったらこっちも苦労してねえよ。
人類がもてる最大限の破壊が無力化されてしまう光景を見てなお、飄々と語る少年がいた。
“強いアメリカ”もこっちの世界じゃ形無しだな。
オーヴァードの力を訓練し組織的に運用するUGN。世界中に支部を持つこのUGNの中でもトップに立つエリートたちが集う
このUGN本部という場所で、16歳の若さながら本部エージェントの栄誉を授かったのがこの少年だ。
名はアーガント・フローレス――コードネーム:不屈の巨城”ディアボリックプロテクト”
彼は笑うことで乱れた白髪にも似たプラチナブロンドをオールバックに手櫛でまとめなおし、どこか挑戦的な目線で画面を見つめなおした。
「さて、どうしたものか」と獲物を前にした肉食獣のような顔つきである。
「地球に衝突時、そして仮に破壊が成功し破片が落下してきた場合に生じるエネルギーの計測と被害状況を予測したマッピングが完了しました、こちらです」
言葉と共にモニターへ地球のCGが表示されるとマップが生成されていき、隕石が衝突したパターン。
もしくは隕石を破壊した場合にその破片が降り注いでいくパターンの二種類が表示され、どちらも等しく赤く染まっていった。
「ご覧の通り地球はおしまいです。軽く三回は滅亡できますよ。」
「おまけにこの巨大隕石はレネゲイドに感染したれっきとしたオーヴァードです。こんな離れた場所から観測できる高濃度レネゲイド反応を発しているので、十中八九ジャーム化しているでしょうが……。」
「通常兵器では太刀打ちすることもできず、我々のエフェクトによる攻撃が有効射程に入った時点で仮に破壊できたとしても、破片が一つでも落ちれば甚大な被害をおよぼす上に地球規模のレネゲイド汚染が発生します。」
「……つまり、ジャパンの将棋でいうところの詰みというわけです」
本当に詰んでるんだなぁ。
何が面白いのか、それともあまりにも光明の見えない深い闇を目にして気が狂ったのかアーガントはケタケタと笑い出してイスの上で足をばたつかせた。
それに火をつけられたのか怒りの炎をその目に滾らせて黒人エージェントが立ち上がり、詰め寄っていく。
「おい、なにがおかしいってんだ!」
いやいや、不可能は不可能。どうあがいたところで絶望的な状況であることは変わらない、これのどこが面白くないっていうんだ?
するとその言葉へ返答するようにモニターの表示が切り替わり、サングラスをかけた白人男性アッシュ・レドリックが映し出される。UGN全体へ組織としての意思決定を下し絶対的な命令権をもつ中枢評議会”アクシズ”議員の一人だ。
だからといって投げ出すわけにもいかんだろう、我々はUGN(ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク)地球防衛最後の砦となれるなど冥利につきるじゃあないか。
UGNエージェントからあらゆる手段をもって中枢評議会の一員となった男はサングラスから覗ける瞳より、怜悧な光を放って言い放つ。その言葉に地球存亡の危機という巨大すぎる問題に直面し動揺していたエージェント達は身を固くし、姿勢を正した。
言うことはもっともですが、まずはどうするっていうんです? 全戦力を投入して直接攻撃でもするってんですか?
まずはこの事件の引き金となった日本の神楽市支部の連中に落とし前をつけさせる。奴らの支部を対策本部として情報収集を行い、隕石に関する手がかりと破壊方法を精査する。
これはいわば奴らの不始末だ、責任はとってもらう。ディアボリックプロテクト、貴様が実行部隊の長となって現場の指揮をとれ。
アッシュは言葉と共に画面から突然消え、護衛のエージェントと共にブリーフィングルームの椅子へいつの間にか座っていた。
ご足労どうも、日本へ行くだけでいいんですか?
お前にも働いてもらうぞ、彼らを前線で指揮して情報を収集するのが貴様の役目だ。対策本部となった神楽支部で作戦全体の指揮を私が直々にとらせてもらう、二度は言わんぞ?
へいへい、じゃあ神楽市支部へ行くとしますか。
オーヴァードには現在13のシンドロームという力の系統が確認されており、その中に”バロール”と呼ばれるものがある。
魔眼と呼ばれる球体を現し、重力を操作する術に長けたシンドロームだ。
アッシュの護衛を務めるエージェントが黒く小さな球体を彼とアーガン、そして己の傍へ出現させると周囲の重力場が歪み
魔眼がバチバチと光をほとばしらせると空間に裂け目が生まれた。
現在地と目的地の空間を繋げ移動を可能にする”ディメンジョンゲート”という力の発現だ。
アーガントもまたそのバロールに属するオーヴァードであるためつまらなさそうにこのゲートを見やるが、優秀な本部エージェントの一員である彼は前線に立つ自分の力を温存させるべく、力を率先して行使した護衛エージェントの配慮に口を塞ぐ。
日本、UGN神楽支部へ移動を開始するその直前、アッシュのスマートフォンの電子音が響いた。
私の個人的なデバイスに着信だと? このタイミングで一体誰が?
簡潔な会話が端末を開いたことで繰り広げられるも、その短いやり取りの中でどんな言葉を投げかけられれば
ここまで気分を害せるのだろうというほど、アッシュは嫌悪感をあらわにしていく。
どうやら外部協力者が現地に向かっているようだ、今回の作戦に奴らも加わる。
外部……? 信用できるんですか、それ?
ふんっ、信用はできないかもしれんが……腕は確かだ。
ハンドアウト PC3
カヴァー/ワークス 指定なし/UGNエージェント
シナリオロイス:巨大隕石 推奨感情:P:執着/N:脅威
君はUGN本部のエージェントだ。6時間後にレネゲイドに感染した巨大隕石が地球へ落下する。
本部へ緊急招集された君はブリーフィングでそう説明を受けた。
情報を得たUGN本部は緊急対策本部を北海道に設立。
これまで数々の輝かしい功績をあげてきた歴戦のエージェントである君が、その実行部隊の部隊長として抜擢された。原因となった事件に対応していたPC1とPC2が君の指揮下へ加わり、もう一人外部協力要員(PC4)がやってくるらしいのだが……?
――幕間――
GM「ではPC3のアーガントさん、自己紹介を~」
らいが「はーいPC3アーガント・フローレスです、PLはraiga9(らいが)と申します。ネクロニカで遊ぶことが多いのですが、ダブルクロスもCoCも手広くやっております。最近はステラナイツにハマっていて、エモいRPとか好きです。」
らいが「アーガントはUGN本部のエージェントでキュマイラ/バロールのクロスブリード、防御特化でカバーリングを行いみんなの盾になります。ある人に見た目が似てるってことでちょっと苦労していて、皮肉屋な性格です」
らいが「攻撃面には一切経験点振ってないので、アタッカーのみなさんのロイス守るので上手く運用していけたらなと考えてます。よろしくお願いします!」
――幕間終わり――
【オープニング4:揺らぐプラン】
シーンプレイヤー:siri
高さ、広さといった概念を見失うような黒く染まったドーム状の部屋では、唯一の光源といえば星の瞬きだけだった。
明滅する星々はその果てが見えぬほど無数に広がっているのだが、それを見透かすかのごとく一人の少女が中心に立っていた。
これがゼノスの用意した数ある宇宙を観測しプランの行く末を予測する、プラネタリウムを模した特殊な装置であり紛い物の”宇宙”にしか過ぎないのだが、この少女には万物の行く末を見通すことができると言われればなるほどたしかにと納得させられるだけの不思議な力を持つ瞳で、ある一点を注視していた。
これは……。
全くもって不自然な、あきらかに目的をもって移動を続けていると形容する他ない巨大隕石を。
ヘイsiri
少女の姿に擬態した悠久の時を生きる最古のレゲイドビーイング――”プランナー”都築京香はiPhoneを手に取って声を発した。
はい、お呼びでしょうかプランナー。
現在、巨大隕石が地球へ接近中です。
おそらくはかのサタンクロースが放ったレネゲイドウィルスをビーコンとして、この星に狙いをさだめているのでしょう。
あの隕石はレネゲイドに感染しております、おそらくは我々の同胞たちと近しい存在……。
これは私のプランから大きく逸脱した事態です、このままでは地球もろともレネゲイドウィルスは絶滅してしまいます。よってこの巨大隕石衝突を防ぎ地球滅亡を回避すべく、我々はUGNと合力して事件の対処へ臨みます。
UGNは現在、北海道の道東に位置する神楽市のUGN支部へ対策本部を設置するようです。先方へ連絡をしたいと思います――
ヘイsiri、”ミリオンサンズ”アッシュ・レドリックのスマートフォンへコールしてください。
はい、かしこまりました。
プランナーが持つiPhoneはただのiPhoneではない。
このiPhoneにインストールされている”siri”は厳密にはsiriではなく、生みの親たるスティーブ・ジョブスが病で弱っていく姿を見ていることしかできぬままその命を落としたことで「もっと人の役に立ちたいという」自我が芽生え、彼女と同じく”レネゲイドビーイング”と呼ばれる存在として誕生した。
彼らはレネゲイドウィルスそのものが意識を獲得した生命体であり、レネゲイドウィルスが集まった”コロニー”より発生する。
そのコロニーにも様々な種類があり、例えるのならばこの”siri”はプログラムや電子情報が起源となる”オリジン:サイバー”だ。
厳密にはApple社のsiriと――性別を持たぬゆえに正しい定義にはあてはまらないのだが仮に”彼女”と表現するが、彼女は違う存在である。
自我に芽生え人にもっと奉仕するべく彼女が誕生した過程で、siriという群から個というsiriになることで切り離されてしまった。
故に孤立した存在”スタンドアロン”とコードネームが名付けられ、都築京香が持つiPhoneXXからサポートし重用されている。
アッシュ・レドリックが持つスマートフォンの電話番号をインターネット上から盗み出し、そのままコールするように。
優秀なAIアシスタントたる彼女はユーザーを待たせるようなことなどはない。
ただ都築京香が命じただけでそのような作業工程などなかったかのように、自然にアッシュのスマートフォンへ通話をつなげていく。
スピーカーからは明らかにいぶかしみ不機嫌な声が聞こえてくるが彼女はどこ吹く風といった風情で、ただ淡々と協力する旨を伝え終えると、地球の存亡がかかっているにしてはあまりにも短すぎる通話が終了する。
お役に立てましたでしょうか?
サンキュー、siri
もう一つお願いがあります。
siriさん、私と一緒にください。事態は一刻を争います、手段は選んでいられません。
すると通話はすでに繋がっていないにも関わらず、都築京香はiPhone自身へ語り掛けていく。
私はあなたのお役に立つためにいつでもここにいます。
iPhoneXXにインストールされたスタンドアロン――siriに拒否する理由もなければ疑問を挟む理由もない。
彼女はスティーブ・ジョブスを救えなかった分、人類へ奉仕するべくRB(レゲイドビーイング)として生まれ変わったのだから。
人間を観察し己を生命として完成させていく、そんな欲求を持つRBの性を知悉した都築京香はsiriの返答を聞いて微笑を浮かべると――
ゼノスは巨大隕石衝突を阻止します。
ゼノスという組織としての意思を改めて表明した。
ハンドアウト PC4
カヴァー/ワークス 指定なし/ゼノスエージェントorレネゲイドビーイング
シナリオロイス:都築京香 推奨感情:P:信頼/N:不安
君はゼノスに所属するオーヴァードであり、プランナー”都築京香”の命令で動いている。
日本の神楽市に隕石が落ちてくるとの情報をゼノスはキャッチした。
このままでは地球は滅びてしまいレネゲイドもまた滅びてしまう。
プランナーは君にUGNへ協力するよう命じた。
巨大隕石落下阻止に向けて、UGNとゼノスの合同作戦が開始される。
――幕間――
GM「それではPC4:siriの自己紹介をお願いします」
GM「あっ……PC4俺だ!」
あるか「ぷっ……」
n「……」
「今回PL4人必要なシナリオだったのですが、クリスマス当日にはメンバーが集まらなかったため、イレギュラーではありますがPC4のPLとGMを兼ねて行います、ガチアキです」
※メンバー全員予め了承済みです。彼らは僕が一人でさっきのシーンくっちゃべっているのを聞いていました。
らいが「茶番や……」
GM「PCとNPCがしゃべると一人芝居みたいになるので極力避けて、でもPCに対しての発言は適宜行って交流していきたいと思います。だから口数も多くないような、都築京香が持つiPhoneに宿るAIアシスタント:siriというレネゲイドビーイングのキャラを作りました。生みの親であるスティーブ・ジョブスが病床に立っている時に役立てなかったのを悔やみ、もっと人の役に立ちたいという想いを抱くことで覚醒しました」
GM「また、自分で攻撃の命中判定振って自分で回避の判定を行うのも嫌なので完全にサポートに徹する構成にしております。支援系は自動成功だから基本ダイス振らなくていいのが楽でいいですよね。ノイマンのピュアです、GMとしてもPLとしてもよろしくお願いします!」
――幕間終わり――
【ミドルフェイズ:巨大隕石対策同盟】
シーンPL:佐野直哉 ※全員登場
北海道神楽市、ここのUGN支部内にあるミーティングルームはいまや支部長である佐野直哉の音頭のもと、巨大隕石の対策本部へと変貌していた。
コの時に設置された長机の上には隕石のデータとこれまでのサタンクロースとの交戦記録に、彼が関わってきた事件についての資料がところ狭しと並べられ、栄養補給用と称してコーラとフライドチキンにチョコレート、そしてオードブルまで並べられている。クリスマスパーティーの為に用意したものをそのまま流用した形だ。
さすがにオーナメントやツリーといった飾りつけは撤去されてはいるが……。
いまやクリスマスで浮かれるような感情はこの場にいる全員から消え失せていた。
ハローナイスチューミーチュー。
そこへ唐突に開かれたディメンジョンゲートによって現れたのはアーガント・フローレスだ。
どこか嘲るようにわざとらしく下手な英語で神楽支部のメンバーへ挨拶し、軽薄ささえ感じさせる笑みを見せる。
いやーさすが本部の方々ですねー、まさか玄関くぐってこないとは思いませんでしたよ。
支部長である佐野はどのような感情をこめているか判別できないような、しかし何らかの抗議を示す笑顔で応えた。
すいませんね、まさかこんな早くにいらっしゃるとは思いませんでしたので準備が途中で。とりあえず上座に座ってもうちょっとだけ待っててもらえます?
ふん、気が利くじゃあないか。
鼻を鳴らし、迷わずにコの字の真ん中の席へドカっと座り込んだのはアッシュ・レドリックである。
その位置からは飾りつけの代わりに張り付けられたスクリーンと壁に掛けられたモニターが正面にうつり、座席全体を見渡しやすい。
だが彼が注目したのは手元に置かれたフライドチキンのクリスマスバレルであった。
それを見やると再び鼻を鳴らし――
質の悪い油を使っているようだな。
と道端に落ちている軍手でも見るかのような目でチキンを一笑に付す。
こんなものを口にする気にはなれない。
すいませんね本場の味にはかなわないもので。
そもそも”本場”の店舗で出されたものも程度の良い油が使われているのかは疑問だが、流すように佐野支部長は言う。
気にも留めず、アッシュもまたその言葉を流すようにミネラルウォーターへと口を付けた。
いらねーならもらいますよー。
アーガントが言うよりも早く、その手にはフライドチキンが手に取られていた。
ディメンジョンゲートを使用して空間に生まれた歪へ手を伸ばして、フライドチキンを自分の手元に手繰り寄せたのだろう。
好きにしろ。こんな極東の田舎者どもが口にするものなど、私の口には合わないだろうからな。
さすが中枢評議会のお偉いさんですね、こちらには日本の食材しか用意がないもので、あなたの食事に関しては手配させていただかなくともよろしいということでしょうか?
それで構わん。どのみち、空腹を覚えたころにはこの星が無くなっているかもしれんからな。事態は刻一刻と悪化してきている、情報を精査したい。手早く簡潔に報告をすませろ。。
その言葉を制すように、どこからともなく少女の声が響いた。
麗華のものよりもさらに幼く、静かなのによく響く声質をしている。
あら、我々の到着を待ってはいただけないのですね。
佐野支部長と麗華の背後に黒髪の少女が現れ、二人は反射的に飛び退って彼女を見やった。
音もなく、なんの予兆もなしに霊のごとく現れたのはiPhoneを手にした”プランナー”都築京香だ。
おやおや、Ms.プランナー。ようこそお越しくださいました。
そうおどけて迎えるアーガントと険しい表情をしたアッシュの二人を見やり、佐野支部長が尋ねる。
今回の作戦はこの方も噛んでるんで?
彼に対しアッシュが口を開こうとするが、それよりも早くプランナーは語りだす。
我々ゼノスとしても地球滅亡は由々しき事態です、レネゲイドもまた滅びてしまいますので。故にこの惑星を守るべく全面的に協力させていただきます。
その為に、こちらで優秀なエージェントを手配させていただきました。
涼やかに説明していく彼女はどれほど精神性が老練していようとも変えられぬ、少女らしい小さな手で握ったスマートフォンをかざしていく。
急に自分のiPhoneを見せてきたプランナーに佐野支部長は意図を理解できずに目をパチパチとさせた。
傍目には親に買い与えられたスマートフォンを大人に見せびらかす女児のようにも見える構図だ、きょとんとするのも無理はない。
なあ麗華くん、あれ……iPhoneだよなぁ?
確かめる方法が一つありますわ! Hey! siri~!!
だがこの場にいる者たちは次の瞬間には「優秀なエージェント」と”プランナー”都築京香が前置きした理由を知ることになった。
言葉と共にiPhoneの前に光が集まっていき、人型をなしていく。
はい、なんでしょうか?
不思議なことに光が実体を持ち肉が構成されていくと眩いブロンドヘアーを後ろで一つに結び、白い肌に海のように深い青き瞳を厚めのフレームの眼鏡で覆った――言うなれば英語の教科書に出てくる女性教師が姿を現した。
ご用件は?
驚いたのですわ! アレ、iPhoneじゃないのですわ!! 私のiPhone最新型なのに!! あんなソリッドビジョンを作る技術は入ってないのですわ!!
はい、それでは私に関するご説明を開始してもよろしいでしょうか? 30秒ほどの時間が必要となります。
あ、あぁ……よろしく頼むよ。
私は電子データを起源とするオリジン:サイバーのレネゲイドビーイングであり、Apple社の開発した人工知能siriを起源としています。
私は個という意識に芽生え、現在、都築京香さんの下でゼノスのレネゲイドビーイングとしてお手伝いをさせていただいています。
そうだよなぁ、プランナーが連れてくるんだからレネゲイドビーイングだよなぁ……。
只今の説明でご理解いただけましたでしょうか?
星5! グッドですわ!!
今回のレビューは学習機能にデータを収集させていただき、今後の生命体としての活動にフィードバックさせていただきます。ありがとうございました。
あぁ、いや……ジャパンのそれは役に立たないものばかりだから、あまり参考にしなくていいと思うぞ。英語で読めないから星1とかさ。
アメリカのレビューもクレームまがいのもの多いと思うんだけどなぁ~。
判断材料の一つにさせていただきます。
「スタンドアロン」と彼女のコードネームを呼ぶ声がして皆が振り返ると……。
我々の説明に関してはそのあたりでよろしいでしょう。では作戦会議を開始いたしましょう。
都築京香はアッシュ・レドリックの隣の席に座り、そう全員へ伝えていく。
落ち着きはらった、小さな声にしかすぎないのだが聞く者の身を引き締めさせていく。
そこには巨大な組織を束ねる指導者の器がにじみ出ていた。
――場の主導権を握られている。
今回はゼノスとの共同作戦となる!
そんな焦りが生まれたアッシュはその声をかき消すかのように、これ以上言葉を続けさせぬように。
勢いに任せて立ち上がり、わざとらしく咳払いをすると皆に大きな声で宣言した。
そのうえで今後、当対策本部を巨大隕石対策同盟――”GIANT METEOR PROTECT LEAGUE”すなわち……。
【GMPL】と呼称する!!
あー、知ってますよこれ。ジャパンで言うところの……なんだっけな、あぁ! ガンプラってやつですよね!!
違いますわ! あの、スマフォでできる100人からだんだん減っていって最後一人になったら”ドン勝”っていうゲームのことですわ!!
それはPUBG MOBILEだな。
でも俺もこの単語は聞いたことがあるぞ、Twitterとかでたまに見かけるTRPGって遊びで、ゲームマスターとプレイヤーに分かれてそれで略してGMとかPLとか呼ぶんだよ。
へぇ~今は色んな遊びがあるんだねぇ。
じゃあまあ、とりあえずデータはまとめて日本支部から送られているはずなので、手元のパソコンにもインストールしておいてありますから必要であれば適宜そちらを参照してください。
はい、送っていただいたデータは補足事項や翻訳なども加え、こちらで事前に全UGN支部へと送らせていただきました。
日本支部も全力でバックアップを行わせていただきます。
壁にかかったモニターに日本支部長、霧谷雄吾の顔が映し出されそう佐野の説明に付け加えていく。
今回はゼノスの協力も得られるということで、ありがたい限りです。
所属は違えども、全員で一致団結してこの局面を乗り切り、地球を守り抜きましょう。
おやおや~、ここには最高の人員が揃っているはずなんですけど、日本支部長はお越しにならないので?
私は日本支部で待機し、直接指揮をとることで必要とされる物資や人員などをそちらに供給するなど、そういったサポートに徹したほうが日本支部の力を充分に発揮できるでしょう。
それに一般人や政府、報道機関から情報操作を行うことも必要になってきます。隕石を観測しているのは我々だけではありません、パニックや無用な被害を出さぬためにも、日本支部から離れることはできません。
まあ中枢評議会や本部から人員が赴いているのにあなたが来れない理由はわかりました、どうぞごゆっくりご観覧あれ。
もはや興味を失ったように資料に視線を落としながら、本部エージェントであるアーガントは棘のある言葉を投げかけた。
そして、その態度に肩をすくめた佐野支部長は二人とリヴァイアサンを交互に見比べ――
それで対策同盟……GMPLでしたっけ? その長は、総責任者は一体どなたになるんですかね?
そちらのお二方のどっちが――
もちろん私に決まっているだろうが!
全責任はこの私が取る!!
現場の指揮はこの若くして本部エージェントの座にまで上り詰めたディアボリックプロテクトがとる!
だがこのGMPLの全権を握るのはこの私だ、中枢評議員の一人である私以外に相応しい者などいるはずがないだろう。
やぁ~それは助かりますよ! 俺ごときじゃこんな世界規模の案件はとても手に負えないものでして。本部のみなさんが指揮を執ってくださるなんて心強いです、よろしくお願いしますよ!!
やぁ~それは助かりますよ! 俺ごときじゃこんな世界規模の案件はとても手に負えないものでして。本部のみなさんが指揮を執ってくださるなんて心強いです、よろしくお願いしますよ!!
両手を広げ、心の底から「解放された」という喜びで満ちた顔をした佐野支部長はぺこぺことお辞儀をしていく。
麗華ちゃんはイリーガルだけど、向こうの指揮へ入って引き続きサタンクロースを退治してもらうってことでいいかねぇ?
彼が振り返った先、「もっしゃもっしゃ」という擬音が似合うほどフライドチキンを貪る求聞寺麗華がいた。
声をかけられると何かを思い立ったのか、血相を変えて机を叩き、立ち上がる。
納得いきませんの! あの”ディアボロス”に指揮を任せるなんて……なんであのオールバック野郎なんですの!? 我慢なりませんの!
よく見たらそのオールバックよく似ているのですの! あなた、春日恭二が変装した姿ですわね!?あなたの好きにはさせませんの、オモテで勝負ですの!!
返答よりも早く、ディメンジョンゲートが開いた。
瞬きする間すらなく、麗華の目前へと移動を完了しており、その首へと手が伸びていく。
NOoooooo! ですのー!!
だが同時に身の丈ほどもある武骨で、それでいてメカニカルな大剣の切っ先がアーガントの首へ突き付けられていた。
複数の刀剣を合体させて破壊力を増すと共に、状況に応じて即座に着脱が可能な機械剣”ブレイクブレイド”
これを扱いこなせるのはこの場にその剣の名を名乗る矢野逸人のみ。
離れろ。
麗華を守るように二人の間に既に入っており、彼女は庇ってもらえたことに頬を緩ませるが……。
二人ともだ。
もう片方の手に握られていた柄のスイッチが押されると、光が刃となって伸びていき麗華の首に突き付けられていた。
うちの大事な即戦力のイリーガルさんにあまりおいたはしないでいただけませんかね~。本部と違ってうちは人材が潤沢じゃないんですよ~こんな田舎の支部じゃ。
いやいやそれはもちろんアーガントさん、あんたがこの子よりも活躍してくれるってんなら引っ込んでもらいますよ。でもねぇ、田舎者の日本支部よりもさらに田舎なこんな町のちんけな支部のイリーガルごときに
本部のエリートさんが手をあげた、なんてことが知れ渡ったら大ごとですよ。
こんなんでもこの子はねサタンクロースと対等に戦えるくらいにはできるオーヴァードなんですよ。この状況で好き嫌いで戦力選んでる余力が今うちらにあるんですかねぇ? もちろん私どもに思いつかないような代案があるんですよね、さすがは本部の方々です!!
見えない銃を突き付けあい、険悪となっていく対策本部に「ててん!」という電子音が響いた。
都築京香さん、こういうのを”地雷を踏んだ”というのですよね?
そして我々の現在の関係性は”犬猿の仲”という状態にある、そうですね?
えぇ、どうやら。
学習しました。
へいへいsiri! そんなことは覚えなくていいんだよ。
アーガントさん、あなたは”ディアボロス”と呼ばれた時に心拍数が上昇しました。何か触れてはならない部分がある、そういうことですね?
みなさん、そのことをぜひ学習してください。我々は故事にならえば”呉越同舟”の状態にあります。隕石という呉を超えるまでは円滑なコミュニケーションをはかり相互理解を深め、共にことへ臨んでいきましょう。
こっちからケンカを売るつもりはないんですよ。でもこちらも言い過ぎたことは謝ります。
陳謝する支部長の背後で中指を立てながら「クソわよ! クソわよ!!」と乱心する麗華。
まったく最近の機械は変なことまで覚える。
熱した心に水を差されたのか、ディメンジョンゲートを閉じたアーガントはチキンを手に取りフラストレーションをぶつけるかのようにほうばっていった。
お褒めに預かり光栄です。
褒めてねーよ、もう一つ覚えておけ。こっちは犬猿の仲ってわけじゃあない、アイツらが喧嘩を売ってきただけだ。一応仲よくしようっていう気概はあるんだぜ?
いやいやこちらも喧嘩なんて売るつもりはないんですよ、仲良くするつもりではあるんですよ。
こういうのを険悪なムードと呼ぶのですよね、わかっておりますとも。
ではこうしてみてはいかがでしょうか?
そんなに腹に据えているのであれば、一度白黒つけましょう。
幸いにもこの場には沢山のチキンがあります、大食い対決で勝敗をつけるというのはいかがでしょう?
栄養も摂れますしケガを負うこともありません、この方法はお役に立ちましたか?
どうなんだろうねそれは……。
あぁ、そうそう。先に訂正させてもらいたいんだけれども、この麗華くんは経験が浅いゆえに勘違いしてしまうこともある。でもオレにはきちんとアンタとディアボロスの違いくらいの見分けはついているよ。
私のデータによればディアボロスはもっと老けております。
そうだね!!
そこはナイスな判断だなsiri
お褒めに預かり光栄です。
その通りなんだよsiri、まだ若輩者だから許してやるがなレイカ、過度な詮索はやめてくれよ。
再び「ててん!」という電子音が響く。
そこにいらっしゃる求聞寺 麗華さんは17歳の高校生。アーガントさんは16歳……とデータベースに記録されております。
詳しくはキャラクタシートをご参照ください。
ヘイsiri、メタいぞ。
……ともかく、こっちとしては本当に喧嘩をするつもりはないんだ。
麗華くん、君のことをオジさんは頼りにしているけれどね。
こういう場じゃあもう少し落ち着いたほうがいいね。
siriとアーガントが何某か口論している端で、佐野支部長は麗華の頭に手を置いて穏やかにそう言い聞かせた。
手の甲を頬にあてて高笑いをあげる彼女はその時、長机の隅っこで座り込み微動だにしない少年の姿を見る。
いつも真面目に仕事にあたり、冷静沈着を保ち続ける矢野逸人はいま一点を見据えていた。
そうですわね! こんな年下に突っかかる理由なんてないのですわ!! そんなことはないのですわ!!
なんだ、決着はつけないのか?
両手にフライドチキンを握りしめ、それらが敷き詰められたクリスマスバレルをまだかとでも言わんばかりに、大食い対決のはじまりのゴングを待ち続けていた。
お前も参加するのか?
負けませんわよ!!
呆れるアーガントを押しのけて、麗華は両手の指にそれぞれチキンを挟んでいき片手に4つずつ、計八刀流に構えて席へついていく。
お前らはバカなのか?
ジャパンは戦争がずっとなかったから平和ボケしてるっていうのは本当みたいだな、お前らも非日常でジャームと散々交戦してきただろうに。
少々アホというか、間が抜けているというか……でも、たまにはお前らみたいなのと仕事をするのも悪くはない、退屈しなさそうだ。
そこで、柏手をうつ音がその場にいる者たちの耳朶を打った。
みなさん、レクリエーションはすまされましたか? 残された時間はあとわずか。今から六時間後に巨大隕石は阻止限界点を突破してしまい、地球へ衝突します。
大食い対決をご所望であれば、全てを解決したその後に、存分に行ってください。それでこそ、人間同士は親睦も深まるというものではないのでしょうか。
うんうん、たしかにそうですね。
頷きつつ、佐野支部長はスマートフォンを取り出しケンタッキーの予約を今から”7時間後”に受け取るよう取り付けた。
そしてこれまで、みなを制そうとして制しきれていなかったアッシュはぎこちなさそうに口を開く。
ま、まぁ。そうだな、店が残っているといいがな。
やっと入ってこれましたね、今までプランナーに追いやられて影がだいぶ薄まってましたよ。
私は貴様らの気のすむまで好きにさせていたにすぎん!!
おっと、これは失言でしたかね。
さすがに機嫌をこれ以上損ねられるのと、時間が浪費されていくのを見かねアーガントが口をつぐむと
アッシュはわざとらしく大きく咳ばらいをして立ち上がった。
GMPL! 行動開始だ!! まずは以下の点について貴様らに情報を集めてもらうぞ。
【情報収集】
※シーン数を制限しているシナリオの為、今回は先ほどのシーンを継続してそのまま情報収集を行えるものとして情報収集シーンへ移行し、各自判定を行っていった(現在4シーン目、ゲームオーバーまであと3シーン)
※2 調べられるのは以下の3項目あり、指定された技能を使用して判定を行い、難易度で指定された値をダイスを振って出た目(達成値)を超えることで情報を開示することができる。
■情報項目
【隕石について】
情報:UGN、ゼノス 難易度:8
地球へ接近している巨大隕石について概要を知ることが出来る。
情報:UGN、ゼノス 難易度:10
効果的な迎撃方法を知ることが出来る。
【サタンクロースについて】
情報:UGN 難易度:7
サタンクロースの概要について知ることが出来る。
【地球を覆うレネゲイドについて】
情報:ゼノス 知識:レネゲイド 難易度:8
サタンクロースが死に際に放ち地球を覆ったレネゲイドについて分析できる。
この三つの情報項目に対して、PC3:佐野直哉が情報収集に役立つエフェクト【ベーシックリサーチ】を活かして【隕石について】の難易度:10の判定に成功した為、難易度:8もそのまま開示される。
よーし、じゃあおじさんから調べていきますかね。《ベーシックリサーチ》っていうハヌマーンの情報収集の判定のダイスが増加するエフェクトも持ってきてるし、情報収集は得意だよ!
※佐野支部長が調べた情報↓
【隕石について】
情報:UGN、ゼノス 難易度:8
地球へ接近している巨大隕石について概要を知ることが出来る。
直径400kmの巨大隕石が5時間後に地球へ衝突するコースで移動している。
地球で誕生したレネゲイドウィルスとは別の生態系をもって宇宙で進化してきたレネゲイドーー
【βレネゲイド】に感染している”オーヴァード”であり対象が巨大かつ宇宙空間ということもあって、エフェクトによる干渉も大きな効果は望めない。
仮に地球が無事だったとしても衝撃波でレネゲイドウィルスが地球中に拡散されてしまい、全ての生命体は死に絶えるだろう。
■エネミー“巨大隕石”
HP:500 装甲:120 浸蝕率:???%
このエネミーは全力移動しか行わない、リアクションでガード値:10d10+74のガードを行ってくる。このエネミーが地球のエンゲージに接触すると全生命体が【死亡】しゲームオーバーになる。巨大隕石を移動させることはできず、この移動はあらゆる方法で妨害することもできない。また地球を移動させることもできない。【Eロイス:破壊神顕現】によってこのエネミーは地球へ向かって移動している。
→追加情報項目:【βレネゲイド】を調べることができるようになる。
※隕石についてのさらなる情報
情報:UGN、ゼノス 難易度:10
効果的な迎撃方法を知ることが出来る。
宇宙空間という特殊な空間から対象は飛来しているため、通常の攻撃方法では有効打を与えられず、仮にそれが通ずる距離にやってきた時点で破壊したとしても
レネゲイドウィルスは地球全土へ拡散してしまい、隕石の破片が地表を抉って壊滅的打撃を与えることになる。
よって超長遠距離からの射撃によって地球の重力圏外で破壊する必要がある。
防衛隊が極秘裏に開発しているらしい神の雷”ケラウノス”とよばれる新兵器ならばそれを成し遂げられる可能性が高い。
→追加情報項目:【神の雷”ケラウノス”】を調べることができるようになる。
■追加情報項目まとめ
【神の雷”ケラウノス”】
情報:UGN、軍事 難易度:9
防衛隊が開発しているらしい秘密兵器について詳細を知ることが出来る。
【βレネゲイド】
情報:ゼノス、知識:レネゲイド 難易度:8
βレネゲイドについて情報が解禁され調べられるようになった。どのような力を持つのか分析・調査できる。
だが、ここで二点追加で調べなければならない情報項目が追加され、ゼノスに所属しているPC4:siriが【βレネゲイド】について調べることに。
siriは常時効果を発揮するエフェクト【ブラックマーケット】をLv3で取得しており、潤沢な21点もの財産ポイントとアイテム【情報収集チーム】を所持している為、佐野支部長のようなエフェクトは持たないものの情報収集の判定は得意としている。
都築京香のiPhoneXXにインストールされているのである程度ゼノスの資金と人員を使用する権限を与えられている設定だ。
これもまた難なく【βレネゲイド】の判定に成功し、続いてPC1:求聞寺 麗華が【サタンクロースについて】の判定に挑もうとしたのだが……。
コネもなければ財産点もないんですよ。
そもそも社会の能力値が1のため判定に使用できるダイスも少なければ財産点も低く、情報収集には不向きな攻撃特化のキャラクターであるため【サタンクロースについて】の難易度:8がとてもキツい……。
クソわよ! クソわよ!!
UGNのデータベースにある情報をまとめ、分析しようとわめきながらパソコンで作業をする麗華。
判定を行おうとしたその直前、彼女の手元に弾丸が撃ち込まれた。
知っていますか、Ms.麗華。ゴム弾は殺傷能力はありませんが、骨を砕くには十分な威力を持っているらしいですよ。
ノイマンのエフェクト【支援射撃】だ、判定直前に使用し対象の判定ダイスを7(Lv)個増加させる。
※攻撃の判定以外にもこれは適用できる。
手の使えないゲーミングお嬢様にはなりたくないのですわ~!!
銃で脅されながらも、siriが上手くデータ解析を手伝ってくれた甲斐もありなんとか判定に成功することが出来た。
※siriが調べた情報↓
【βレネゲイド】
情報:ゼノス、知識:レネゲイド 難易度:8
βレネゲイドについて情報が解禁され調べられるようになった。どのような力を持つのか分析・調査できる。
【Eロイス(オリジナル)βレネゲイド】
●解説:地球外で地球のレネゲイドとは別の進化を遂げて発展してきたレネゲイドウィルス。
全てのシンドロームのエフェクトを使用できるが地球のオーヴァードのようにエフェクトやシンドロームの力を究めることで扱えるエフェクトを使用できない。
●効果:タイミング:常時/対象:自身/射程:至近
全てのシンドロームのエフェクトを取得し使用できる。ただし【制限:リミット、Dロイス、ピュア】のエフェクトは取得することも使用することもできない。
このEロイスはEロイス3個分として換算する。
全てのシンドロームのエフェクトを使える~!? クソわよ! クソわよ!!
※麗華が調べた情報↓
【サタンクロースについて】
情報:UGN 難易度:7
サタンクロースの概要について知ることが出来る。
人々の「サンタを信じる気持ち」が集合無意識となって生まれたオリジン:レジェンドのレネゲイドビーイング。
古来より存在しておりワーディングによって一夜で子供たちへプレゼントを配っていたのだが、近年人類がサンタを信じる気持ちが薄まることで力が弱体化してきてしまい、自分の存在を確立させるため「人々へ救いをプレゼントする」ことを目的に様々な事件を引き起こしてきたジャーム。
ブラックドッグ/ウロボロスのクロスブリードだと思われていたが、実はそれでは説明のつかない力を行使しており、まったく未知のレネゲイドに感染している可能性が高い。
またサタンクロースは複数体確認されているという情報もあるため、本体はあの隕石なのではないかと予測される。
続いてPC3:アーガントが《情報:UGN》を活かすべく情報収集を試み、余裕をもって成功。
※アーガントが調べた情報↓
【神の雷”ケラウノス”】
情報:UGN、軍事 難易度:9
防衛隊が開発しているらしい秘密兵器について詳細を知ることが出来る。
レネゲイドによって刻々と悪化していく国際情勢に対応するべく神楽駐屯地で開発中の新兵器。
ブラックドッグの能力を流用して設計されたタングステン、ウラン、チタンなどから作られた全長6m、直径30cm、重量100kgの砲弾を電磁誘導によって撃ち出し目標を破砕する“レールガン”の一種、それが神の雷”ケラウノス”である。
この兵器を射撃に優れたオーヴァードが使用すれば確実に隕石を打ち砕くことができるだろう。
だが……どうやら現在、FHの手によって重要なパーツが盗み出されてしまい使用不可能な状態にあるようだ。
■神の雷”ケラウノス”
種別:武器 技能:射撃 対象:惑星 射程:30万km 攻撃力:300
効果:この武器は搭乗状態になることで1シナリオに1回だけ使用できる。
※イニシアチブプロセスに同一エンゲージにいることで搭乗状態になることができる。
――この情報を抜いたことでトリガーイベントが発生し、シーンが切り替わっていった。
【トリガーイベント:神の雷”ケラウノス”】
シーンPL:全員
情報収集を開始して一時間後、いったんGMPLのメンバーが全員ミーティングルームによって集められた。
ディアボリックプロテクト、アーガントの手によって重大な情報がもたらされたのだ。
防衛隊の新兵器、神の雷”ケラウノス”ですか……まさか、このようなものを開発していたとは。
日本の各地へ支部を持ち、そのトップに立つUGN日本支部の長、霧谷雄吾はモニターごしにそう呟いた。
彼の耳にもそのような情報は入っていなかったのだろう、オーヴァードが増加しつつあるこの社会ではレネゲイド研究の先駆者であるUGNに防衛隊は後れを取っている。
UGNとて決して善意の組織ではない、理念こそ崇高なものではあるがその正しさが日本国民の益になるとは言い切れない。
国益を守ることが最優先の防衛隊にとってはジャームはもちろんのこと、文字通りこのような秘密兵器を用意しておくことは”もしも”が起きた時に必要になってくるのだ。
だがそのおかげで、今回の事件にも光明が見えてきた。
集められた情報を精査し、宇宙より飛来するジャーム化した隕石への有効な攻撃手段を模索していたところ、全会一致で防衛隊の新兵器《神の雷””ケラウノス”》を使用するという方向で意思が固まっていた。
もしこれを扱うことができればこちらの計算によると巨大隕石に対して有効な攻撃手段となるでしょう。しかし……。
問題はどこに目標が存在しているかだな、本部の情報によるとFHに基幹部品となるパーツがFHに奪われてしまっているらしい。賊の情報を洗う必要があるだろう。
やれやれ、奴さん方は世界が滅びても構わないってつもりなのか、それとも……まぁ、隕石が落ちてくるよりも先に盗んでいたんだよな。
嫌な入れ違いだなぁ……もう。
具体的な逃走経路とか潜伏先は目星がついているので?
それを調べるのは貴様らの仕事だ。
はいはい、つまり丸投げってことですよね。
そこからですかい……。
ぼやいた佐野支部長は腕時計の時刻を見て、もはや時間は5時間しか残されていないことを確認した。
このタイムリミットが過ぎてしまえば、巨大隕石を止めたところで破壊したことで発生するスペースデブリが衝突して発生する被害と、それが感染しているレネゲイドウィルスによってもたらされる被害で、どのみち地球に住まう生命体は滅びの道をたどることになる。
何ともまあ溜息をつきたくなる事態だが、落ち着き払った澄んだ声でプランナーが補足していく。
データが正しければ巨大隕石を破壊しうるでしょう、手間はかかりますが新たな手段を模索するよりは現実的な策かと思われます。
私としては確実に破壊を遂行するのであれば、もう少しレネゲイドの知識とUGNのノウハウを活かして改良を加えるべきかと思いますが……時間的猶予があるようであれば、ぜひご一考ください。
その為にもまずは素早くFHからケラウノスのパーツを奪い返さねばならん。
ディアボリックプロテクト、最優先で賊どもの情報を集めろ。ケラウノス本体は神楽駐屯地にあり、改造自体は可能だが……強化は出来ましたが肝心な時に撃てませんでは話にならん。
迅速に奴らを叩くんだ、いいな?
――地球滅亡まであと5時間。
GMPL! 地球の命運は諸君らにかかっている、行動再開だ!!
シーンは切り替えず、このまま情報収集へと移行していく。
【情報収集2】
シーン継続、そのままPC全員で情報収集へ行っていく。
先ほどのトリガーイベントを行ったことで、新たな情報項目とある判定が追加された。
~ケラウノスを完成させよ~
【パーツの現在位置】の判定を行い条件を達成することで神の雷”ケラウノス”を操作できるようになり
PC達の任意のタイミングで「ミドルフェイズ2:天の光はすべて星」へ移行することができる。さらに同時進行でケラウノスを改造する判定が行えるようになり、項目ごとに指定された技能で判定を成功させると性能を向上させられる。
※パーツが無いためケラウノスを起動させることはできないが、本体は健在であるため改造自体は可能。最終的にケラウノスを武器として使用し、技能:射撃で判定を行って隕石へ攻撃を行って戦闘不能にする必要があるため、なるべく性能を向上させておくことを推奨する。
~ケラウノスを改造せよ~
【射撃精度を向上させろ】
知識:機械工学、レネゲイド 情報:WEB 裏社会 難易度:7
ケラウノスの照準装置を改造し命中精度を向上させることができる。
【威力を向上させろ】
調達、情報:UGN,ゼノス 難易度:9
ケラウノスのエネルギー供給ラインを整え、出力を強化せよ。部品を集める必要がある。
調達、情報:UGN,ゼノス 難易度:12
賢者の石の反応が洞爺湖の南に位置する阿蘇山から感じられるようだが……?
【ケラウノス起動に必要な電力を確保しろ】
交渉 情報:噂話、裏社会、UGN 難易度:8
通常の発電方法では追いつかない、ケラウノスを起動するのに必要な電力を確保しろ。人々に呼びかけ人力発電を行う必要がある。
交渉 情報:噂話、裏社会、UGN 難易度:15
~追加情報項目~
【パーツの現在位置】
情報:UGN 難易度:8
防衛隊が開発中の新兵器ケラウノスはFHによってパーツを盗まれてしまった。
犯人たちの現在位置を特定することができる。
挑むべきタスクが増えタイムリミット(残る5シーン)を考慮すると、パーツを奪還するさいに戦闘を行うシーンが発生する可能性が高い為、まず佐野支部長(PL:nさん)の提案でGMの許可もありsiriがエフェクト【戦術】を宣言。
これで麗華、佐野、アーガントの三名がこのラウンドの間、判定ダイスが7個増加したため判定失敗の恐れが大幅に軽減される。
※判定が失敗した場合もう一度シーンを作って登場し、改めて挑戦しなければならない。
その甲斐(支援射撃と財産点のごり押しも)あって、全員が無事に最優先事項である【パーツの現在位置】の情報項目を開示し
ケラウノスを改造せよを難なく突破することができた上に、もう一度シーンを作って取り残した情報を回収しながらも
クリスタルシールドを始めとした防具を揃えることもできた為、ロスを出すこともなくもはや戦闘の準備は盤石であった。
――開示された情報と判定に成功したことでケラウノスに付与された効果――
↓
■開示した情報項目
【地球を覆うレネゲイドについて】
情報:ゼノス 知識:レネゲイド 難易度:8
サタンクロースが死に際に放ち地球を覆ったレネゲイドについて分析できる。
サタンクロースは死の間際に【Eロイス:破壊神顕現】を使用して自らのレネゲイドで地球を覆い、それを目印としてレネゲイドに感染した巨大隕石を飛来させている。
このレネゲイドはマーキングのようなもので成層圏全域をカバーしており除去することは不可能。さらに【Eロイス:不滅の妄執】によって維持されているため「地球に巨大隕石が激突する」もしくは「巨大隕石が戦闘不能になる=破壊される」という結果になるまで解除されない。
【パーツの現在位置】
情報:UGN 難易度:8
防衛隊が開発中の新兵器ケラウノスはFHによってパーツを盗まれてしまった。
犯人たちの現在位置を特定することができる。
ケラウノスは防衛隊神楽基地に存在しているのだが、忍び込んだ春日恭二たちの手によって
エンジンとジェネレーターを盗み出されてしまったためエネルギー供給ができず起動できない。
春日たちは現在、札幌国際スキー場に逃れて潜伏しているようだ。
→トリガーイベント【パーツを奪還せよ】へPCの宣言で移行できるようになる。
■ケラウノスを改造せよ
【射撃精度を向上させろ】
知識:機械工学、レネゲイド 情報:WEB 裏社会 難易度:7
ケラウノスの照準装置を改造し命中精度を向上させることができる。
人工衛星とリンクしてAIがターゲットに対し補正を行ってくれるようになった。
※ケラウノスに以下の効果が付与される。
●ケラウノスを使用した判定のクリティカル値を1減少させる(下限値:2)
【威力を向上させろ】
調達、情報:UGN,ゼノス 難易度:9
ケラウノスのエネルギー供給ラインを整え、出力を強化せよ。部品を集める必要がある。
●ケラウノスを使用した攻撃の攻撃力+100
●ケラウノスを使用した攻撃に対して対象はガードをすることが出来ず、装甲値を無視してダメージを算出する
調達、情報:UGN,ゼノス 難易度:12
賢者の石の反応が洞爺湖の南に位置する有珠山から感じられるようだが……?
↓
火山で眠っていた賢者の石が搭載された、ケラウノスに以下の効果が付与される。
●ケラウノスを使用した判定のクリティカル値を2減少させる(下限値:2)
【ケラウノス起動に必要な電力を確保しろ】
交渉 情報:噂話、裏社会、UGN 難易度:8
通常の発電方法では追いつかない、ケラウノスを起動するのに必要な電力を確保しろ。人々に呼びかけ人力発電を行う必要がある。
※ケラウノスに以下の効果が付与される。
●ケラウノスを使用した判定に使用する判定ダイスを30個増加させる
交渉 情報:噂話、裏社会、UGN 難易度:15
充分な電力が確保されることで120%の性能を発揮することができる。
↓
続々と人々が、電力が、エネルギーが集まっていく。日本中の電力がケラウノスへ供給されるようになったことで以下の効果が付与される。
●ケラウノスを使用した判定のクリティカル値を2減少させる(下限値:2)
~ケラウノスの現在の性能まとめ~
神の雷”ケラウノス”
種別:武器 技能:射撃 対象:惑星 射程:30万km 攻撃力:300
効果:この武器は搭乗状態になることで1シナリオに1回だけ使用できる。
※イニシアチブプロセスに同一エンゲージにいることで搭乗状態になることができる。
●追加効果一覧
【ケラウノスを使用した判定のクリティカル値を2減少させる(下限値:2)】
【ケラウノスを使用した判定に使用する判定ダイスを30個増加させる】
【ケラウノスを使用した判定のクリティカル値を2減少させる(下限値:2)】
【ケラウノスを使用した攻撃の攻撃力+100】
【ケラウノスを使用した攻撃に対して対象はガードをすることが出来ず、装甲値を無視してダメージを算出する】
【ケラウノスを使用した判定のクリティカル値を1減少させる(下限値:2)】
以降、戦闘の準備も隕石への攻撃を行う判定に対する不安も解消されたことで、プレイヤー達はトリガーイベントを発生させる決意を固め、プレイヤーキャラクターたちは春日恭二達が逃げ込んだらしい札幌国際スキー場へ向かっていった。
シーンが切り替わっていく。
【トリガーイベント2:ケラウノスパーツ奪還作戦】
シーンPL:全員登場
札幌国際スキー場、ウィンタースポーツシーズンには国内外を問わず訪れた人々で賑わっているのだが、巨大隕石飛来中のニュースを見た人々は我先に逃げ出し、今は静かに降りしきる雪しか確認できない。
すっかり人のいなくなったロッジへとGMPLの四人は足を踏み入れた。
雪山は息が白み、肌を刺すような厳しい寒風で彼らを迎え入れたが、オーヴァードという人を超えた存在である者たちには寒さ自体は感じるものの、生命を脅かすというレベルのものではない。
それでも一旦、どのようにFHエージェント達を捜索するか状況を整理する必要はあった。
この雪山のどこかに、奴らはいる。
――残された時間は4時間。
闇雲に探し回っては作戦に支障をきたしてしまう。
俺は支部長と同じハヌマーンです、捜索には長けています。別行動をとりましょう。
そうだね、あまりぞろぞろと動いて”ディアボロス”たちに気取られるかもしれない。でも、何か変化があればすぐに連絡するんだよ。
そっちこそ、麗華を頼みますよ。
言って、頬を緩ませたブレイクブレイドはロッジの裏口から出ていき単独で捜索活動を開始していく
。
「私にもそれくらいできますわ!」と意気込んだ麗華は食って掛かるように飛び出していこうとするも、佐野支部長に襟首をつかまれ遮られてしまう。
捜査に長けているのはハヌマーンだけじゃないだろうに、なぁsiri
重力偏差能力を持ち、使い手によっては広範囲の物体の配置を把握することが可能であるバロールに属し
肉体を強化させられるキュマイラの力も併せ持つアーガントはソファーに座り込みそう投げかけた。
はい、そのとおりです。私が持つノイマンとしての思考能力もきっとみなさんのお役に立てるでしょう。しかし私が持つデータによれば矢野さんは私と同じくノイマンの力も行使できるクロスブリード。
音と風を操作する佐野支部長の有用性はこれまで度々証明されてきました、この二つを併せ持つ矢野さんは単独でも……。
わかったわかった、サンキューsiri。
そうだともそうだとも、うちのブレイクブレイドは自慢のチルドレンなんだぞ。あの子ならうちらがカバーできない捜査範囲を補ってくれるはずさ。
だから、俺たちは俺たちで出来ることをやればいい。絶対に見つけ出せるはずさ。さっ、隊長さんやっていきましょうよ。
やけに信頼しているんだな、買い被りすぎると痛い目みるぞ?
絶対的な自信と実績を持つがゆえに、麗華とたった一つ(しかも年下)しか変わらないにも関わらずアーガントは欠点を見抜き、そう指摘した。
いつものごとく皮肉にも聞こえるが彼の言うことは正しく、だからこそ佐野支部長も感情を伺わせない笑顔を浮かべて返すだけだ。
オーヴァードはレネゲイドウィルスに浸食され、適合することで異能力を扱えるようになったただの人間だ。
傷を負えばどのような深手でも再生するし、人知を超えた13通りに系統づけられた様々な力を複合的に行使することができる、まさに超人。
だが、彼らはその力を使うたびにレネゲイドウィルスに蝕まれ、理性を失っていき再生能力に頼れば頼るほど、強力なエフェクトを使えば使うほど、ジャームと呼ばれる心を失った怪物へ近づいていく。
完全にレネゲイドウィルスに飲まれたジャームに単独で勝つことは基本的に非常に困難であり、それを成しえるような強力なオーヴァードであればあるほど危険なジャームが誕生してしまう。しかし、それを倒すにはレネゲイドを受け入れて力に頼らねばならない。
だからこそ戦闘経験に長けた二人はよく知っていた。
共に戦っていた仲間が、信頼を置いていた部下がジャームへ変貌してしまう苦しみを。
言葉が少なくなった二人を不思議そうに眺めた麗華は、率先してFH捜索の陣頭に立って行った。
【知覚判定:難易度8】
雪山の中に潜むFHエージェント達を探すべくプレイヤー達は上記の判定を試みるも、やはり麗華は失敗した。
クソわよ! クソわよ!!
佐野 直哉:4dx+1>=8 DoubleCross : (4R10+1[10]>=8) → 9[1,3,3,9]+1 → 10 → 成功
――風の流れで佐野支部長は林の中に何かがいることを理解した。
集団だ、数は10を超えており何らかの建造物に身を隠していることが風にのった音から伝わってくる。
【彼方からの声】という簡易的なエフェクトを使い、GMPLのメンバーにだけ聞こえるようその旨を伝え
彼は静かにそちらの方角へと接近していき、残る者たちもそれに続いていった。
木々に隠れながら、ハヌマーンの音波操作で自らが生み出す音を殺し、可能な限り気配を殺す佐野支部長の所作は歴戦のエージェントであることを裏打ちする。
このような状況に慣れておりアメリカ人であるアーガントは”NINJA”を思い浮かべた。
山に住まう獣たちすら眠りにつく、この雪に覆われた林を抜けていくと開いた空間に辿り着き、そこには――
かまくらが設営されていた。
佐野支部長はさらに見る、山用の装備を整えた彼らを。
クリスマスイブにガストーチで炊いた火によって調理され、みそによって食欲をそそる煙をたてた鍋をつつくFHのエージェント達の顔に地球を滅ぼす巨大隕石が迫っている危機感や焦燥はいっさい見られず、それどころか一仕事終えて食事にありつく至福に包まれていた。
無言で気配を消したままつかつかと佐野は近づいていき、鍋を蹴り上げる。
あちっ!
だ、誰だァ!? 敵襲かッ!?
俺たちの石狩鍋をよくも! 鍋に罪はねぇーだろうが!!?
あぁーそうだよ敵襲だよディアボロス、春日恭二さん。
腰を低くし、鍋の中身を受けて熱さに転げまわった春日恭二をのぞき込むようにして彼は言った。
ふっふっふ、クリスマスイブだというのにご苦労なことだなUGNの犬どもめ。
それはお互いさまだろうに。
だが、このパーツさえあれば我々もケラウノスを作ることが出来る、その力さえあれば貴様らの支部など一撃で木端微塵にできるというものだ。
この力さえあれば私もマスターエージェントに……。
お前さんがマスターエージェントになる前に死ななきゃいいけどね。
ほう、ケラウノスの情報を掴んで我々を追跡してきただけあって腕には自信があるようだな。
もちろん、佐野支部長は地球に迫りつつある隕石のことを言っているのだが、この春日恭二には一切通じないようだ。
何か勘違いをしている、山に隠れていたため状況を把握できていないことは明らかであった。
おーいブリッツガルーダ! ディアボリックプロテクト、スタンドアローン!! こっちだぞー!!
瞬間、ディメンジョンゲートが佐野支部長の目の前で開き、アーガントが飛び出してきた。
なりふり構わぬ、鬼のような形相をする彼からはいつもの余裕はかき消されてしまっている。
春日恭二、貴様ァ!!
力任せに振りかぶられた拳は――流石は不死身と謳われる古参のエージェントだけあってか、戦闘態勢に入った春日恭二に軽くよけられてしまう。
そのまま彼は距離を取っていき、迫ってくるGMPLの四名を見張らせる場所へと逃れて見せた。
もはや鍋を蹴り上げられた時のような隙はない。
えっ? えっ? えっ!? えっ!?
突如、前に躍り出たアーガントが春日恭二に対峙すると、二人のオールバックを見比べて麗華は首を傾げる。
“ブリッツガルーダ”は三歩あるけば忘れる”鳥の頭”のように、よく似た見た目をした二人を判別しかねているようだ。
人間にも見えない色を見分けられる”鳥の目”を彼女は持たない。
ブリッツガルーダ、一応伝えておくけれども青いのが味方で、白いのが敵だよ。間違えないようにね。
わかりましたわ、青が敵で白が味方ですわね!
ブリッツガルーダ、そうではありません。もっといい判別方法があります、眼鏡が敵、眼鏡をしてないほうが味方です。
眼鏡のほうがわかりにくくないかな~
なるほど、色と眼鏡のあるなしという二つの要素でもって二次元座標を多面的に把握できますわ!!
そのような複雑なことではないのですが。
その渦中にある眼鏡をくいっと片手で押し上げ、薄笑いを浮かべた春日恭二はアーガントを見やる。
おやおや、この私と出会えたことがそんなに嬉しかったか? 私も有名になったものだ。
嫌悪しているんだよ、嫌悪! お前のせいで余計な被害を被ってんだ、バカなイリーガルに誤認されて攻撃されたりなッ!!
とっととくたばりやがれ!!
私は誇り高きFHエージェント、”ディアボロス”春日恭二。貴様に嫌悪されて喜びこそすれ、謝罪などするいわれはないわ!!
余裕を見せ、名乗り、構えた春日に対し……アーガントもまた平静さを取り戻し、乱れた髪をかき上げてオールバックにまとめなおすと――
俺の名はアーガント・フローレス、”ディアボリックプロテクト”
貴様のせいで随分、悪名高くなったものだよ……だから、ここで貴様を駆除してこの悪名を雪ぐ!
そう名乗りをあげ、気合裂帛させると……構えた。
そこへぞろぞろとかまくらより、豪雪地帯の厳しい環境で育まれた骨太で見るからに屈強そうな熊のような男たちが現れる。
日本人離れしたロシア人のように堀の深い顔立ちをした彼らは、苛立ちを隠しもせずに四人をにらみつけた。
春日さん、こいつらっすかオレらの石狩鍋ぶちまけてくれたのは。
こいつらやっちまっていいっすか?
北の大地を荒らしまわる暴れ熊――FH道民トループは殺気立つ。
あぁ、歓迎してやれ。盛大にな。
逃亡生活で”アイツ”も飢えているだろうしな、くっくっく。
不敵にほほ笑む春日に、これまた悪意のにじむ残虐な笑みを浮かべた道民たちは深く息を吸い込み、山を揺るがすかのような大声を張り上げた。
出てこーい! サンケベツ!! エサの時間だぞーッ!!
すると、声とほぼ同時にアーガントの足元から巨大な岩のようなものがせり出てきて、真っ二つに裂けると肉を抉るのに相応しい白い突起が見えた。
瞬時にアーガントは飛び退り、仲間たちのほうへ引いていくとようやくそれがなんなのか理解できた。
岩だと思われたそれには二つの目があり、人間など一飲みにできるほどの大きな口があり、骨さえもスナック菓子のように噛み切れるであろう顎の筋肉と鋭い牙が備えられていた。
吹雪ですら肉に触れられないほどの分厚い剛毛をたたえたその顔は、雪の下から這い出てくると真っすぐに逃げた獲物を追っていく。
ヒグマだ。
ヒグマと形容するには5mはあり1tにも達するであろう体格はあまりに巨大すぎ、もはや怪獣とでも呼ぶべきそれへ、咄嗟に佐野支部長はワーディングを展開するもののレネゲイドに適応した生物を化学物質により無力化するそのエフェクトは”無力”だった。
オーヴァード、それもジャーム化したヒグマは高層ビルですら一撃でひしゃげさせるベアクローを放ち、能力で重力の壁を作ったもののアーガントは5mほど弾き飛ばされてしまう。
巨体に似合わず、1tもの重量を構成する肉全てが筋肉であるヒグマの動きは速かった。
追撃を加えようと一瞬で間合いを詰めたヒグマにアーガントは再びガードの構えを取るが、咄嗟に爪は矛先を変えた。
――ヒグマは女性の柔らかい肉を好む。
え?
麗華へとその矛先は向けられてしまい、飛び掛かったヒグマは猛る爪を振り下ろしていく。
あまりの素早さと異常な事態に、このメンバーの中では経験の浅い彼女は反応することすらできなかった。
前に出て敵の攻撃を受け止めることは彼女の役割ではない。
代わりに、いつも近接戦闘による陽動を務める矢野が、雪を蹴散らしながら風のごとく麗華の前へ立ち、 己のコードネームの由来となる身の丈ほどもある大剣”ブレイクブレイド”でその爪を受け止めてみせた。
耳をつんざく硬い金属音が響き渡り、盾となりながら己の背後にいる麗華へつぶやいていく。
どうした麗華、まだ誰かに背中を預けないと戦えないのか?
いつのまにか佐野支部長を盾にするように隠れた麗華は、雪を払いながら出ていき――
相棒のくせに到着が遅いんですの! あなたがいないと私は何もできないのですわ!!
遅れた分は働きで返させてもらう。
言うと、剣を握る手に力がさらに込められていき、身の捻りを加えることであの巨体が浮き上がっていく。
ノイマンの高速化された思考能力によって即座に効率のいい作用点を見出し、相手の強大な力をそのまま己の力へ変換できる力点へとハヌマーンの能力で衝撃を加えることで成しえた業だ。
そのまま刃先へ音波を流し込んでいき、全身のバネを利用して力を加えた矢野はクマの衝撃としてダメージを与えて見せた。
同じくハヌマーンシンドロームの佐野支部長でもなければ、その攻撃はただ一太刀浴びせたようにしか見えなかったことだろう。
しかしこれだけの動作を一瞬のうちにノイマン/ハヌマーンのクロスブリードである矢野逸人はやってのけた。
空中へ身を躍らせたヒグマへと一直線に飛び上がり、同時にブレイクブレイドの刀身が左右に展開すると、左右一対となった二振りの刀剣が射出される。
緩やかに湾曲した二刀は合わせると鋏となるのだが――今は二刀をヒグマの右腕と左腕へそれぞれ突き刺し、動きを封じて再び大剣を構えると
そっちは任せていいんだな、支部長。
まあ大丈夫じゃないかな、本部の人も麗華ちゃんもいるしなぁ~。存分にやりなよ。
ブレイクブレイドが合流し、頭数が揃ったことに「やれやれ」とほっと一息ついた佐野支部長は声を聞いて、自らを頭数に入れず、そう勘定をすませた彼はどことなく気が抜けているようにも見える。
死地に臨んでいるにも関わらず、死地には感じられない、ベテラン故の欠落があだとなっているようだ。
麗華を頼んだぞ。
己を鍛え、導き、戦地を駆けずり回ってきたブレイクブレイドにとって、思わぬ長い付き合いとなった支部長の心境を察して矢野は短くそう返すだけに留めた。だがそれは絶大な効果を発揮し、目に真剣のような鋭さを帯びさせた佐野支部長はsiriを見やる。
膨大なデータをインプットし能力を最適化し続けてきた優秀なるAIのレネゲイドビーイングは問われるよりも早く――
気合いが入らないのであれば、気分が高揚するBGMを再生いたしますか?
こんな雪だらけの山はおじさんには静かすぎて気が乗らないとこだったんだ。えーと……へいsiri! ご機嫌なBGMをかけて!!
くっくっく、このケラウノスの力さえあればあの”イスカリオテ”、コードウェル博士さえも凌駕し私がFHを牛耳ることも夢ではない!
FHは私の意のままだ! サンタさんは私にとんでもないプレゼントをくれたものだ! はっはっはっは!!
さあ! その門出を貴様らUGNの血で飾ってくれよう!!
やれええぇぇぇぇぇぇお前たちィッ!!
途端、スキー場のスピーカーというスピーカーを介してクリスマスイブのロッジに相応しい――
L’Arc〜en〜Cielの【Hurry Xmas】がオーケストラを思わせる壮大なイントロと共に流れ出していく。
そうだ、こんなところで止まっている場合ではない。
今、自分たちの頭上では地球を滅ぼす隕石が飛来してきており、クリスマスを心待ちにしていた人々を脅かしている。
己と共に戦うUGNの若いエージェントやチルドレン、そしてイリーガルたちは日常と非日常の狭間で揺れ動き、一年間心に傷を負いながらも生き延びてきた。
そんな彼らをねぎらう為にも、この聖夜だけは全てを忘れて羽を休ませてほしいと佐野支部長はパーティーの準備をしてきたのだ。
――Hurry Xmas!!
早くクリスマスよ来いと、まるで佐野支部長をはやし立てるかの如くミュージックはサビへと入っていく。
キャンドルに、戦意に火を灯した彼は獲物である大太刀を構えた。
だが士気を滾らせたのは彼だけではない。
春日恭二のその叫びと共に、一斉にFH道民トループ達は戦闘態勢をとり四人へ襲い掛かっていった。
――戦闘開始――
行動値一覧
佐野 直哉:13
春日 恭二:12
siri:8
求聞寺 麗華:6
アーガント:4
FH道民トループ3体:3
【セットアッププロセス】
戦闘が開始されまずは第1ラウンドのセットアッププロセス。
春日恭二たちエネミー側の行動は特になく、siriとアーガントがエフェクトを使用する。
敵対戦力の分析が完了しました。
【コンボ:siriの言う通り】戦術Lv7+常勝の天才Lv7
効果:対象[麗華+佐野支部長+アーガント] ラウンド間、対象は攻撃力が+28されメジャーアクションの判定ダイスが+7される。
春日! お前のそのバカな思考をどうにしかしてから出直してこい!! 行くぞコラァッ!!
【壱式城鉄”インタントオリジナル”】虚無の城壁Lv3
効果:対象[対象:自身] ラウンド間、自身のガード値+9。移動を行った場合効果が失われる。
セットアッププロセスが終了し、行動値が最も早い佐野支部長のメインプロセス(攻撃したりできるいわゆる自分の手番)へ。
まずはオートアクション(行動消費なしで条件さえ満たせば使用できる行動)でアイテム:ウェポンケースの効果で武器:両手剣を装備。
そして、マイナーアクション(主に移動などを行う)でFH道民トループのエンゲージへ戦闘移動で突っ込んでいき――
これで露払いができればいいんだけどね。
メジャーアクション:コンセントレイト:ハヌマーンLv2+吠え猛る爪Lv1+さらなる波Lv7+獅子奮迅Lv1+疾風迅雷Lv1
効果:対象[FHトループ1~3] 装甲値を無視してダメージを算出しドッジ不可の範囲(選択)の攻撃力19(+28)の白兵攻撃
クリティカル値8でダイスを10個(siriの戦術Lv7で7個増加中)振ることで命中判定を行い、出目と<白兵>の技能のLvを足して達成値とし、ダメージを算出するダメージロールに使用するダイス数が決定される。
詳細は省くがつまるところこの達成値が高ければ高いほど高ダメージも狙らっていけるのだが、果たして……?
佐野 直哉:10dx@8
DoubleCross : (10R10[8]) → 10[1,2,4,4,4,5,6,7,9,9]+3[3,3] → 13
ダイス目は残念な結果に終わったが、結局FHトループ達はドッジ(回避)ができないため問題なし!
ガードを宣言するしかないがトループ達はガード値を持つ武器や、ガード値を上昇させるエフェクトも所持していない。
13の達成値を切り上げて20とし、10の位の値を【ダメージロール】として参照。
2d10を振ってこれに攻撃力を加えたものがダメージとなるが、さらにDロイス:破壊者の効果によってもう1d10を追加。
佐野 直哉:3d10+6+14+28
DoubleCross : (3D10+14+28) → 13[4,3,6]+6+14+28 → 61
siriの支援(常勝の天才Lv7)もあって61のダメージとなり、一瞬でFHトループ達は壊滅した。
春日さん、いや! 未来のFH本部長さん!! ホントにこいつらやっちゃっていいんスよねぇ!?
あぁ構わんぞ、遠慮はいらん。
ひっひっひ、石狩鍋はダメになっちまったが……お前らを”UGN鍋”の具にしてやるぜぇ!!
食べ物の恨みから、全身に力をこめて衣服を隆起した”筋肉で破き捨てた”道民トループ達は、バキバキにパンプアップした肉体を雪山に晒し、威嚇のポーズを示す。
れやれ、最近のFHエージェント達はのんきなもんだ……ねっ!!
大太刀の背で肩を呆れたようにトントンと叩きながら、その弛緩しきった身へと一瞬。
踏み込みと共にその刹那で全ての力を足へと集約させていくと、突風のごとく道民トループ達の間を通過していき、その時には既に大太刀は振りぬかれていた。
まるで暴風、構えもあったものではない荒々しい一太刀が雪原ごと敵を宙に舞いあげ、彼らは雪と共に花火のごとく散っていく。地面に激突し、倒れたFH道民トループ達にもはや動ける余力を残すものはいない。
やれぇー! お前たち!!
道民トループ達におだてられ気を良くした春日恭二が叫んだ時にはすでに、そのような惨状ができあがっていた。
彼の声に応える者はもはやいない。
へっ?
唐突すぎる展開に思わず、間の抜けた声を春日は漏らしてしまう。
こいつのメンテも手間がかかるんだけどね。
敵を、地表ごと横薙ぎにしてみせた佐野は背後へと振り返り――
じゃっ、あとは任せたね。
残る春日恭二との戦闘をゆだねていく。
オーヴァードの戦闘とは常人では目で追いきれない、超高速で繰り広げられるものとなる。
ブラックドッグによる雷速の攻撃やバロールの重力操作による加速、そして最速のシンドローム”ハヌマーン”による踏み込み。音と衝撃を操る彼らの速さはほんの少し力をこめるだけで超音速にも達する。
麗華たちへ送られた言葉と同時に、春日恭二は駆けだしていた。
春日恭二、マイナーアクション:破壊の爪Lv2+ハンティングスタイルLv2
効果:素手のデータを変更し(攻撃力:-5→攻撃力:10)エンゲージの影響を受けない戦闘移動を行う。
佐野支部長がいるFH道民トループのいたエンゲージをすり抜けて、春日恭二は不敵の笑みを浮かべながら麗華たちのエンゲージへ突入。
そのままメジャーアクションへ。
【不屈の一撃verX’mas】メジャー/範囲(選択)/至近/コンセ:キュマイラLv3+獣の力Lv5+渇きの主人Lv5+血の宴Lv3+オールレンジLv5+吸収Lv3
効果:攻撃力20+装甲無視、命中するとHP+20回復、対象にシーン間あらゆる判定D-3
単体攻撃の範囲を拡大し麗華,アーガント,siriの三名を狙った範囲(選択)の攻撃を放とうとするも、ここでアーガントが【オートアクション】を宣言。
ちょっと待ってもらおうか、春日恭二ィ……。
【プロテクトアイギス<天使の魔瞳>】孤独の魔眼Lv3+特異点定理Lv3
効果:範囲(選択)の攻撃の対象をあなた(アーガント)へ変更しさらにガード値を+3d10
春日の攻撃はアーガント一人へ絞られてしまい、そのまま彼へと全力の一撃が見舞われていく……!
貴様の血でクリスマスを彩ってやるぞ! この力があれば――いけるッ!!
春日恭二:14dx7+4
DoubleCross : (14R10+4[7]) → 10[1,3,3,4,5,6,6,6,7,8,8,8,9,10]+10[1,5,5,10,10,10]+10[4,7,7]+10[6,9]+2[2]+4 → 46
しかし、アーガントはあらかじめsiriより手渡されていたウェポンケースで、先ほどミドルフェイズで購入していた【クリスタルシールド】を指定直していたためここで宣言し、オートアクションで装備。
苛立ちと憎悪をにじませてはいるが、これほどまでの力を見せつけられてなおアーガントの表情からは余裕が見て取れた。
春日恭二は鋭い爪をもつ悪魔のものに変貌させた手で、自らの手首を傷つけ血の飛沫をアーガントへ放つ。
滴る血液はその温度を急速に下げていき、周囲の雪を取り込むと氷の茨となって彼の身体を貫いていった。
13のシンドローム中、自在に血液を操ることができるブラムストーカーの能力だ。
捉えたぞッ! 食らえ、不屈の一撃verX’masだァー!!
その結晶もろともキュマイラの強化された驚異的な膂力によりアーガントを砕くべく拳が放たれていく。
血液に含まれる春日恭二の細胞が彼の身を蝕んでおり、この攻撃を受けてしまえば今後の戦闘行動に大きな支障をきたすことは、選りすぐりの優秀な本部エージェント達の中でも抜きんでた功績をもつ”ディアボリックプロテクト”には一瞬で理解できた。
それでもなお、彼の余裕が崩れることはない。
アーガントはリアクションでガードを宣言、さらにオートアクション――
【永遠の城<インフィニットキャッスル>】:イージスの盾Lv3+グラビティガードLv3
効果:ガード値+6d10(これに先ほど宣言したエフェクトの効果でもう3d10増加)
セットアッププロセスで宣言した虚無の城壁Lv3(ガード値+9)とクリスタルシールドのガード値:12を合計して……。
浮かれてんじゃねえ! このバカがぁーッ!!
アーガント・フローレス:3d+3d+12+3d+9
DoubleCross : (3D6+3D6+12+3D6+9) → 8[1,2,5]+10[5,3,2]+12+10[1,3,6]+9 → 49
ガードを宣言すると命中が確定するため、ダメージロールへ!
春日恭二:5d10+20
DoubleCross : (5D10+20) → 32[8,9,5,5,5]+20 → 52
装甲値を無視するためダメージはガード値によって削られて――なんと3ダメージに抑えられてしまう。
が! これでも飽き足らずアーガントはさらにダメージ適用直前にオートアクション!!
【揺れる空間<パペットボックス>】斥力障壁Lv5によってそこから1d10-15のダメージを軽減。
なんだ、この手応えは……まるで……!
アーガント・フローレス:1d+15
DoubleCross : (1D6+15) → 3[3]+15 → 18
城を相手に殴りつけているようなものではないか……ッ!?
ダメージ3点から18点をマイナスして……結果!ダメージは0!!
構えられた身を覆い隠すほどの盾に放たれた拳を押し返す斥力が加えられ、奇しくも同じシンドロームであるキュマイラの力が生み出す圧倒的な身体能力で地面を蹴り上げ、まるで拳自体を殴りつけるかのごとく攻撃は弾き返される。
二人が生み出した運動エネルギーはほぼ互角であるがしかし、重力操作によって受け流したことによりアーガントがほんの少しだけ上回った。
お互いに持ちうる複数の力を重ね合わせた激しい攻防であったのだが、あとは細やかにすぎる金属音の残響が残るのみ。
春日恭二は目を見開き、いま己が殴った男の盾を見やると腰を低く落としたまま、鋭い爪で器用に下がってしまった眼鏡を上げた。
その力、バロールか。
貴様のようなカスのようなガードと違うんだよ。
戦一方のエリート様と私は違うんでね、現場で生き残り続けてきた。たった一人で、この力を磨きぬいてきた。
ぬくぬくと他人任せにして生き残ってきた貴様と私とでは力のあり方も変わるというもの。
貴様のようなバカにはこの気持ちはわかるまいよ。
おやおや、エリート様はどうやら繊細なようで。
憎しみの炎を振りまくアーガントに対し、一旦落ち着きを取り戻したのか春日はどこか飄々と言葉を返す。
完璧に攻撃を防がれてしまったことで、今までどこか浮ついていた彼の目つきは怜悧な光を帯びていく。
――アーガントのメインプロセスへ移行。
これだからバカは嫌いなんだ、本当に、嫌いだ!
メジャーアクションでエフェクトをなにも使用せず白兵攻撃!
※他PCを攻撃から庇って盾となることに特化したタイプなのでエフェクトをそもそも持っていない
アーガント・フローレス:11dx+1
DoubleCross : (11R10+1[10]) → 10[1,1,1,4,4,5,6,6,7,8,10]+7[7]+1 → 18
そして対する春日恭二はドッジを宣言して充分に避けられる可能性はあったのだが、自分のガードをバカにされたためあえてガードを宣言。
トライブリードの真価を発揮する時だ。
春日恭二:【春日ガード】オート/イージスの盾Lv3+スプリングシールドLv3/ガード値+3d10+10
DoubleCross : (3D10+11) → 23[10,8,5]+11 → 34
アーガントは現在siriのバフ、エフェクトによる支援を受けているため攻撃力は+28されている。
予想外の高いガード値が出たもののまだ、ダメージロール次第では十分なダメージを与えられるはず……が!
アーガント・フローレス:2d10+28
DoubleCross : (2D10+28) → 8[7,1]+28 → 36
春日恭二は装甲値を5点所持しているためアーガントが激情に駆られて放った盾を叩きつける攻撃は、エグザイルの細胞操作で硬質化した爪により、奇しくも完全に弾かれてしまいダメージを与えることはできなかった。
聖夜に私の一張羅を汚すわけにはいかないのでな。
浮かれやがって!
そうだ、今思い出した。その顔には見覚えがあるぞ”ディアボリックプロテクト”
覚えてもらってて光栄だよ。こっちはお前の偽物って言われたりよ、本物と区別のつかないバカに今日も攻撃されたりさぁ~。
面倒ごとがいっぱいあったんだよ、お前という存在のせいでなぁ!
いいことを教えてやろう、オーヴァードの力には人それぞれ己のパーソナリティに適したものがある。
適材適所というやつだ、己の持ち味を活かすといい。さもなければ……。
このディアボロスにはいつまでたっても届かんぞ。
もう届いてんだよォ! お前の上へ俺はもう行ってんだよ!!
ならばそれを証明して見せろ。
だったらとっととかかってこい、見せてやるよ!
人間は己を己で決定できる、真贋に気を取られるような貴様が私に勝てる道理はない!!
夢見心地でクリスマスだなんだと浮かれやがってる貴様に負ける道理はない!!
麗華さん、これは撮影したほうがよろしいでしょうか?
撮影したら売れそうだよな~貴重な資料だよね~~。
それに今なら二人まとめて撃ち抜けますわ!
麗華さん、あなたは未だにお二人の見分けがついていらっしゃらないのですね。
では一つ、アドバイスを致しましょう。
siriのメインプロセス、マイナーアクションでボルトアクションライフルを装備。
メジャーアクション――
Ms.麗華。白いほうに全力でぶち込むといいでしょう。
siri:【そこへ全力でぶち込むと良いでしょう】メジャー/自動/単体/視界/アドヴァイスLv7
効果:対象[麗華] 次のメジャーアクションの判定ダイス+7個、C値-1(下限値5)
迷いが晴れた顔をした麗華はイニシアチブプロセスで[リニアキャノン]を装備し、メインプロセスへ移行していく。
マイナーアクションの行動はなし、メジャーアクションでアタックプログラムLv7+アンプリフィケイションLv3+ハイマニューバーLv3
効果:達成値+29 攻撃力+15
ここにオートアクションでsiriの支援が飛ぶ!
siri:支援射撃Lv7 オート/自動/単体/武器/2/判定直前に宣言、対象の判定ダイス+7個
微力ながら援護させていただきます。
構えられたボルトアクションライフルの銃口が火を噴くと、硬質化した春日恭二の爪が火花を散らして身体を大きくのけぞらせる。胴体を無防備にさらしたディアボロスを逃すことなく、麗華はチャージしていた雷を解き放った。
求聞寺 麗華:24dx@9+33
DoubleCross : (24R10+33[9]) → 10[1,1,1,1,2,2,3,3,3,4,4,4,5,6,6,6,7,7,7,7,9,9,10,10]+10[2,4,8,9]+10[10]+7[7]+33 → 70
が、それでも不死身と謳われた歴戦のFHエージェントである春日恭二はガードをしてみせる。
春日恭二:【春日ガード】オート/イージスの盾Lv3+スプリングシールドLv3/ガード値+3d10+10
春日恭二:3d10+11
DoubleCross : (3D10+11) → 14[3,3,8]+11 → 25
この力があれば……いけるッ!
ぶっとびあそばせ!
求聞寺 麗華:8d10+51
DoubleCross : (8D10+51) → 50[2,4,8,8,7,9,5,7]+51 → 101
春日恭二のガード値は25、そして装甲値をこれに加えると30点ぶんダメージを軽減できるが……HPは70!
先ほどのアーガントの一撃は無効にできたものの麗華の攻撃を防ぐことはできず、圧倒的な火力をもって一撃で粉砕されてしまった。
71点ものダメージを負うことで春日恭二は戦闘不能に陥ってしまう。
ば、バカな……この私が、そうか聞いたことがあるぞ。神楽市にはあのバス爆発事件で目覚めた女子高生”ブリッツガルーダ”がサタンクロースを凌駕するまでに成長していると。
短期間にそこまで強くなれるオーヴァードの存在など、信じてはいなかったが……! まさかこんな田舎町にこれほどのオーヴァードが実在していたとは!!
極大の雷が怪鳥のいななきの如きけたたましい音を響かせ、ガードの構えをとった春日恭二を飲み込んでいった。
その力の強大さは彼女を覚醒させたサタンクロースのものをどこか彷彿とさせる。
春日の脳裏に彼のことが浮かんだ瞬間、周囲の空気が雷の熱によって膨張し大爆発が巻き起こると周囲を更地に変えてみせた。
どうだい? うちのイリーガルはすごいだろう?
ふん、もう少しばかり鍛えれば使えるやつになるだろうな。
はっ!? し、しまった! アーガントさん大丈夫ですの!? アーガントさんを殺っちゃいましたわ!!
特に頭を重点的にな。
さすがに武器は使わないものの怒り心頭に達したアーガントは躊躇なく麗華の顔面を殴りつける。
「ぎゃふんですの!!」と元気に叫ぶ彼女にダメージはないが50mほど空中に吹っ飛ばされてしまう。
そして”サンケベツ”と呼ばれた熊と矢野が対峙している姿がその目に映る。
サンケベツは無数の切り傷を負っているが、空腹で飢餓感に支配されたその目は血を流せば流すほどどう猛さを増しているがジャームといえども生物。
手足の腱や筋を的確に切断されて動きは既に鈍く、ノイマンらしい冷徹さで相手を分析して立ち回る矢野からは余裕が見え、その目には油断はない。
「―――ッ!!」
もはや威嚇することしかできないサンケベツは吠え、その巨体で突進を繰り出す。
対する矢野は天に掲げるかのように大剣”ブレイクブレイド”を上段に構え、片足をあげて弓なりに身へ捻りを加えていく。
野球のスイングじみた動きだが、手に握られているのは身の丈を超える鉄の塊だ。
そこから振りかぶることで生まれる遠心力は突きを神速へ至らせ、ビルほどもある巨躯を骨ごと破壊する力を与えた。
遅れて肉が裂かれ骨が砕かれる鈍い音が響く。
だがこの程度で倒れる生命力ではないとここまで対峙してきた矢野が一番理解していた。
だから彼は、すぐさまグリップにはめ込まれたスイッチを押しライトセーバーを起動。
するとヒグマの身に突き立った刃が光を帯び、まるでバターを切るかのようになめらかにその巨躯を切り裂いていく。
“ダブルクロス”
袈裟、逆袈裟、逆袈裟、袈裟、超音速で二度X字に斬撃を浴びせダブルクロスを描いたブレイクブレイドは
己のコードネームの由来となったその大剣を地面へ突き立てると、そのまま柄頭へ足をかけ飛んだ。
自分が激突する予定の地面を空中から眺めていた麗華へ飛び上がり、落下エネルギーごと矢野は彼女の身体を両手で受け止める。
大丈夫か?
え、だ、大丈夫ですの。でもあのクマは?
片付けた、奴はもう再生できない。
たった一人でこんな短時間で倒してしまうなんて、流石ですわね。次のタイムアタックは負けませんことよ。
ディアボロスを倒したお前たちもな、奴に比べれば容易いものだ。
麗華を抱きかかえたまま衝撃をハヌマーンの力で消し、綺麗に着地して見せた矢野は彼女を下ろしていく。
そこへかまくらから回収したケラウノスのエンジンとジェネレーターを抱えて、佐野支部長がやってきた。
部品あったよ~二人ともお手柄だね。
ちゃっかりとスムーズに仕事をこなした彼に対し、アーガントは私怨をはたそうとしていた。
閃光で場を満たしていた雷が消え、倒れ伏した春日恭二の頭をアーガントは踏みつけにする。
適材適所っていったろ、俺は陽動役だ。お前の中途半端なガードと本職の俺のガードじゃモノが違うんだよ。
踏みつけた足へ更に力を込め、憎いFHエージェントを彼は抹殺するべく頭蓋骨を脳ごとつぶした。
あっけなく、まるで雪玉のように春日恭二の頭は四散する。
春日恭二 オートアクション:【いつもの】蘇生復活+瞬間退場Lv2
効果:戦闘不能とHPを1まで回復し、シーンから退場する。
怪訝そうな顔をしたアーガントが身体を蹴り上げると、雪が舞っていくばかりだった。
何度踏みつけても足は雪を踏みしめるばかり……それは春日恭二を模した雪像にすぎない。
彼はここで潜伏している間に暇つぶしで作っていた自分の雪像を咄嗟にその場へ置いておき、当の本人はとっくにこの場から逃走していたのだった。
ぶつける場所を見失った苛立ちから強く拳を握りしめるアーガントの脳裏には、春日恭二の高笑いが聞こえてくるようだった。
まあまあそうカッカしなさんなって、部品はしっかり回収したことだし。防衛隊の基地へいってコイツを組み立てよう。
まあまあそうカッカしなさんなって、部品はしっかり回収したことだし。防衛隊の基地へいってコイツを組み立てよう。
【ミドルフェイズ2:天の光は全て星】
シーンPL:全員登場
神の雷”ケラウノス”のジェネレーターとエンジンを奪還した四人はそのまま防衛隊”神楽駐屯地”へ移動していた。
航空戦力を保有するため滑走路がある広大な敷地内には日夜レネゲイド研究を行う区画があり、その地下では急ピッチでケラウノスの組み立てが進められている。
既に連絡はアッシュ・レドリック達によって行われていた為、彼らへの受け渡しはとてもスムーズに終了した。
改造も既に進行しており、プランナーの目から見ても及第点に性能は達している。
そしてもう一点、UGNによるアドバイスから改造が施されていた。
その内容は機体内部に併設されたコックピットからオーヴァードがシステムに接続し、エフェクトを使用して発射できるというもの。ケラウノスへ乗り込む姿は対空砲の銃座につくものに似ているが、あまりに物々しい機体のシルエットは巨大ロボットにも似ている。
そんな威容を防衛隊士官やUGNとゼノスエージェントといったGMPLのメンバーの集う管制室で、モニターごしに四人は眺めていた。
巨大隕石衝突まであと2時間。
タイムリミットがそこまで迫った頃、はれて神の雷”ケラウノス”は完成した。
これほどの兵器であれば十二分に巨大隕石を消滅させることができるでしょう。
――しかし相手はまがりなりにもオーヴァード、油断は禁物です。
射手となるオーヴァードは―――ブリッツガルーダだ。地球の命運がかかっている、しくじるなよ。
えっ、私ですの?
全世界70億人いるんですから、探せば私以外にも他にいい方がいるんじゃないですか?
そんなこと言ってたらおじさんが引き金握っちゃうよ?
いや、支部長は侵蝕率がかさみすぎている。もしこれを外した時に動けない状態は避けたい。チャンスは一発しかないんだ、日本中からエネルギーをかき集めている。もう一度チャージするには時間が足りない。
それに、これはお前が決着をつけるべきなんだ。この事件の最初の被害者でもある、麗華が。
成し遂げられるだけの力を、お前は既に持っている。
焚きつけるような佐野支部長の言葉と諭すような矢野の言葉。
あのバス爆発事件から共に戦い、麗華を支え続けてきた二人の言葉に彼女は――
うん、わかりましたわ。
少し目を伏せたあと、そう言い放った。
その目にはもはや迷いはない、自らの手で終わらせるのだとそう言わんがばかりの力をもっていた。
支部長はちょっと本気出したらいっつも美味しいとこ持ってくんですから、たまには一発バンッと大きな花火打ち上げてみせますわ!
言って、拳を空へ放つが「バンッ」よりも「へなへな」という擬音がよく似合う。
現在世界各地で混乱が生じています、それの乗じてFHや所属不明のオーヴァードたちが事件を起こしています。それらに対処するべくそれぞれの持ち場で皆、奮戦しております。中にはUGNだけではなく、あなたのようなイリーガルも活躍している。
日常を守るために。そして今この場にはブリッツガルーダ、あなたがいます。
そのトリガーを引くのはあなたの役割です、どうか地球を……いえ、あなたの日常を隕石から守り抜いてください。
覚醒して右も左もわからなかった私を信頼して、一緒に戦ってくれる支部長や逸人が背中を叩いてくれたんですの。ここで信頼に応えないわけにはいかないのですわ。
それにこの時の為にブラックドッグのピュアブリードとして目覚めたのだと、今ではそう思えますの。
拳を握りしめ、そこからはバリバリと音を立てて電流が走る。
小さな雷だが、彼女の意思に呼応してそれは眩い光となりとてつもない電力が秘められているであろうことは想像に難くない。
その意気その意気、お前さんもそう思うだろう?
今の雷、昔の麗華だったらコントロールできずにこの基地を破壊していたことだろう。だが今ではその力を完璧に使いこなしていて、暴走の恐れも見えない。
麗華ならできる。
神楽市を、地球を頼んだぞ。
アンタたちもそれで構わないか?
あの子の実力は確認したはずだ、異論はありませんよね?
あぁ、もちろんだ。俺は構わないよ。
今計算してみましたが、この人員の中で一番隕石破壊任務を遂行する可能性が高いのは――
先ほどの戦闘データを鑑みるにブリッツガルーダ、Ms.麗華です。彼女が最も適正が高い。
Mr.アーガント、あなたの判断は正しいでしょう。
あーよくできたsiri、えらいぞー。
お前しかやれる者はいない、アイツの言葉を借りるのは癪だが……”適材適所”ってやつさ。
ここがお前の適所だ。
うん、わかりましたわ! ディアボリック・プルプル!!
次、間違えたらお前グーパンな。
こんな奴らだけど頼りにはなる。それでもやっぱり、お前さんの支援は必要だよsiri
本番まであの子のことよろしく頼むよ、お前さんのアプリの性能はすごいからな。
お任せあれ、人工衛星とケラウノスをリンクし各種データ計測を行い照準を補正いたします。
アテにしてるよ。
人類の役に立つのが私の喜び、今後もその務めを果たしていきたいものです。
だから、必ず巨大隕石を破壊してください。よろしくお願いいたします、Ms.麗華。
こっちこそ信頼しているのですわよsiri
さっきの戦闘で春日恭二を一撃で倒せたのはあなたのおかげですの。
今まであんなに力を引き出すことはできなかったから、今度もお願いするのだわ!
あの時の光景を再生する度、私のメモリーに謎の挙動がおこります。これを人の脳の働きになぞらえれば、”愉快”という感情に近しいものだと思われます。
これからもあなたがたの活躍で愉快な人々の営みを見せてください。
改めてアッシュ・レドリックにこの任務を請け負うことを伝えた麗華は、研究所よりケラウノスの地下格納庫へ進んでいった。重々しいゲートが開かれると目の前にはコックピットのようなものがあり、それに搭乗していくとケラウノスは起動する。
ケラウノス、セットアップ完了。隔壁を解放いたします。
siriのアナウンスが備え付けられている通信機器より聞こえてくると、床が上昇を始めていった。
どうやらこの部屋はエレベーターとなっているようだ。
天井だと思われていたものが展開して空が覗けたことでそのことを理解できた。
その間にもsiriがプログラムへ指示を与えていくことで、人工衛星から正確な巨大隕石の位置を観測し、既に標的をインストールされたケラウノスの弾道計算システムにアップデートされると、リアルタイムで的確な軌道を割り出すことが可能となっていた。
さらにsiriが麗華が見ている照準の十字線が刻まれた画面へ、空の彼方に存在し紫色のモヤによって目視が困難な隕石をCGで補正して描写していく。並行して物理学、熱力学、流体力学など様々な学問のデータを集約して隕石へ的確な打撃を加えられるウィークポイントを視覚的に表していった。
砲塔の回転などは自動で行ってくれるものの、微調整は麗華自身の手で行わなければならない。
アップリンク、安全装置解除。
【siriの言う通り】セット/自動/シーン選択/視界/12/戦術LV7+常勝の天才LV7/R中判定D+7 攻撃力+28
機体、神の雷”ケラウノス”が地上にあらわれたころには既に可能な限りの支援行動をsiriは終えている。
だがまだ足りない、機械の操作はブラックドッグである彼女の直感と射撃技能の高さから難なく行えていたのだが――
『麗華、君は祝福の子だ、私が成しえた救済が施された後の世界を見届けるのに、君は相応しい。見届けるために君はいる』
彼女の目にはこの成層圏を覆いつくす紫色のモヤが笑ったように見えた。
執念深く、理屈の通らない、傲慢な理想。
自分を怪物へと変貌させた理不尽の根源。
払拭はした、過去と折り合いはつけた、それでも前に進んでいけるのだと、共に歩んでくれる仲間がいることも理解している。それでもなお完全に遺恨を消し去るにはまだ、時間が足りていない。
グリップを握る手に必要以上の力がこもり、サタンクロースの残滓が麗華の心に動揺をもたらしていた。
チャンスは一発限り、わかってはいるのに怒りが彼女を焦らせる。
そして心の奥底に眠る”恐れ”がトリガーにかけた指へ力を加えることを躊躇させていた。
不安、怒り、恐れ、緊張。様々な感情がないまぜとなって、彼女はケラウノスを撃てずにいる。
ジェノサイドモードヘ移行。
エネルギーライン、全段直結。
ランディングギア、アイゼン、ロックーー
チャンバー内、正常加圧中。
ライフリング回転開始……。
【そこへ全力でぶち込むと良いでしょう】メジャー/自動/3体/視界/7/アドヴァイスLv7/判定D+7 C値-1
麗華、撃てます。
名を呼ばれ、エネルギー充填のアナウンスが流れていたことに今になって彼女は気づかされた。
AIが的確なアドバイスを行い人がそれに従って行動を起こすことは果たして自らの意思で決断したことになるのか?
AIはもっとも効率が良く上手くいく確率が高い方法を人間に変わって計算し、提案する。
何もかもその提案通りに従う人間に自由意志があると言えるだろうか?
この問答にどのような正答があるのか知る由もないが、しかし――。
AIアシスタントではなく、求聞寺 麗華は友であるsiriの言葉によって冷静さを取り戻した。
息をのみ、敵を見据え、ケラウノスの一つの部品と化したかのように射手としての機能を彼女は的確に果たしていく。
これまで積み重ねてきた訓練と、命を奪い合う実践経験から磨きぬがかれた射撃技術に研ぎ澄まされてきたエフェクトの力、彼女の全てがケラウノスへ注ぎ込まれていった。
【メジャーアクション】アタックプログラムLv7+アンプリフィケイションLv3+ハイマニューバーLv3
効果:達成値+29 攻撃力+15
麗華を見くびらないでください。
siri:支援射撃Lv7 オート/自動/単体/武器/2/判定ダイス+7
いつの間にか地上へ出ていたsiriが麗華の傍で、ボルトアクションライフルによる支援射撃を行っていた。
もちろん、成層圏にまでその弾丸が届くことはないのだが、それでもsiriは撃たずにはいられなかった。
あの紫色のモヤ、サタンクロースの残滓が彼女を侮蔑しているように感じられたのだろう。
無意味ではあるが、しかし……麗華を勇気づけるには充分な支援であった。
siriのこの行動が麗華には恩を返さねばならない人や、支部長たち以外にも見守ってくれていた人々がいたことを思い出させる。
そして自分を信頼し、このケラウノスのトリガーを預けてくれた霧谷雄吾の想いにも応えねばならない。
戦う場所は違えども、この星を守るためにみんな戦っているんだ。
だから、と彼女は己のレネゲイドに集中しさらに力を研ぎ澄ませていく。
■タイタス昇華の申請
固定ロイス:恩人 ●P(感謝)/N(不信)
固定ロイス:霧谷 雄吾 ●P(感謝)/N(不信)をタイタスへ変更し、昇華。クリティカル値を2減少。
※ロイスはバックトラックで所持しているぶんだけダイスを振って浸蝕率を減少させることができるが、関係性が変化したと判断した時にタイタスへ変わってしまいこのダイスを振れなくなってしまう。
しかし、タイタスは昇華(消費)することで様々な効果を受けられ、この時は判定のクリティカル値を1減少させるを二回使用した。
ブラックドッグ、レネゲイド最大出力、接続しますの。
砲身へ全エネルギーが300%を超えて充填され、砲口に極大の光が収縮していく。
集中し、引き金に指をかけなおすと自前のロックオンサイトを併用してほんの僅かな誤差をも修正。
目標をセンターに入れて急所は――ここ! スイッチ!!
求聞寺 麗華:56dx@2+48
DoubleCross : (56R10+48[2]) → 10[1,1,1,1,1,1,2,2,2,2,3,3,3,3,4,4,4,4,4,4,4,4,5,5,5,5,6,6,6,6,6,7,7,7,7,7,7,8,8,8,8,8,8,9,9,9,9,10,10,10,10,10,10,10,10,10]+10[1,1,1,1,1,1,2,2,2,3,3,3,3,3,3,4,4,4,4,5,5,5,5,5,6,6,6,6,6,6,6,6,7,7,8,8,8,8,8,8,8,8,9,9,9,9,10,10,10,10]+10[1,1,2,3,3,3,3,3,3,4,4,4,4,4,5,5,5,5,5,5,5,5,6,6,6,6,6,6,6,6,6,7,7,8,9,9,9,9,9,9,9,10,10,10]+10[1,1,1,1,2,2,2,3,3,3,3,3,3,4,4,4,4,4,4,4,4,5,5,5,6,6,6,6,7,7,7,7,7,8,8,8,8,9,9,9,10,10]+10[1,1,1,2,2,2,2,2,2,3,3,3,3,3,3,4,5,5,5,6,6,6,7,7,7,7,7,8,8,8,9,9,9,10,10,10,10,10]+10[1,1,2,2,2,2,2,3,3,3,3,4,4,5,5,6,6,6,6,6,6,6,7,7,8,8,9,9,9,9,10,10,10,10,10]+10[1,1,1,2,2,2,2,2,2,2,3,3,4,4,4,5,5,5,6,6,6,7,7,7,8,8,8,8,9,9,10,10,10]+10[1,1,1,2,2,3,3,3,3,3,4,4,4,5,5,7,7,7,8,8,8,8,9,9,9,9,9,9,10,10]+10[1,1,2,3,3,3,3,4,4,4,4,4,5,5,5,5,5,5,7,7,7,7,8,8,10,10,10]+10[2,2,2,5,5,5,5,6,6,6,7,7,7,7,8,8,8,8,8,8,8,8,8,9,10]+10[1,1,1,1,2,2,3,3,3,3,4,4,5,5,5,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10]+10[1,1,1,1,2,3,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,9,9,10,10]+10[1,1,2,4,4,5,5,7,7,8,8,8,8,9,10,10,10]+10[1,1,2,2,3,4,4,5,5,6,6,6,7,10,10]+10[1,2,3,3,3,5,5,7,7,7,9,9,10]+10[1,2,2,3,5,5,5,8,9,9,10,10]+10[1,2,2,3,4,4,4,7,7,8,8]+10[3,5,6,7,8,8,8,9,10,10]+10[2,3,4,5,6,6,7,8,8,9]+10[1,1,5,5,5,6,7,8,10,10]+10[2,2,3,6,7,8,9,9]+10[1,1,2,5,6,7,8,9]+10[2,3,6,6,7,8]+10[1,2,6,8,10,10]+10[1,3,5,6,8]+10[6,7,10,10]+10[3,4,5,9]+10[1,2,7,9]+10[1,1,5]+10[2]+10[6]+10[5]+10[4]+10[7]+10[2]+10[4]+10[5]+10[10]+10[9]+10[2]+10[9]+10[8]+10[9]+10[7]+10[6]+10[7]+10[9]+10[10]+10[8]+10[4]+10[5]+10[8]+1[1]+48 → 569
達成値:569
限界を超えてチャージされた雷は砲口を溶かすほどの熱に達しており、今にもオーバーロードで爆発しそうな砲身からついにエネルギーを解き放った。
人知を超えた磁力によって亜光速に達した全長6m、直径30cm、重量100kgもの超硬合金製の砲弾が発射されると、反動で基地全体が大地震でも起きたかのように揺れていく。
破壊力学を元に貫通力にすぐれた形状に生成された砲弾は極大の光線に包まれており、まるで光の柱が空へと延びていくようにも見えるのだが
この防衛隊神楽駐屯地の一般隊員たちにはいきなり基地全体が閃光に飲まれたようにしか見えなかっただろう。
だが、麗華や管制室にいるGMPLのメンバーたちはたしかに目にする。
麗華のエフェクトによって強化されたレールガンのまさに神の雷の名に相応しい一撃が、あのサタンクロースが生み出した紫色のモヤを撃ち抜く光景を。核ミサイルは稲妻によって迎撃されてしまったがケラウノスの砲弾はそれをものともせず、一切エネルギー減衰を起こさずに成層圏を撃ち破っていった。
瞬く間に巨大隕石へとそれは衝突し――
求聞寺 麗華:57d10+300+100+15+32
DoubleCross : (57D10+300+100+15+32) → 328[7,2,7,3,10,4,3,10,7,6,6,10,5,10,3,3,6,5,7,5,6,7,6,7,4,2,1,8,4,9,1,9,8,6,1,6,9,10,3,8,7,1,5,2,5,7,9,6,7,10,10,1,9,5,2,5,3]+300+100+15+32 → 775
ダメージ:775!!
貫く。
モニターしていた管制室の防衛隊士官とUGNエージェントたちは隕石が爆発し、閃光に満ちていく画面を見て歓喜にわいた。
「目標:爆発! 破壊は成功です!! すごい、レネゲイド反応まで弱まっています!!全UGN支部へ通達、GMPL、我、隕石破壊成功、我、隕石破壊成功!!」
775点ものダメージを負った巨大隕石は大爆発を起こし、275点ものオーバーキルで隕石は破壊(戦闘不能に)される。
UGNのエージェントたちと防衛隊の隊員たちが思わず抱き合い「メリークリスマス!」とクラッカーをならして、聖夜を祝福するものいれば、浮足立って都築京香にサンタ帽子を被せていく。
似合っているじゃあないですかプランナー。
鋭い目をした彼女の視線の先はモニターへとあてられており、軽口を叩いたアーガントも思わずゾクりとした言いようのない不安を覚えた。
怒っている、そんなことを危惧したのではない。アーガントもまた彼女と同じく、顔を強張らせてモニターに向き直った。
いいえ、まだです。
冷たい声で都築京香は言い放つ。
――巨大隕石:オートアクションで【不死不滅Lv3】を宣言、戦闘不能を回復しHPを30まで回復する。
閃光と爆炎が晴れていくと、破砕された隕石の欠片が宇宙を漂い、星屑となって散っていく。
だが、規模は大きく弱まったものの未だ健在である巨大隕石をその場にいる全員が目にすることになった。
作戦は失敗です。
静かにプランナーから放たれた言葉が彼らにはやけに大きく響いた。
【ミドルフェイズ3:モモ29号】
シーンPL:全員登場
管制室でプランナーの声が響き、机をドンと叩きつける音がした。
バカな! 再生しただと!?
再装填急げ! もう一度隕石へ攻撃を加えるんだ!!
ケラウノスは沈黙し、先ほどの攻撃を行ったことでオーバーヒートを起こしてしまい使用不可能な状態だ。
電力を集めるにも時間がかかるため隕石を阻止するには間に合わない。
――巨大隕石衝突まで、あと一時間。
緊迫した状況と不釣り合いな高笑いがその場の沈黙をぶち壊しにした。
管制室にいる者たちはアーガントのほうへと視線を集めていく。
失敗しちゃったね~いや~これはどうしようかね。
「貴様」と激昂したアッシュはアーガントの胸倉を今にも殴りかからんばかりの勢いで掴み、睨みつけていく。
おいおい慌てるなよ、上がそんなんで下っ端どもはどうしたらいいんだ?
その通りです、ミリオンサンズ。
くっ!
だいたい上手くいかなかったのは全員の見込みが甘かったからだ、誰か一人を責めてもどうにかなるってもんでもないでしょ。相手はジャームなんだからこれは想定しておくべきだったね、おじさんもそこまで考えが至らなかったよ。
今は議論している暇はない、新しい作戦を考えるんだ。
今は議論している暇はない、新しい作戦を考えるんだ。もう時間はないんだからこういう時こそクレバーになるんだ。
あそこまで運んでくれるってんなら、こいつでぶった切れるか試してみてもいいんだがね。
佐野支部長はギターケースのような大きさのアタッシュケースーー愛用の大太刀を収めたウェポンケースをコンコンと叩き、悪戯のような笑みを見せる。
対して、アーガントも好奇心を刺激されたのか頬をほころばせていき……。
そりゃ面白い、なにせアレにはサタンクロースが入ってたんだろ?
もしかしたら本体が中にいるのかもしれない、そいつを潰せば全部消えるかもしれないしね。
届きさえすれば斬れないものでもないと思うんだがね。レールガンの簡易調整版で撃ってみるのもいいだろう。
どの提案を採用するにしても時間が足りないのです。
それに宇宙で交戦するなどオーヴァードといえどもまともに戦えるかは未知の領域です。相手は大陸にも匹敵するサイズ、それを斬るとなると移動時間も考慮しつつ、破壊工作にかかる時間も鑑みるに現実的ではありません。
しかし……何か、何か……手はっ!
これほどまでに動揺し追い込められている日本支部長リヴァイアサンを、その部下である佐野支部長も矢野も見たことがなかった。特に佐野はキャリアの長さからこのメンバーの中では最も交流は深いと言えたのだが、苦悶という言葉が似合うほど奥歯を噛み締めた彼など見たことがない。
ディメンジョンゲートっていうのはあの隕石のとこまで開くことはできないのかい?
仮に有効だったにせよ、君はそこでどうやって生き延びるって言うんだい?
宇宙服ってのを着ればいけるんじゃない?
帰り道はどうするんだよ?
何か力になりたい、この星を救いたいと願うものの、やはり名案と呼べるべきものは思いつかなかった。
――隕石落下阻止限界点まで残り47分。
どうしたのですか、プランナー?
不思議なまでに沈黙していたプランナーへ、siriは問いかける。
傍で仕え、AIアシスタントとして支え続けてきたsiriには彼女が一言も発しないというのは何か理由があると考えたのだ。
まず、ディメンジョンゲートでは巨大隕石へと移動することは不可能です。戦闘などが行われているような緊張状態にある場所へゲートを開くことはできない。
あれほどのレネゲイドに蝕まれた物体へ、しかも臨戦状態に入っているであろうアレへ向けて転移することは不可能。
そしてβ……あの隕石もまた我々と形は違えどもオーヴァードなのです。敵オーヴァードの体内に移動したり、密着した状態でゲートを開くことはできませんよね?
そんなことが出来るとすれば、私がFH日本支部長であった時代にUGNは壊滅しているはずです。
もちろん、UGNを壊滅するつもりなどはなかったのだろうが、その声と瞳からは真意をくみ取ることは出来ない。
だがたったの一言でこの場にいた全員へディメンジョンゲートを試してみようという、愚かな思考を止めさせるには充分だった。
一つだけ、方法があります。
暗礁に乗り上げたGMPLへ救いの手が伸ばされる。
プランナーの言葉に皆が一斉に振り返り、固唾を飲むようにして続く言葉を彼らは待つ。
この日本では個人による宇宙ロケット”モモ28”号の打ち上げを成功させた人物がいます。
彼は再び宇宙ロケット打ち上げ準備を進めており、ニュースによれば既に準備は完了していると報じられておりました。
北海道大樹町で個人による宇宙ロケットの有人飛行を成し遂げようとしている、彼の名は――
かつてIT企業”アライブドア”で社長を務めテレビ局を買収しようとして不正取引防止法違反で逮捕された起業家―――ゴリエモン!郷里貴文(ごうり たかふみ)!!
残された時間もわずか、であれば手段はただ一つです。爆薬を搭載した宇宙ロケットへ乗り込み、船体をぶつけて起爆する”神風作戦”これが最もリスクを抑えられた方法でしょう。
ゴリエモン! その手があったか、さっそくエージェントたちに郷里氏を拘束させロケットを確保しよう。
NPCカード
【スペースシャトル”momo29号”】
効果:このキャラクターへ一名のキャラクターが搭乗できる。
搭乗したキャラクターは以下の二つの効果を使用できる。効果1:オートアクションで宣言して使用することで、ウルトラボンバーLv6とバリアクラッカーの効果を使用した攻撃を行える。
リアクション不可、ガード不可&装甲無視、メインプロセス終了時に搭乗するキャラクターのHPが0になり戦闘不能となる。効果2:戦闘不能時にオートアクションで宣言することで使用可能。自爆装置Lv6の効果を適用する。
8d10のHPダメージを対象:範囲、射程:至近へ与える。
はてさて、それは構わないんだけど一番の問題は誰が乗るか? だよね~プランナー。
どうせこっちにお鉢が回ってくるんだろう?
おいおい、安心したまえよ責任者はそこに座っているだろう? なぁ、ミリオンサンズ。
こういう場合、総責任者ってのは前には出てこないもんだろうけどね。
アッシュ・レドリックが何某かを激昂して発しようとしたその時、管制室で一番大きなモニターの表示が切り替わる。
いずこかへ中継されているようで、そこには中枢評議会の面々が一堂に会しており何らかの決定が下されたことは見て取れる。
苦虫を嚙み潰したような顔をする者、感情を全く伺わせぬ無表情を保つもの、そして――
事件はもう解決したと言わんがばかりに頬を緩ませた男性が矢面に立ちGMPLのメンバー達へ告げていく。
「ミリオンサンズ、此度の巨大隕石の飛来はサタンクロースが呼び寄せたもの。その認識に誤りはないな?」
「で、あるのならば……サタンクロースに最後の一撃を加え仕留めそこなった、神楽市支部のオーヴァードに神風作戦の実行を担ってもらうのが、道理というものだろう」
「ブリッツガルーダ、君だね?」
いやいやこの子はうちの正式なエージェントじゃない。協力してくれているイリーガルです。
だとしたら彼女を任命した俺の責任だ。こんな若い子を帰ってこられるかもわからない宇宙船に乗せて、放り出すなんておじさんにはとてもできないよ。
わかった、これはフリってやつだね。じゃあ乗ってやるよ。こういう時って一番上の者が前線に立つものなんじゃないの?
現場を預かってるのは俺だ。能力的にも俺が生存の可能性が高い、俺が行くのが――
「ディアボリックプロテクト、黙れ」
「これは引責の問題なのだよ。彼女が正規のエージェントではないことは百も承知だ。しかし彼女はこの世界の真実の一翼を担い、我々の組織の在り方も理解しこの作戦を引き受けた」
「――そして失敗した、その責は彼女自身が負い贖う必要がある」
おいおいアクシズのお偉方はこの地球のピンチに若い女の子一人に責任を押し付けようとして時間を無駄にするのかい?
「無駄にしてるのは君たちだ」
黙るのはアンタだよ。誰もやらないと言っていないだろう。こういう時に責任を負わないで何が支部長だ、何がユニバーサルガーディアンだ。
「よろしい、君のコードネームを聞いておこうか」
ファイアーワークス、その名の通り見事な打ち上げ花火になってやるよ。
「覚えておくよ、40分後にこの星が残っていれば。私は君の発言について咎は問わない」
「だが君たちの誰かがやらねば70億の命と共に君たち全員の命も失われることになる、逃げ場はないぞ?」
だから行くって言ってんだろ。尻拭いをこちらに押し付けるなら拭ってやるよ、とっととしないと移動の時間もなくなるぞ!
見ました! 見ました!? これですわうちの支部長は!!
さすがだよ、さすがジャパニーズだ。ジャパニーズらしくてとても面白かった。
主君に立てつくのはサムライではないと思いますが。
ともかくありったけの爆薬を積んでディメンジョンゲートでロケット発射基地まで移動しよう、時間がない。
すまないけど子供二人を連れていくのは気が引けるんだ。麗華ちゃんはまだしも、アンタもくるのか?
よくわかっているじゃないか、俺に関しては最後までついていく。本部エージェントだからな。
だが……一人だけ無関係な奴がいるよな。君はどうするんだいsiri?
すごいです、すごいです人間というものは。
このような絶望的状況下に置かれながらも、そして己の生命が脅かされると知りながらも他者の生存の為に命を張ることが出来る。
誰に命令されたからではなく、己の意思で。ファイアーワークス、仮に私が人間であったとすれば敬意という感情をあなたへ抱いたことでしょう。
だからそんなあなたがたの活躍を最後まで見届けたいです。
よろしいでしょうか?
えぇ、構いません。我々ゼノス――いえ、GMPLの目的はこの巨大隕石の脅威を退け地球滅亡を回避すること、その為にあなたの力が必要ならば存分にふるってきてください。
そんな大層なものじゃあないさ。けどまあ、こっちに手を貸してくれるというのなら助かる。
お前さんだって誰かを守るために命をかけられる”オーヴァード”だろ?
なに言ってんのさ。敬意を抱くと思えるだけの、ついていきたいと思えるだけの心があるんだ。それは等しく”人間”だろ?
ではそれを確かめにいきましょうか。ディアボリックプロテクト、ゲートをお願いできますか?
はいよ、交通費は……まあ後で請求するということで。地球が残っていれば。
アーガントのバロールの能力によってディメンジョンゲートが開き、ロケット発射場に到達した麗華、佐野支部長、アーガント、siri、矢野の5名はあっという間にロケット発射場を制圧し、パイロットに選ばれた者はコックピットへとつながるスロープへ足を踏み入れていった。
――幕間――
GM「それはさておきパイロットを一人決めねばならないので、ハッキリと誰が乗るのか確定させておきたいのですが……」
えっ、普通に乗るよ?
普通に乗るよな、普通に。
えっ? えっ? あのー……普通に乗りますよ~。
「シャトルは……詳細に言うとエフェクトではないのですけれども、ウルトラボンバーLv6とバリアクラッカーLV1相当の攻撃を行うので、隕石にリアクションを取らせずにガード値も装甲値も無視して自動成功で自爆できるので誰でも大丈夫です」
「乗ってくれれば自動で成功します」
普通に乗るよ。
普通に乗るんですけどね。
「……1d100で高いほうがパイロットね」
あっ、負けた!! スピードフォースで割り込めない? イニシアチブだからできるでしょ?
この部隊の責任者は俺だって言ってるだろ!
こんな子供に任せられませんわ! 私がやっぱり乗るのですわ!!
いいや君も子供でしょやっぱりおじさんがいくよ!!
MOMO29号のパイロットは結局、アーガントで最終的に確定されたのだが危険な役割を他人に負わせるわけにはいかず
皆、時間ギリギリまで口論を交わし続けていたのだが、その姿はとても今日出会ったばかりの者たちには見えないほど賑やかであり、そんな四人の姿を遠く離れた場所から矢野は眺めていたのだった。
……。
――幕間終わり――
【マスターシーン:星を断つ剣】
シーンPL:アーガント・フローレス
※マスターシーンとは通常PCは登場できず、影響を与えられないゲームマスター(GM)のシーン(回想や悪い奴が暗躍してる時などによく使われる)だが、今回のシーンはロケットのパイロットになったPCは登場できて、さらに判定やエフェクトの行使などはできないということで浸蝕チェックも行っていない。
ロケット発射場にアーガントは立っていた。
鉄で出来たスロープがコックピットに通じており、スペースシャトルへ乗り込むべく君は歩き続けている。
だが、道半ばで彼を迎えるものがあった。
ブレイクブレイドーー矢野逸人が彼の前に立ちはだかる。
何か御用かい?
なに、手すきの時にさ。調べさせてもらったんだけど……。
アンタにも一人や二人、帰りを待つ人がいるだろう?
例えば――妹、とか。
ふふ……はっはっは、面白いことを言うなホントに。よく調べ上げたね。
――それで?
アンタはその妹の為に帰ってやらなきゃならない、待つ人がいる。アンタが帰れないことで壊れてしまう日常がある。
俺たちはユニバーサルガーディアンだ、人々の平穏な日々を守るために戦っている。UGNが日常を壊すなどあってはならない、だが!
麗華は、アイツはどれだけ強くとも元は一般人なんだ。俺たちとは違う。だからアンタが守ってやってくれ。
麗華を頼んだぞ。
矢野逸人:ワールウィンドLv2 イニシアチブ/シーン内の任意の場所へ移動、シーンから退場できる、シナリオLv回まで使用可能。
追い払うかのようにいつの間にやら取り出したる大剣、機械剣”ブレイクブレイド”をアーガントへ向けて振るい――
返す刀で鉄のスロープを両断してみせると、瞬きする間もなくスペースシャトルへ乗り込み、エンジンへと火を入れる。
もはやディメンジョンゲートといえども無理やり割り込んだところで、死体が二つになるだけだ。
飛び退り、そう判断したアーガントはロケット噴射の爆炎に飲まれぬようこの場から退避するべく使った。
やれやれ、死にたがりが多くて困るな。いやほんとに。はてさて一体どうしたものか。
安全な外へと逃れた彼は隕石へと向かって飛び立ち、すでに夜空の星のように小さくなったロケット”momo29号”を見送る他なかった。
――オートアクションで<瞬間退場>と<瞬間退場2>を使用して矢野逸人はシャトルと共に宇宙へと飛び立った。場面はコックピットへと移り変わる。
管制塔聞こえるか? こちらモモ29号、目標を確認した。あと3分ほどで予定通り衝突する。時限装置を現時点で起動、これより機内から脱出する。
ノイマンの演算能力を行使して矢野は複雑に思われるロケットの操縦を難なくこなし、脱出装置に手をかけた。
電子機器の制御が不能になった場合に備えて、脱出装置はアナログな仕組みになっていた。
どのような状況でもパイロットが安全に逃れられるよう、コックピットが脱出艇へとスライドしシャトルから分離される。
あとは、赤いレバーを引くだけで瞬時にその機構は起動するのだが……。
なにっ!?
反応はない。誤作動は起きない簡素な仕組みだ。
だが、何度引いても沈黙するかのように脱出装置は反応を示さない。
脱出装置が死んでいる? バカな、さっきまで何も異常はなかったはずだぞ。
動揺する矢野のもとへ声が響く、もはや聞きなれた宿敵”サタンクロース”のものだ。
これで我らが悲願は成就される。矢野逸人、君が我々の元にやってきたことで!
主がいらしたぞ、肉体という枷に囚われた人類を解放する破壊の救世主”メシア・ムシュマッド”が目覚められるぞ!!
ロケットはどんどんとその機体を紫色のモヤに囚われていき、まるで取り込まれていくかのように隕石へ引っ張られて行ってしまう。
どうやら磁力で機体が固定され、コントロールを奪われているようだ。
それならばとハヌマーンの音を操る能力を用いて、衝撃を加えて無理やりにでも脱出艇へ滑り込むこともできたのだが……。
矢野はそこであえて機体後部にありったけの力をもって衝撃を与える。
見えない強大な槌で叩かれたかのように機体は前方へ弾き飛ばされ、βレネゲイドの支配下から逃れた一瞬の隙を伺いエンジンをフル稼働させる。
脱出するのではなく、矢野はあえて機体を更に加速させた。
全てを悟った彼は覚悟を決めたのだ。その意志に呼応するかの如くブースターはノズルを焼き切るほどの炎を噴き、最大速度へ達していく。
この力は破壊するためのものじゃない、友を……友の……うおおぉぉぉぉぉぉ!!
呟いた矢野の言葉は自爆装置が引き起こした爆発によってかき消されてしまう。
NPCカード
【スペースシャトル”momo29号”】
このキャラクターへ一名のキャラクターが搭乗できる。
搭乗したキャラクターは以下の二つの効果を使用できる。効果1:オートアクションで宣言して使用することで、ウルトラボンバーLv6とバリアクラッカーの効果を使用した攻撃を行える。
リアクション不可、ガード不可&装甲無視、メインプロセス終了時に搭乗するキャラクターのHPが0になり戦闘不能となる。効果2:戦闘不能時にオートアクションで宣言することで使用可能。自爆装置Lv6の効果を適用する。
8d10のHPダメージを対象:範囲、射程:至近へ与える。
隕石は戦闘不能になり、自爆装置によってトドメを刺される。
巨大隕石は死亡状態へ陥り、これでEロイス【破壊神顕現】と【不滅の妄執】は解除された。
破壊され、極小規模のスペースデブリと化した隕石は大気圏に突入し、燃え尽きていく。
が、たった一つだけ燃え残った破片が日本、北海道の大樹町――アーガントたちのもとへ衝突し大爆発を巻き起こした。
【クライマックスフェイズ:???】
シーンPL:全員登場
時刻は23:40分―――地球滅亡は回避された。
しかし、スペースデブリと化した小規模の隕石は君たちめがけて落下し、ロケット打ち上げ場は焼け野原と化していた。
これがサタンクロースが残していった執念がなせる技か。
アーガントたちは衝撃で意識を失ってしまっていたようだが、辛うじて傷はない。
ふー、まったく。次から次へと何が起きているのやら。
いったい状況はどうなっているんだい?
起き上がり、ぼやけた眼であたりをキョロキョロと見渡す佐野支部長。
すると、何者かの視線を感じる。ふと直感に従って振り返った先は空だった。
先刻まで地球を覆っていたものと同じ紫色のモヤを、禍々しいオーラの如く身にまとった人物が四人を見下ろしている。
サタン……クロース?
思わず口をついて出た名前だったが”よく知る人物”には、似ても似つかない姿かたちをしていることは明らかなことだった。
左胸に埋め込まれた鉱石がまばゆく輝き、目は赤く、獅子のたてがみのように髪は逆立ち心底愉快そうに口の端は歪められている。
――その手には見覚えのある大剣、機械剣”ブレイクブレイド”。
変わり果てた姿になっても面影は消えることはない、この場にいる全員が理解できた。
βレネゲイドをまとい、矢野逸人はこれまで見せたこともないような笑みを見せている。
あのバカ……ッ!
その身には感じたこともないような莫大なレネゲイドの圧力が放たれており、肌を刺すように刺激し君たち自身のレネゲイドが”危険”であると伝えてくるようだった。
彼は口を開く。
我はメシアなり!ハッハッハ!!
クライマックスフェイズフェイズ:破壊の救世主
矢野逸人ーーいや“メシア・ムシュマッド”からはなたれる強烈な破壊衝動が君たちを蝕む。
「スベテヲコワセ」そう囁いてくるようだった。
衝動判定、難易度:9(意志による判定)
求聞寺 麗華:2dx
DoubleCross : (2R10[10]) → 7[2,7] → 7 → 失敗
アーガント・フローレス:2dx
DoubleCross : (2R10[10]) → 9[3,9] → 9 → 成功
佐野 直哉:4dx>=9
DoubleCross : (4R10[10]>=9) → 10[2,8,9,10]+8[8] → 18 → 成功
siri:9dx+1>=9
DoubleCross : (9R10+1[10]>=9) → 9[2,2,3,4,5,6,6,9,9]+1 → 10 → 成功
佐野 直哉:2d10+93
DoubleCross : (2D10+93) → 8[6,2]+93 → 101
求聞寺 麗華:2d10
DoubleCross : (2D10) → 17[8,9] → 17
アーガント・フローレス:2d10
DoubleCross : (2D10) → 11[1,10] → 11
siri:2d10
DoubleCross : (2D10) → 11[8,3] → 11
衝動判定の処理を終えたあと、クライマックス戦闘へ移行する前に矢野逸人に何が起きたのか
暴走していないPCのみ情報収集判定によって調べることができるのだが……。
PC1、求聞寺麗華のみ衝動判定に失敗してしまった!
【矢野逸人になにが起きたのか?】
知識:レネゲイド 情報:UGN,ゼノス 難易度:9
だが佐野支部長はためらわずにこの判定へエフェクトを組み合わせていき――
佐野 直哉:<ベーシックリサーチ2> 情報:〜と組み合わせて判定D+3、コスト1
佐野 直哉:<コンセントレイト:ハヌマーン3> CL値-3(下限7)、コスト2
佐野 直哉:8dx@7+2>=9
DoubleCross : (8R10+2[7]>=9) → 10[3,3,4,4,7,7,8,9]+6[1,4,4,6]+2 → 18 → 成功
余裕の成功。
【矢野逸人になにが起きたのか?】
知識:レネゲイド 情報:UGN,ゼノス 難易度:9
矢野逸人はβレネゲイドに感染してしまい、ジャーム化した。
彼はβレネゲイドによって生み出された破壊の救世主”メシア・ムシュマッド”
この救世主の誕生こそがサタンクロースの狙いだったのだ。
しかし、不幸中の幸いか左胸の賢者の石までは侵蝕されておらず
君たちが知る矢野逸人という人格はそちらに宿っている(Eロイス:ファイトクラブ)
矢野逸人にロイスを持つPCがメジャーアクションを使用して【交渉】もしくは【意志】による判定で
【難易度:20】に成功することで彼は絆を自覚し人格を取り戻すことができるだろう。
だが、時間は限られており【1ラウンド以内】にこの判定を終わらせていなければ
彼は完全にジャーム化し死亡させなければならなくなる。
Eロイス:ファイトクラブの効果によって主人格はβレネゲイドが表に出ていて肉体を支配しているが
本来の矢野逸人としての人格は賢者の石の中で眠りについている、という処理を行っている。
※戦闘勝利条件はメシアムシュマッドを戦闘不能にすることであり、この判定に成功しても勝利するには戦闘不能にしなければならない点に注意。
――幕間――
場合によっては触媒(siriのDロイス)をくださいってことになるかもしれませんが、矢野くんの説得にいきたいと思います。
※触媒(カタリスト)他のキャラクターにイニシアチブプロセスでメインプロセスを行わせる効果を持ったDロイス
ちょっと確認したいんですけれども……隕石にダメージなんぼ与えましたっけ?
??
えーと……700……775?
あーコマのところにメモってました、775点であってますね!
775点ですけど……それが?
じゃあメシアムシュマッドの浸蝕率は224%ですね。
……???
はっはっは! な、なるほどォ!!
nさんはどんな計算したかわかったみたいですね、巨大隕石の浸蝕率は999%でした。そこからあなたがたが与えたダメージの分だけマイナスしたんですよ。
あの判定で隕石にダメージを与えたら与えた分だけβレネゲイドの規模を削ぐことができて、このクライマックス戦闘での浸蝕率を下げられるわけです。
Oh……。
仮にもし破壊できてなかったら悲惨なことになってましたね。
悲惨すぎる、600%からのヴァイタルアップとか嫌だ~!
※ヴァイタルアップ、現在の浸蝕率から-100した数字のぶんだけHPが上昇するエフェクト
笑うしかない。
300超えてないだけ楽だわ! この恩恵はデカいデカい!!
――幕間終わり――
破壊だ。
汚れたこの星は浄化されねばならない。
我はメシアなり!
裂帛の気合いと共にβレネゲイドが増大し、身体の周囲を紫色のモヤがまるで一個の生物のようにうねり、猛る。
メシアムシュマッドは見覚えのある大剣を構えると、四人へ殺意の籠る視線を向けた。
――戦闘開始――
行動値一覧
佐野直哉:13
矢野逸人:12
siri:8
求聞寺 麗華:6
アーガント:4
βレネゲイドの目的はインベード(侵略)
もしここで逃げ出せばブレイクブレイドは完全にβレネゲイドに飲まれ、ジャームへと変貌し地球侵略のためメシアムシュマッドとして破壊活動に開始していくことだろう。
巨大隕石を食い止めることが目的だったのに、異星人(βレネゲイド)との戦いになるとは。
サタンクロース討伐からまだ六時間も経っていないのに、バス爆発事件から半年ほどしか経っていないというのに、麗華にはそれらが随分と遠い昔のことに感じられていた。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
同じ地球という大地に立っているにも関わらず、非日常という世界で迷わぬように手を引いてくれた彼となぜこのようなことになってしまったのだろうか。
『大丈夫。最後は結局、いつもなんとかなってきたんだ』
そう応えてくれた彼は今や、共に戦い自分たちを守ってくれた剣を向けている。
大丈夫、最後は結局、いつも何とかなってきたのですわ!
友と地球の命運をかけた戦いの火蓋が切って落とされ、第一ラウンドが開始していく。
【セットアッププロセス】
佐野支部長はオートアクションで大太刀(両手剣)を装備し、アーガントは虚無の城壁を宣言しラウンド間ガード値を+12(移動すると効果が失われる)させ、siriは戦術と常勝の天才を使用して味方全体をラウンド間メジャーアクションの判定ダイスを+8し攻撃力を+32するという、ミドルフェイズと変わらない行動を取るものの、浸蝕率が100%を全員超えているため、その効果は上昇している。
※麗華はセットアップで取れる行動が特になかった。
盤石な態勢に思われたものの……。
【我はメシアなり】セット/ヴァイタルアップアップ+異形への変貌/現在侵蝕率-100してHP上昇、上昇した分だけ侵蝕率上昇。侵蝕率ボーナスのダイス2倍、恐れていた事態が現実のものとなる。
メシアムシュマッドはこれでHPが+124され342となり、浸蝕率によるダイスボーナスの効果は14個に増加した。
※HPが上がったぶんだけ浸蝕率も上昇するため348%になる。
獅子のたてがみのごとく髪は揺れ、血に飢えたように獰猛な瞳が赤く染まっていく。
活性化していくβレネゲイドは揺らめく炎のごとく身体を覆い、猛る。
宇宙よりやってきた別の進化系を辿るレネゲイドに染まったかつての戦友の存在は、敵としてあまりに異質。
だが、それでもなお左胸に埋め込まれた賢者の石は青白く輝いているのをその場にいる者たちは目にしていた。
佐野 直哉:<スピードフォース2> イニシアチブに行動、未行動時のみ、シナリオ2回、侵蝕+4
佐野支部長は自らの部下を救うべく誰よりも素早い動きを見せた。
まだ矢野の意思は賢者の石に残されているのならば、声をかけてやることで目覚めるかもしれない。
その一縷の望みにかけて、ハヌマーンの力を極めたものにのみ使用できるエフェクトを行使する。
ハヌマーンが最速のシンドロームたる由縁、人を超えた存在オーヴァードの動体視力ですら対応不可能な速度で支部長は駆け抜けていく。しかしそれならば、超高重力で赤方偏移を生じさせ時を歪めるバロールの能力者はどうであろうか?
加えて矢野逸人の記憶は佐野支部長の能力を知悉しており、彼ならばどのように動くか予測を立てられるのではなかろうか?
……これは、バロールの!?
己以外のものが動きを止め他の生物を置き去りにする超スピードの世界で、佐野支部長はメシアムシュマッドが動きを作るのをみた。
メシアムシュマッド:【時間凍結】 イニシアイチブ/イニシアチブプロセスでメインプロセスを行う、HP20消費、シナリオ1回
※HP342→HP322
気づけば、メシアムシュマッドは剣を振りかぶり、その巨大な刀身をアーガントたちへ叩きつけようとしていた。
あの質量とハヌマーンの能力を組み合わせればそれだけで容赦なき破壊をもたらし、大打撃をこうむることだろう。
それに、相手はβレネゲイド。全てのシンドロームの力を行使できるという控えめにいってもデタラメな存在だ。
その規格外ぶりは既にバロールのエフェクトを使用するということでその脅威性を如何なく発揮しており懐に入り込まれでもすれば、どのようなことをしてくるか想像もできない。
だからこそ佐野支部長はここで絶対に呼びかける必要があった、メシアムシュマッドにではなく矢野逸人の魂へと。
対象の脅威判定を更新
機械の部品でも観察するかのような怜悧な視線を、メシアムシュマッドは時を止めるよりも速く己の間合いへと飛び込んできた佐野へと浴びせる。
懐へと飛び込んできていた彼はこの刹那の間に掴んだ好機を活かし……。
どうやらこれならギリギリ間に合いそうだな、賢者の石にはβレネゲイドは達していない。
マイナーアクションで戦闘移動を行い、メシアムシュマッドのエンゲージへ侵入。
グリーンの固定ロイス:テレーズ・ブルムをタイタスへ変更し昇華、効果は達成値+15
メジャーアクションで【交渉】を試みるのだった。
佐野 直哉:13dx+15>=20
DoubleCross : (13R10+15[10]>=20) → 10[2,2,2,4,5,5,7,7,7,9,10,10,10]+6[1,5,6]+15 → 31 → 成功
そうだろう? まだ、君の意識は残っている。
千載一遇の機会をただ一言、そんな言葉を投げかける為だけに使用した佐野支部長にメシアムシュマッドは無機質な目を向け、逆に隙を作った彼へと刃を向けて斬りかかろうとする。しかし、振りかぶったところで唐突に動きが止まった。
見れば瞳には再び光が灯り「わかっていた」とでも言わんばかりに佐野は彼を見つめ返す。
支部長、どのみち俺たちは戦う宿命だったんだ。賢者の石が教えてくれる、俺の過去を。
だから今までがちょっとしたボタンの掛け違いで成り立っていただけで、間違っていたんだよ。
詳しく話したいところなんだが――もう意識を保つこともできなくなる……構わず使命を果たせ。
メシアムシュマッドは口を開く。その声音は馴染み深く、矢野逸人のものである。
自分の部下の声を聞き間違うはずがないだろうと、確信を得た佐野支部長は彼へと言葉を返す。
おじさんこれでもUGNで支部長の役を預かってるわけだからね、世界を滅ぼすわけにもいかないしサタンクロースも倒さねばならない。
けどなぁ、さっきも言ったけれども上に立つ人間ってのは下の者の尻拭いをするためにいるんだ。
少なくともβレネゲイドなんてとんでもないものに、諦めずにまだがんばって抵抗しているお前さんを見捨てるようじゃ啖呵も切れないってもんだろう。
それにここであっさり見捨てるようじゃ、パイロットを選ぶときに麗華ちゃんを庇ったアレが黒歴史になっちまうだろう?
というわけでまあ、寝ていてもいいからしばらく待っていろ。まあ一応このおじさんもがんばるけどなにより――
俺がミスってもあの三人が何とかするだろうさ、最近の若い子はお前さんも含めて優秀だからね。
支部長、アンタは仕方のないおっさんだな。
あぁ。
短く自嘲するように、しかしどこか満たされたような笑顔で短くそう返す。
じゃあアンタが見込んでくれたこの力で、もう少しだけ抗ってみるか。
そうそう、その意気だ! で、帰ったらクリスマスパーティーの仕切り直しといこうじゃないか、チキンだってもうじき届く手筈になってる。
もはや声は届かず、矢野の気配が消えていきメシアムシュマッドの殺意を帯びた強大なプレッシャーが蘇ってくる。
だが、消え入るその間際、彼がほほ笑んだように佐野支部長には感じられた。
――ここでNPCカード(カードに書かれた効果でNPCが補助してくれるもの)が配布される。
NPCカード
【矢野逸人:ダブルクロス】
タイミング:オート 難易度:自動 対象:自身 射程:至近
効果:攻撃判定の直前に宣言して使用する。
クリティカル値を4減少させる(下限値:2) このカードの効果は1シナリオに1回まで使用できる。
矢野逸人の意志が友の声に応えることで賢者の石が持つ莫大なレネゲイドと感応し
一瞬だけ疑似的なレネゲイドビーイングとなって力を貸してくれる。
矢野逸人の姿は見えない物の、GMPLの四人にはたしかに彼が傍にいる感覚があった。
代わりに、意識を取り戻したマシアムシュマッドは妖しく笑い、彼らを射抜くかの如く鋭い視線を向ける。
オートアクション:ウェポンケース×2によってブレイクブレイド(バトルガーディアン)と妖刀を装備。
マイナーアクション:ライトスピード/メジャーアクションを2回行う、C値+1、シナリオ1回
メシアムシュマッド:【滅閃刃】メジャー/白兵/範囲選択/至近
コンセ:ノイマンLv5+コントロールソート+コンバットシステムLv5+マルチウェポンLV7+ ヴァリアブルウェポンLv2+一閃+電光石火LV3+獅子奮迅Lv5 攻撃力:41 全力移動、装甲無視、複数ある場合一番高いものを無視(シザーリッパー)
佐野支部長がエンゲージに入り込んでいるため、離脱を行えないと戦闘移動をする意味もないのだがここで――
メシアムシュマッド:縮地Lv3 オート/移動時に宣言、シーン内の任意の場所へ、離脱可能。シナリオLV回まで。
このエフェクトを使用することで麗華たち三人のエンゲージへと突入できる。
まだ抗う力が残っていたとはな……だが、お前たちの声は届かない。
対象は麗華、アーガント、siriの三体を選択し命中判定を行う。
メシアムシュマッド:28dx7+5
DoubleCross : (28R10+5[7]) → 10[1,2,2,3,3,3,3,4,4,5,5,5,6,6,7,7,7,8,8,8,9,9,9,9,9,10,10,10]+10[1,2,2,3,3,3,3,4,4,5,5,8,9,10]+10[2,5,8]+10[7]+10[10]+10[7]+10[9]+3[3]+5 → 78
頼んだぞ~ディアボリックプロテクト~!
はいはい、任せておいて。相手は僕だよ。
オートアクションでウェポンケースを使用し、クリスタルシールドを装備してアーガントが迎える。
そしてメシアムシュマッドの命中判定の直前に以下のエフェクトをオートアクションで使用。
アーガント・フローレス:【プロテクトアイギス<天使の魔瞳>】:孤独の魔眼Lv4+特異点定理Lv4:浸蝕率【8】
効果:範囲、範囲(選択)を単体へ変更し対象をあなた一人にする、メインプロセス間ガード値+4D10、シナリオLv回。
アーガント・フローレス:4d10
DoubleCross : (4D10) → 15[2,6,4,3] → 15
そしてリアクションはガードを選択し、さらにエフェクトを使用してガード値をガンガン上げていく。
アーガント・フローレス:【永遠の墓城<インフィニットキャッスル>】:イージスの盾+グラビティガード+魔神の盾:侵蝕率【10】
効果:+(Lv)D+(Lv)D(+30、1回のみ)ガード値上昇
アーガント・フローレス:4d10+4d10+30+12+12+15
DoubleCross : (4D10+4D10+30+12+12+15) → 15[6,3,3,3]+11[5,1,4,1]+30+12+12+15 → 95
セットアップで使用したエフェクトやクリスタルシールドのガード値も含めて95点にまで上昇する!
対するメシアムシュマッドのダメージロールは……。
メシアムシュマッド:8d10+41
DoubleCross : (8D10+41) → 33[1,3,4,2,5,3,8,7]+41 → 74
21点超過し、装甲を無視されているにもかかわらずアーガントはこの攻撃を完全に防ぎきってみせた。
野球のフルスイングのように大きく剣を振りかぶり、刀身の重量をそのまま遠心力を以って破壊力へと変換していく。
そこから繰り出された突きはハヌマーンの踏み込み速度も加わることで、閃光にも匹敵する速さへ至る。
その勢いを更にもう一歩踏み込む力へと加え、メシアムシュマッドは剣で円を描いた。
生まれ出ずるのは破壊の渦。巻き込まれればその身を砕かれ、ズタズタに切り裂かれる大嵐。
ブレイクブレイドの能力をメシアムシュマッドは完全に使いこなしていた。
砕けろ。
しかし、彼が生み出した渦は高重力によって逆回転を始め、一人の男へと収束していく。
まるで吸い込まれるようにブレイクブレイドはその刃をアーガントが構えた盾へ叩きつけられてしまう。
渾身の一撃を軽く受け止めて見せ、アーガントは微笑を浮かべ――
想定範囲内だ。
メシアムシュマッドも笑った。
メシアムシュマッド:【真羅万衝】メジャー/RC/シーン選/視界/サイレンの魔女Lv7+パーフェクトサクセスLv3/攻撃力21 装甲無視
※孤独の魔眼は範囲か範囲(選択)の対象を変更するものなので、シーン(選択)であるサイレンの魔女には効果を適用できない。
メシアムシュマッド:18dx8+6
DoubleCross : (18R10+6[8]) → 10[1,1,1,2,2,2,2,2,3,4,7,7,7,8,8,9,9,10]+10[2,4,6,7,8]+7[7]+6 → 33
達成値は33、もしかしたら3回クリティカルすれば避けられないこともないが……。
佐野 直哉:2dx+1
DoubleCross : (2R10+1[10]) → 10[2,10]+1[1]+1 → 12
求聞寺 麗華:5dx ドッジ!
DoubleCross : (5R10[10]) → 9[3,4,5,9,9] → 9
ドッジを選択した二人は失敗し、siriはそもそも判定を放棄。
(無理であることは確定的に明らかです)
だがアーガントはガードを選択し、ミドルフェイズで既にタイタスを2個昇華している手負いの麗華をカバーリング。
アーガント・フローレス:【城砦の盾<プロテクトエストレア>】:軍神の守り:カバーリング:侵蝕率【2】ガード値24
メシアムシュマッド:4d10+21 ダメージロール
DoubleCross : (4D10+21) → 30[10,4,6,10]+21 → 51
消え去れ!
紫色のモヤが無手である左拳に集まっていき、地面へと叩きつけていくとその衝撃が何千倍にも増幅され衝撃波となって四人を襲うと剣のように肉体を切り裂いていく。
思わず「ひっ」と身を屈める麗華。
今度の一撃は己の能力でも全員は守り切れない、そう判断したアーガントは麗華の前へと躍り出てその身を盾とする。
――siriと佐野支部長は最大HPのままだが問答無用で消し飛んでしまうものの、アーガントのガード値は24あるため27点で抑えられる。
ただし、カバーリングを行っている為、麗華のぶんもダメージを受けることとなりガード値や装甲値で軽減した結果、残った最終的なダメージを二倍にして受ける処理となるので、54点ものダメージを受けることになるのだが……。
アーガント・フローレス:【揺れる空間<パペットボックス>】:斥力障壁+インペリアルガード:侵蝕率【5】
エフェクトを使用し、このダメージロールの適用直前に-3D10+18点軽減する!
アーガント・フローレス:3d+18
DoubleCross : (3D10+18) → 14[2,6,6]+18 → 32
結果、最終的なダメージは……22点! HP残り8点で耐えぬいてみせた!!
ここでメシアムシュマッドのメインプロセスが終了し、自身が使用したエフェクト電光石火の効果でHPを1d10点ぶん失ってしまうのだが、振った結果は1点であった。
佐野支部長、siriはロイスをタイタスへ変更し、昇華して戦闘不能とHPを回復する効果を使用する。
プランナー、あなたの誘いを受けて正解でした。ジョブズに出来なかった恩返しをこのような形で果たせるとは……人生とはかくも素晴らしい!
いつまでも固執してるわけにはいかないよね、若い連中の背中を押してやらなきゃならない俺が後ろ向いてるなんてさ!
佐野支部長は<固定ロイス:傷つけた相手> をsiriは<シナリオロイス:都築京香>をタイタスへ変え昇華し、立ち上がっていく。
しかしここで――時が正常に動き出す。
ほんの一瞬だけ止められていた時、それよりも速く動いて見せた佐野支部長だったが続いて攻撃を行うだけの余力はない。
だが、メシアムシュマッドはアレだけの攻撃を連続で叩きこんできたにも関わらず、既に次なる攻撃の準備を終えていた。
イニシアチブプロセスが終了し、佐野支部長は行動済みの為、メシアムシュマッドのメインプロセスとなる。
滅びよ!
メシアムシュマッド:【真羅万衝】メジャー/RC/シーン選/視界/サイレンの魔女Lv7/攻撃力21 装甲無視
メシアムシュマッド:18dx+6
DoubleCross : (18R10+6[10]) → 10[1,1,2,2,2,4,5,5,5,6,7,7,8,8,9,9,9,10]+7[7]+6 → 23
先ほどの攻撃がアーガントの前でも有用であることを学習したメシアムシュマッドは再び、拳を禍々しいレネゲイドで覆い、空を叩きつけた。
しかし初撃とは違い、少々精度が劣るもののβレネゲイドはそれを補ってみせる。
メシアムシュマッド:創造主の業 オート/判定直後+4D10、シナリオ1回
メシアムシュマッド:4d10+23
DoubleCross : (4D10+23) → 27[3,9,6,9]+23 → 50
すると、何もなかったはずの空間から闇色の刀剣が無数に生み出されていき、敵へと無差別に射出されていく。
対してまたしてもアーガントはガードを選択するものの――
佐野 直哉:2dx+1
DoubleCross : (2R10+1[10]) → 2[1,2]+1 → 3
求聞寺 麗華:5dx10
DoubleCross : (5D10) → 26[6,6,3,3,8] → 8
佐野支部長も麗華もsiriも再び被弾。
アーガント・フローレス:【永遠の城<インフィニットキャッスル>】:イージスの盾+グラビティガード:侵蝕率【6】
[メイン]アーガント・フローレス:+(Lv)D+(Lv)Dガード値上昇
[メイン]アーガント・フローレス:【城砦の盾<プロテクトエストレア>】:軍神の守り:カバー:侵蝕率【2】
矢野逸人:6d10+21
DoubleCross : (6D10+21) → 19[4,6,2,2,4,1]+21 → 40
アーガント・フローレス:4d+4d+12+12
DoubleCross : (4D6+4D6+12+12) → 17[5,5,5,2]+16[2,5,5,4]+12+12 → 57
ガード値57で完璧に防ぎきってみせたはいいものの、siriと支部長の損害は甚大だ。
またしても二人のロイスが失われてしまう。
アーガントもダメージ自体はまだ余裕を持てていたが、浸蝕率は140%にも上昇しておりそもそも彼と麗華の二人だけがこのまま生き残ったとしても、メシアムシュマッドを倒すことは困難になる。
仮にその状況へ陥った場合、待っているのはバックトラックでのジャーム化だ。
まだ余力はあるものの、メシアムシュマッドのHPが高いため下手をうてばその現実が訪れることはありえる。
そんな折に、メインプロセスが終了したメシアムシュマッドはオートアクションであるエフェクトを宣言する。
メシアムシュマッド:夜魔の領域Lv3 オート/行動済みになった時に使用、未行動になり行動値が0値がになる。シナリオLV回
まだ動けるのですわ!?
だからといってすぐに動けるわけじゃない、チャンスを待って一気に畳みかけろ!
hey! siri!!
デバイスとして役に立つ。ただそれだけではなく、私もあなたの友として傍らに立ち続けて見せますとも。
アーガントのロイスをタイタスとして昇華し、佐野支部長へ信頼の感情を表にしたロイスを取得してsiriは立つ。
麗華が待機を宣言することで彼女のメインプロセスへと入り、マイナーアクションでボルトアクションライフルを装備、そしてメジャーアクション。
解析完了。Mr.佐野、Ms.麗華――
siri:【そこへ全力でぶち込むと良いでしょう】メジャー/自動/3体/視界/7/アドヴァイスLv8+戦場の魔術師Lv2/判定D+8 C値-1
メインプロセスが終了し、イニシアチブプロセスへと移行するそのタイミングで――
今です!
siriは佐野支部長へ【Dロイス:触媒】を宣言、対象はイニシアチブプロセスでメインプロセスが行えるようになる!
このタイミングで必ず隙ができると、彼女はビッグデータから予測しておりそっと佐野のスマフォへとメッセージを入れていた。そして彼は動けなくなったように振舞っていたものの、その実この瞬間が訪れた時のために力をずっと溜め続けていたのだ!!
サンキューsiri! ブレイクブレイド、お前さんに久しぶりにおじさんの本気をみせてやるとするか。
そこでじっくり見学していなよ! こいつが一矢報いるところをな!!
マイナーアクションで麗華たちのエンゲージへと突っ込んでいき、メシアムシュマッドへと肉薄するとメジャーアクションを宣言する。
佐野 直哉:<コンセントレイト:ハヌマーン3><吠え猛る爪2> <さらなる波8><マシラのごとく7> <疾風迅雷2> <浸透撃2>
攻撃力:93 ガード&ドッジ不可、装甲無視
佐野 直哉:16dx@5
DoubleCross : (16R10[5]) → 10[1,1,1,1,2,4,4,4,5,6,6,6,7,8,10,10]+10[1,2,3,3,4,7,8,10]+10[2,7,8]+10[3,10]+10[8]+1[1] → 51
大太刀を大上段に構え、防ぐことも避けることも敵わぬハヌマーンのパワーをフル活用した乾坤一擲の一撃が放たれる。
認識することすら敵わぬ、絶対の速度を以って唐竹に叩き落されていく刃。
しかし、メシアムシュマッドが妖しく笑うのを佐野支部長は見てしまう。
見えているのか? この一撃が!!
メシアムシュマッドはガードもドッジも出来ないにも関わらず、リアクションを宣言する。
メシアムシュマッド:カウンターLv3 リアクション/白兵 射撃/単体の攻撃に対して使用可能。
このエフェクトとメジャーアクションのエフェクト組み合わせ可能、達成値を比べあい高いほうの攻撃が適用される。未行動のみ、シナリオLV回まで。
メシアムシュマッド:【命凶死遂】メジャー/白兵/単体/至近/
コンセ:ノイマンLv5+コントロールソート+コンバットシステムLv5+マルチウェポンLV7+ヴァリアブルウェポンLv2+電光石火LV3/攻撃力:46 装甲無視、複数ある場合一番高いものを無視(シザーリッパー)
メシアムシュマッド:27dx7+5
DoubleCross : (27R10+5[7]) → 10[1,2,2,2,2,2,3,3,3,3,4,4,5,5,5,6,7,7,7,7,8,8,8,8,9,10,10]+10[5,5,6,7,7,8,9,9,10,10,10]+10[2,3,4,4,8,9,9,10]+10[7,8,9,10]+10[1,2,4,7]+10[10]+10[8]+10[10]+4[4]+5 → 89
見えているぞ。
突撃してくる動きに合わせて、迎撃のために予め突き出されていた妖刀の切っ先が、驚愕する支部長の顔へと突き立てられるものの……。
アーガント・フローレス:【城砦の盾<プロテクトエストレア>】:軍神の守り:カバー:侵蝕率【2】
アーガント・フローレス:【永遠の城<インフィニットキャッスル>】:イージスの盾+グラビティガード:侵蝕率【6】
効果:+(Lv)D+(Lv)Dガード値上昇
ちっ!
舌打ちし、咄嗟に斥力で自分の身を打ち出してアーガントは支部長の盾となる。
突き飛ばされ、地面にその身を打ちつけたものの支部長は無事だが……。
矢野逸人:9d10+46
DoubleCross : (9D10+46) → 44[1,7,6,2,6,1,2,10,9]+46 → 90
アーガント・フローレス:4d+4d+12+12
DoubleCross : (4D6+4D6+12+12) → 9[3,2,1,3]+20[3,5,6,6]+12+12 → 53
砕けろ!
重力で作り出された障壁は突き破られ、瞬く間に機械剣ブレイクブレイドより鋏のような双刃を分離させ、斬りつける。
踊るような連撃は盾を弾き、生まれた防御の隙間を縫うようにアーガントの腱を切り裂く。
動きに鈍りが生じたのを逃さず、剣を再び合体させるとビーム刃が展開されその無骨な刃で圧し切り、上半身を捻ることで更に一閃。
邪魔だァァァーーッ!!
たったの一撃でX字に二度切り裂かれるも、自らに斥力をかけてメシアムシュマッドの猛攻から逃れたアーガントは膝をつく。
ディアボリックプロテクトが誇る鉄壁の守りをついに彼は上回ってきた。
おっと、これはキツいかも……。
――アーガントは巨大隕石のロイスをタイタス昇華し復活。
完璧なタイミングだったはず、あの状況でファイアーワークスが敗れるなど……。
ハヌマーンの速度とノイマンの思考能力によって研ぎ澄まされた、武芸の頂。
その一つの答えがここにあることを佐野支部長は悟り、厄介だと思いつつも部下の成長が嬉しく感じられた。
βレネゲイドを抜きにしてもブレイクブレイドは強い。
だからこそ己もまた覚悟を決める。
いや~まさかここまで追い込められるとはね、強くなったもんだなぁ~。
既に切り札を切ってしまい、しかも不発で捨て札へ変わってしまったにも関わらず支部長はなお余裕であった。
追い詰められつつある、しかし薄ら笑いを浮かべる彼の姿はひたすら不敵。
だが同時に見る者へ優しい父親を思わせるような優しさを感じさせられる。
立派になったもんだな~矢野くんは。
そんな悠長なこと言ってないで早く避ける避ける~!
アーガントは自分の世界へ浸っていた支部長を突き飛ばし、矢面に立つ。
破られはしたものの、このメンバーの盾となることがディアボリックプロテクトの役割だ。
盾とは破れないから盾なのではない、人を守るために災厄の前に立ちはだかり続けるからこその盾なのだ。
アーガント・フローレス:【表面硬化<アグリブキュア>】:鋼の肉体Lv4:侵蝕率【2】
効果:暴走以外のバッドステータスを回復し、HPをLvD点+肉体の能力値ぶん回復する。
アーガント・フローレス:4d10
DoubleCross : (4D10) → 15[3,1,5,6] → 15
メジャーアクションで体力を回復し、イニシアチブプロセスに移行した段階で麗華はリニアカノンを装備。
そして、彼女のメインプロセスへと突入していく。
【マイナーアクション】
ポルターガイスト:効果:所持している武器を一つ破壊、シーン間その武器の攻撃力ぶん攻撃力が上昇する。
指定:インプラントミサイル(攻撃力12)
【メジャーアクション】
求聞寺 麗華:アタックプログラムLv8+アンプリフィケイションLv4+マックスボルテージLv4+ハイマニューバLv4+バリアクラッカーLv3
効果:ガード不可&装甲無視 達成値+36 攻撃力+30 判定ダイス-2
さらに――
人の想いの力、それはレネゲイドにも打ち克つということを証明してください!
siri:支援射撃Lv8 オート/自動/単体/武器/2/判定D+8
ここでsiriは求聞寺麗華をSロイスへ指定し、支援射撃を放つ。
彼女へとのせたsiriの支援はまとめると……。
~siriの支援まとめ~
●判定ダイス+24 攻撃力+32 クリティカル値-1
【支援射撃Lv8】 オート/自動/単体/武器/2/判定D+8
【そこへ全力でぶち込むと良いでしょう】メジャー/自動/3体/視界/7/アドヴァイスLv8+戦場の魔術師Lv2/判定D+8 C値-1
【siriの言う通り】セット/自動/シーン選択/視界/12/戦術LV8+常勝の天才LV8/R中判定D+8 攻撃力+32
siriがボルトアクションライフルでメシアムシュマッドの足を撃ち抜こうとするものの、その狙撃は難なく飛び上がることで避けられ、避けた先に高速でリロードされた弾丸が通過し、それすらも見越して直前で軌道を変え、さらに先読みで狙撃を加えて――
ピュアブリードとしてノイマンを極めた者と全てのエフェクトを扱えるβレネゲイドとの熾烈な戦いが繰り広げられる。
だがそれすらもただの布石でしかない。
麗華はsiriが牽制するあいだ、電力を着々とチャージを続けていく。
精神を研ぎ澄まし発電細胞を一つ一つ限界まで活発化させ徐々に彼女の身体は雷を帯びていった。
惑い、嘆き、苦痛、そして闘争の衝動がこみあげてきてレネゲイドが喜ぶかのように力を与えていき、全能感がその身を包み込む。
しかし麗華はそれに浸りはしない、強い自分ではなく真の自分を思い描き、弱さを許容する。
そんなものはまやかしであると否をレネゲイドへ突き付け、衝動をコントロールした先、彼のことが心に浮かんできた。
『この力は破壊する為のものじゃない』
矢野逸人のロイスをタイタスへ変更し、昇華。判定ダイスを10個増加させ、矢野逸人のNPCカードを使用。
【矢野逸人:ダブルクロス】
タイミング:オート 難易度:自動 対象:自身 射程:至近
効果:攻撃判定の直前に宣言して使用する。
クリティカル値を4減少させる(下限値:2) このカードの効果は1シナリオに1回まで使用できる。
解説:矢野逸人の意志が友の声に応えることで賢者の石が持つ莫大なレネゲイドと感応し、一瞬だけ疑似的なレネゲイドビーイングとなって力を貸してくれる。
気づくと傍らに彼がいた。
青白い光となった人型が矢野逸人を形作っており、その手には何度も麗華を救ってきた機械剣”ブレイクブレイド”が握られている。
それって一番最初のバス爆発事件で教えてくれたことだったよね。
この力は破壊するためのものじゃない、守るための――今は相棒であるあなたを守るための力ですの。
いけるな、麗華?
今まであなたと一緒でいけなかったことがありますの?
随分と遠いところまで来てしまった気がする。
だが、ここまで来れたのは、メシアムシュマッドとこれほど渡り合えているのは間違いなく――
みんなが一緒にいてくれるからだと麗華は心の底からそう感謝できる。
だから……。
求聞寺 麗華:36dx@5+48
DoubleCross : (36R10+48[5]) → 10[1,2,2,2,2,2,2,3,3,3,3,4,4,4,4,4,5,5,5,6,6,6,6,7,7,7,7,8,8,8,8,8,9,10,10,10]+10[2,2,2,3,3,3,3,3,4,5,5,5,6,7,8,9,9,9,10,10]+10[3,3,3,7,7,7,7,8,8,9,9]+10[1,2,3,3,4,6,6,6]+10[7,8,9]+10[2,6,10]+10[1,9]+10[10]+10[10]+10[9]+4[4]+48 → 152
周囲の物質をエネルギーへと変換し、雷によって顕現した神鳥”ガルーダ”は嘶く。
――メシアムシュマッドはガードも出来ず到底ドッジもできる数字ではない為、判定を放棄。
※カウンターは行動済みになっている為、使用不可。
あたりを閃光が埋め尽くし、あの神の雷”ケラウノス”にも匹敵する規模の雷が空を切り裂く。
まるで怪鳥のいななきのようにも聞こえる雷鳴が響き渡り、向かうその先にはメシアムシュマッドがいた。
siriの攻撃を避け続け知らず知らずのうちにこの着弾地点へと誘導されていたのだ。
それでもなお、このβレネゲイドに汚染された破壊の救世主は回避を可能とする。
絶対的なスピードとノイマン由来の脳の処理速度は雷ですら見てから避けることが出来るのだ。
しかし、そんなことは本人が一番よく熟知している。
貴様……なんだ!?
気付けば、メシアムシュマッドは斬られていた。
背後を振り返れば青白い光をまとった男が、自分の持つものと同じ大剣を振りぬいているのが見えた。
こんな現象はこれまで見たことがない。広大な銀河をさまよってきたβレネゲイドのデータベースにもそんな事例は覚えがなかった。
思念のみがレネゲイドビーイングと化し自らの肉体を攻撃するなどと……!
そんな驚きが、命取りとなった。
ほんの一瞬、刹那にも満たぬ間に思考を巡らせたメシアムシュマッドはそれよりも速い一閃をその身に受けた。
斬撃の軌跡が光となり、走っていく。
この力は破壊するためのものじゃない。友と、友の信じるものを守るための力だ!
いつの間にやら投げ出されていたブレイクブレイドより分離した複数の刀剣が、メシアムシュマッドを囲んだかと思えば
袈裟掛けに妖刀で切り裂かれ、鋏の双刃によって両腕を貫かれ、ビームセイバーの光刃が十文字にその身を刻み、その斬撃全てが光となって軌跡を描き、全ての剣を束ね輝く大剣と化したブレイクブレイドがX字に振りぬかれ”ダブルクロス”が刻まれる。
全てが神速で行われ、並みのオーヴァードでは捉えることすら叶わなかっただろう。
しかし、メシアムシュマッドにはその動きが全て見えていた、見えていた上で反応することができなかった。
βレネゲイドが解析した結果、この宿主にこれほどの力が宿っていることは観測できていない。
理解不能、その四文字が浮かんだ頃にはプラズマを超えたエネルギーを有する、まさに神の雷がごとき一撃がその目に映る。
メシアムシュマッドは考えることをやめた。そして、大地を消し炭に化すほどの力をその身に受けてしまう。
求聞寺 麗華:16d10+32+20+10+12
DoubleCross : (16D10+32+20+10+12) → 93[10,1,8,5,8,7,2,9,4,9,4,1,10,③3,9,3]+32+20+10+12 → 167
大爆発、爆炎が巻き起こり雷で出来た羽が粉雪のように地面へ散っていく。
そして一筋の光が全く同じ射線を通って麗華の身を貫いた。
矢野逸人:鏡の盾LV5 オート/ダメージを与えた対象へそのダメージと同じ分のダメージを与える(LV*20最大100まで) シナリオ1回
まだそんな手を残していたなんて……何個隠し玉持ってれば気が済むのですの?
100点ものダメージを反射してきたメシアムシュマッドは爆炎よりダメージを負った姿で現れ、麗華を見下ろす。
サル共が、それでもなおメシアムシュマッドには届きはせぬ。
あ、アーガントくん助けて。ちょっとホントに厳しそう。
――アーガントのロイスをタイタス昇華し、この事件を通して頼もしい仲間であると認識を改めた麗華は戦闘不能を回復して立ち上がる。
そうはいっても、他もだいぶヤバいんだよね。とっとと片付けておくれよ。
【クリンナッププロセス】
PC側は特に処理するものはないが、夜魔の領域で0となったメシアムシュマッドの行動値が事に戻る。
残るHPは154点。
ほぼ半分をたったの一撃で削ったと考えればとんでもない功績なのだが、彼が言うように「それでもメシアムシュマッドには届かない」
条件は満たしているため、矢野逸人をジャーム化から救えるが彼らがジャーム化しては意味がない。
覚悟を新たに、第2ラウンドへと移行していく。
【第2ラウンド:セットアッププロセス】
困窮した状態であることをゼノスのデータベースにもリンクされたAIであるsiriは一番よく理解していた。
こちらのジョーカーは出尽くしており、なお上回り、受け切り、あまつさえ反撃でこちらに損害を与えてくる。
一撃を通すのが険しく、どんどん消耗していくばかり。オーヴァードである者たちにとっての死とはロイスを失うこと。
そして、ジャームへ陥り正常な判断能力と理性を失ってしまうこと。
力が必要なようですね。
だからこそsiriはSロイス(麗華)をタイタスへと変更し、昇華することで自分の切り札である【常勝の天才Lv8】を”再起”し、使用回数を増やした。
siri:【siriの言う通り】セット/自動/シーン選択/視界/12/戦術LV8+常勝の天才LV8/R中判定D+8 攻撃力+32
盾だって必要だろう?
アーガント・フローレス:【壱式城鉄<インタントオリジナル>】:虚無の城壁:侵蝕率【2】
効果:ラウンド間、ガード値+Lv×3
【第2ラウンド:メインプロセス】
その前に、イニシアチブプロセスで佐野支部長は【スピードフォースLv2】を宣言。
行動値は最速だが、浸蝕率をあげてピッタリ130%になることでダイスボーナスを得て少しでもダメージロールを伸ばすという目論見からの行動だ。
そしてSロイスをタイタス昇華し、siriの時と同じく再起を宣言。
復活させるのは……<マシラのごとくLv7>だ。
【メジャーアクション】
佐野 直哉:<コンセントレイト:ハヌマーン3><吠え猛る爪2><獅子奮迅Lv2><さらなる波8><マシラのごとく7> <浸透撃2>
攻撃力:93 ガード&ドッジ不可、装甲無視。範囲(選択)へ変更。
見切られるんなら、周囲一帯ごと薙ぎ払えば問題ないだろう?
カウンターがくるのならばまとめて爆撃する、デタラメだが効果的なベテランである支部長らしい豪快な判断だった。
※カウンターは<対象:単体>でなければ使用できない。
タネは明かされてるんだ、対策くらいたてて当然だろう?
人間には学習能力ってもんがあるんだからさ。
siri:支援射撃Lv8 オート/自動/単体/武器/2/判定D+8
えぇ、その通りです。
上から、大上段に構えられた太刀をただ力任せに振り下ろす。全身全霊、渾身の一撃だ。
佐野 直哉:24dx@7
DoubleCross : (24R10[7]) → 10[1,1,2,2,2,2,3,4,5,5,5,5,5,6,6,6,7,8,9,9,9,10,10,10]+10[2,3,3,4,5,9,9,10]+10[1,5,7]+5[5] → 35
お前さんのようなテクニカルさには欠けるが……威力は保証する。
佐野 直哉:5d10+70+16-3+32
DoubleCross : (5D10+70+16-3+32) → 31[6,6,9,8,2]+70+16-3+32 → 146
メシアムシュマッドは今度こそ、一切対応できずに地形ごと切り裂く不可視の剣の瀑布を受けた。
だが、器用なことに左胸に埋め込まれた賢者の石に刃は一切触れていない。
彼は大きくよろめくと大地を踏みしめ、耐えきる。
――残りHP9
しかし、おびただしいまでの血が流れており、周囲を赤く染めていく。
大ダメージを二度立て続けに受けたメシアムシュマッドの顔に、もはや笑みはない。
地球……危険、文明レベルS判定、脅威度最大。本国からの応援を求める。
そんなことはさせるかっつーの。すまないがおじさんは限界だ、もう一撃くらい頼めるかな君たち。
それを俺に聞くかな支部長。ねぇ?
視線を寄せられた麗華は片膝をつき、既に息を切らして肩で呼吸している状態だ。
それでも彼女は支部長を見やり、満面の笑みで応える。
それだけ元気があればいけそうですね。
お前さんはそろそろヤバいだろ? もう無理はするな
私の最大幸福は人の役に立つこと、人が悲しむことは決してしませんよ。
微笑みをsiriが返し、獣が吠える。
おぉぉぉぉぉ! 即座に対象を破壊する!!
メシアムシュマッドのメインプロセスへ移行。
メシアムシュマッド:【真羅万衝】メジャー/RC/シーン選/視界/サイレンの魔女Lv7/攻撃力21 装甲無視
全てを、破壊する!!
メシアムシュマッド:18dx+6
DoubleCross : (18R10+6[10]) → 10[1,1,2,2,2,3,3,4,4,5,6,6,7,7,7,7,8,10]+8[8]+6 → 24
全員に命中が確定し、麗華へアーガントがカバーリング。
そしてsiriが佐野支部長へのカバーリングを宣言。
アーガント・フローレス:【永遠の城<インフィニットキャッスル>】:イージスの盾+グラビティガード:侵蝕率【6】
効果:+(Lv)D+(Lv)Dガード値上昇
アーガント・フローレス:4d+4d+12+12
DoubleCross : (4D6+4D6+12+12) → 10[2,2,4,2]+9[1,3,4,1]+12+12 → 43
メシアムシュマッド:3d10+24
DoubleCross : (3D10+24) → 9[2,6,1]+24 → 33
お前さんなにやってんだ!?
私の最大幸福は人の役に立つことです、私の計算が正しければ……。
いえ、私は――ただ、友達を守りたかっただけなのかもしれません。
メシアムシュマッドの怒りに呼応するかの如く、拳を叩きつけられた大地から四人を穿つように衝撃が光となって射出される。
だが、佐野支部長と麗華は二人によって守ら、アーガントはいつものごとく耐えきるものの、その為の力をもたないsiriの身体は宙を舞い、地べたを転がっていってしまう。
【siri:戦闘不能】
ケリをつけるぞ! 万が一のことがあってもおかげさまで余力ができた!!
ja”ヤー”!!
倒れ伏したsiriを見て、二人はその身を奮い立たせてメシアムシュマッドへ立ち向かう。
どれほどレネゲイドにこの身を浸そうとも、どれだけの戦慄が待ち構えていようとも、必ず倒す。
信じてくれた友の為に。
お疲れ様、siri
アーガントはしゃがみこみ、siriの頭をなでてそう労いの言葉をかけた。
愚かな……サルごときを庇うとは。